類グループの職場には「個室」がない。
正確に言うとブースはあるが、ドアには窓がついているし、そのドアも基本的には開けっ放しで使っている。
そもそも、部下指導も含めた社内打合せは、基本的にブースでなくオープンな打合せスペースで行っている。
そして極めつけは、社長室。いつもドアが開放されているから、社長が執務している姿や、ミーティングしている様子も全社員に丸見えだ。
こんなにオープンにしていいのだろうか???
そもそもなんでこんな空間になったのか?

※類グループのHPより
“最近のITベンチャーでは当たり前”と思われる人もいるだろうが、若手中心で最近立ち上げられた企業と30年以上の歴史を経て今に至る企業とでは、同じ「個室なし」でもちょっと趣が異なる。
というわけで、気になるあなたは、
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20年以上前の類設計室(当時はまだグループの呼称はなし)の姿を、先輩メンバー数人にインタビューしてみた。
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当時の設計事業部は「構造」「意匠」といった単位部門毎に13の「室」から成り立っており、経営方針(組織課題・現業課題)は各「室」のトップである室長が集まる中央会議で協議され、そこでの決定事項は室長を通じて各部門の成員に通達する形で組織運営を行っていた。
しかしこのシステムには問題があった。
各「室」毎に個室が用意されていたわけではないが、同じ業務を担い、物理的にも近い配置のメンバー同士の間で「個室」意識が強かったのは事実。ゆえに、中央会議で決まった重要事項を各室長が(無意識にせよ)己の都合の良いように判断して各部門の成員に伝えてしまう、といったことがしばしば生じた。つまり共認形成のズレが発生してしまったのだ。
どうする?
そこで社内の共認形成の場を徹底的にオープンにした。
具体的には、
●会議の場を100人規模の社員が一堂に会することができる大会議室に切換えた(やがてそれが現在の劇場会議室というコロシアム型の大会議室に発展)
●打合せブースのドアをガラス張りにした
●日常の指導は皆にオープンな打合せ机で行うようにした
すると、次のような現象が起こった。
◆指導される人は・・・己の過ちを皆の前に晒すことで、事実を素直に受け止めざるを得なくなった。自我が封鎖された。
◆指導する人は・・・
いい加減な指導はできなくなった。そして、周りからの共認圧力で指導内容は(しゃべっているうちにも)自ずと補正される効果が生まれた。
◆会議で発言する人は・・・より多くの成員からの評価が受けられるようになった。それが当人の活力や事実追求の精度にも繋がった。
◆会議で発言を聞く人は・・・全成員がお互いの顔が見える形で会する場では、発言者以外の参加者にも当事者としての期待圧力がかかる。もちろん居眠りはできない。
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こうして自我を極力排し、徹底して事実を追求、共認するための基本システムが出来上がった。その後も、類グループの職場では様々な形で共認形成のあり方が模索されている。
例えば、数年前には東京事務所でこんな動きがあった。
それまでフロアの端にあった営業部の打合せスペースを、フロアのど真ん中に移動したのだ。当然営業は社内の期待が集まる部門の一つで、営業部で行われる打合せは成員誰にとっても興味津々。
結果として、周りの成員は業務をしながら耳をダンボにして打合せ内容を聞いては、営業マンと喜怒哀楽を共にしたり、あるいは営業マンが怒鳴られるようなときは、我がことのように“気をつけねば”と思ったりするようになった。そして、このような周りの姿が当然営業部に対する期待圧力→成果へと作用することになった。
そして、この共認形成システムを意識的に導入しているのは、なにも類グループに限った話ではない。
類グループが設計したある研究施設では、このシステムを応用し、施設の内外共に非常に高い評価を得ている。
研究施設というと、誰もが大学の教員棟のように閉鎖空間が羊羹切りのように並ぶ様をイメージするのではないか。
ところがこの民間施設では先方の社長の考えが上記のような類グループの共認空間の考えと一致し、以下のような設計が施された。
◎研究室と廊下の壁は前面ガラスに
「個室が欲しい」という研究者たちの声を尻目に、社長は周りからの圧力がかかる構造をつくることを企図してこのガラス壁を採用。結果として、研究成果と所員の活力アップに繋がった。
◎研究室とは別に設ける研究者のデスクルームは、大部屋に
大部屋に各研究者の机を配置。真ん中にリーダーの机を置いて、いつでもこの大部屋の中でお互いの研究を巡っての議論や、あるいは不明点をリーダーがレクチャーする等の姿が見られるようになり、この共認関係の形成が事実追求や新たなアイデアの誕生に繋がった。
今、研究者に限らず、我々一般市民にも多く見られる現象に「個室収束」があるが、これは私権関係の現実からの逃避、忌避であって、そこにはまともな生産成果は期待できない。
一方で、上記の研究所の例のように、現実と闘っている経営者(社長)はこの「個室」が抱える問題性をよく認識しており、共認関係を組織内に形成することの重要性に気づいているから、上記のようなシステムを採用したのだろう。逆に言えば、この話が通じない経営者(会社)は先行き危ない、とも言える。
今回紹介した共認形成の具体システムは、なにも難しいシステムではない。個室からオープンスペースへと共認形成の場を移すだけで、あえて周りのみんなを視野に入れながら指導(被指導)・発信(受信)するだけで、すべてはうまくいく。すでにその実現基盤はどんな職場にも生まれている。
例えば、あなたの会社にもいませんか?部下指導のときに、
個室で上司から怒られても、“なんか言いくるめられた感じ。ピンとこない・・・”
あるいは、個室で部下を怒ってみても、“なんとなく序列で押し切った感じ。筋が通っていない・・・”
と思っている人が。
今回ご紹介したように、すでに幾多の成功事例があるのだから、きっとうまくいきます!
ぜひ明日の打合せから実践してみてください!!