- これからは探求の時代 - http://bbs.kyoudoutai.net/blog -

「大転換期を生き抜く」シリーズ3-2 音・リズム・人類の追求~リズムと人類進化・脳進化~

今回は、
第一弾~リズムと生命活動の関連性~
に続いて、

第二弾~リズムと人類進化・脳進化~

前回は、音の基本構造の説明から、間を繋ぐ波動の存在、そしてリズムとは記憶装置であると話は展開していきました。
確かに、リズムには記憶装置としての役割がありそうです。

人間誰しもが持っているリズムの代表格『心音』。母親のお腹の中で絶え間ない心音に安らぎを覚える胎児は、生誕後もそのリズムによって安心感を得ます。それ故、赤ちゃんは母親の心音を聴きながら、つまり母親の左胸に頭を持ってこられると安心して眠るのだそうです。
これは心音のリズムが胎児時の記憶装置として働いていると考えられますね。

寝る赤ちゃん
URL:http://ameblo.jp/cocokara-support/entry-10991762998.html [1]

このように生き物は生まれながらに様々なリズムを持っています。
では、どのようなリズムがあるのか見ていきましょう。

生命は自然現象の中にリズムを見出し、受け継いできた [2]より

未来部族「心臓の鼓動と生命リズム」より引用
リンク [3]

なぜゴアトランスのレイヴパーティーでかかる音楽は、どれも同じような120BPM(1分間の拍数)前後の単調な四つ打ちリズムなのか。これには深い理由があると僕は思っている。リズムには特別な力があるのだ。
 アフリカのパーカッショニストなどはよく「太鼓は心臓の鼓動だ」と言う。胎児は10か月の間母親の胎内で心音に包まれ羊水に浮かんでまどろみ続け、オギャーと生まれる。生まれたばかりの赤ん坊は心音を聞かせると安らぐというし、コインロッカーベイビーズ(村上龍の名作)のキクとハシという少年は、やはりその心音を原記憶として持ち続けた。心臓の鼓動は僕らが生きている証であり、太鼓の音はその原記憶を呼び覚ますのだ。そしてゴアトランスのドラムのスピードは我々の心拍数にも近い。

 シャーマンたち(特に北米やユーラシア大陸)が太鼓を、変性意識に入って精霊の世界に赴くための「乗り物」にするということももちろん忘れてはならない。しかもそのリズムは、やはり100~120BPMくらいなのだ。

追記)BPM=Beat per Minutes
 

 日本の解剖学者で三木成夫という人がいる。彼はずっとヒトの胎児の成長を研究していて、「胎児の世界」(中公新書)というすごい本を書いた。

(中略)

「すべて生物現象には『波』がある・・・ギリシアの哲人ヘラクレイトスは『万物流転』といった。森羅万象はリズムをもつの謂である。ドイツの生の哲学者ルードヴィヒ・クラーゲスは、このリズムを水波に譬え、その波形のなめらかな『更新』のなかに、機械運動の『反復』とは一線を画したリズムの本質を見出し、やがてそこから『分節性』と『双極性』の二大性格を導き出すのである。」
「以上で森羅万象を貫くリズムの本質が明らかとなった。そこでは『生物リズム』と『四大リズム』の二群に分けてこれを見たが、この両者はどのように関係しているのであろう。

 生物リズムには、大小さまざまが識別された。『生』を告げる身近な心臓の鼓動と呼吸の波動を中心に、小は細胞の波から、日常の睡眠と覚醒、季節的な活動と休息の波を経て、大は種の興亡の波にまでそれは及ぶ。これらの無数の波のなかで食と性のそれが『生の原波動』『いのちの波』としてここではとりあげられた。

 四大リズムには、極小から極大に至る膨大な規模が・・・『水波』を中心に『光波』『電波』『音波』から、日常の昼と夜、春夏秋冬の交替、地殻の変動、氷河期のくり返しなどがあげられた。これらはすべて素粒子から宇宙球まで各種の球体の螺旋運動によって生じるものであり、自転しながら太陽のまわりを公転する地球の螺旋運動が生み出した日リズムと年リズムがその典型とみなされた。」

「こうして生物リズムを代表する食と性の波は、四大リズムを代表する太陽系のもろもろの波に乗って無理なく流れ、両者は完全に融け合って、一つの大きなハーモニーをかもし出す。まさに『宇宙交響』の名にふさわしいものであろう。」

 考えてみれば僕らが「生きている」ということは、様々なリズムを絶え間なく刻みつづけている、ということだ。海から陸に上がった記憶を内包した呼吸のリズム、植物から動物になって以来続いてきた心臓のリズム。脳神経系にも脳波のリズムがあるし、女性には月のリズムがある。昼と夜のサーカディアン(日周)リズム。そして世代をつなぐ誕生-生長-生殖-死のリズム。僕らがリズムに合わせてゆっさゆっさカラダを動かすことで悦びを感じるのは、たぶんこうした「振動する身体」である僕ら自身の内なるリズムが活性化され、さらに他の仲間とそれを共有し共振することがよろこばしいからなのだ。

ありとあらゆるもの、宇宙までが大きな波・リズムを持っているといいます。
全ての個は、全宇宙のリズムに乗って大きな一つの波を作り出す。それが海の波のリズムであったり、心臓のリズムであったり、女性の月のリズムなのでしょう。

宇宙
URL:http://blog.goo.ne.jp/kandaga/e/8727e75b5c2d6a47f59d41d67882c0d7 [4]

ここで呼吸のリズムに注目してみましょう。
呼吸のリズムの起源は何なのか?先ほどの引用に登場する三木成夫さんはいろんな本で様々なリズムについて考察しています。呼吸のリズムに関する一説を紹介します。

三木成夫著「海・呼吸・古代形象」 [5]より

 ところで、この数百万年にも及ぶ水辺の生活の中で、いつしか刻みこまれたであろう波打ちのリズムが、私にはどうしても人間の呼吸のリズムに深い関わりがあるように思えてならないのです。海水浴の砂浜で、波が打ち寄せた時にブクブクと息を吐き、波がサーッと引いた時に大きく息を吸う、あの呼吸と波打ちの関係を思い浮かべればいいでしょう。このことは解剖学の側からも考えられます。魚のエラの運動神経が「側線」という波のうねりをキャッチする感覚器にも同時に分布しているからです。それは魚のエラ呼吸と母なる海の波動が、互いに密接不可分の間柄にあることを物語るものです。

 ちなみにここでもう一つ大切なことがある。それはこの一連のエラの神経の続きが心臓へも分布しているということです。このことは心拍のリズムもまた海のうねりとは無関係でない事を教えてくれる。血潮という言葉が雄弁に物語るように、海に潜って聞く波打ちの音が心臓の鼓動を思わせることは、すでにダイバー達が口を揃えて語るところです。あの母胎の内なる胎児の聞く血流音もまさにこれと同じ世界に属するのでしょう。

 こうしてみると呼吸と循環のリズムが、共に大海原のうねりを介して密接につながっていることがうかがわれるのですが、これらを結びつける神経中枢が「延髄」にその座を占める事はよく知られていることです。そして、この延髄の中枢は、魚が上陸してエラ呼吸が肺呼吸に変わっても決してその座を移すことはない。延髄の一刺しで即死するといわれる所以ですが、いずれにしても私たちは遠い祖先の時代から、この波打ちのリズムを心拍と共に呼吸の中にも深く刻みつけてきた。大海原の文字通り波動と一心同体となって生き続けてきたのです。このリズムは地球の誕生以来おそらく少しも変わることなく今日に至っているはずです。あの浜辺の砂に腰を下ろして聞く波の音に無限の安らぎを覚えるのもこうした本来の生のリズムが、そこでは遠い彼方から呼び戻されたのではないでしょうか……。

魚類のエラに波のリズムを感知する器官があり、それが呼吸のリズムとなる。確かに自分の呼吸を聞いていると波のようなリズムに聞こえてくるような気がします。「母なる海」と言われるように海に安らぎを覚えるのは、魚類時代に同調し続けたリズムが記憶装置となり、身体に影響しているからなのですね。

海
URL:http://digitalphotochannel.seesaa.net/article/119963943.html [6]

このようにリズムは身体的進化に影響を与えています。しかし、リズムは身体的進化だけでなく、実は脳の進化にも影響を与えているのです。
その中身について見ていきます。

身体機能が脳の発達を促進する [7]より

『進化しすぎた脳』(池谷祐二:朝日出版社)に興味深い記述がありました。
>生まれながらにして指が繋がったまま生まれる人、例えば人さし指と中指がつながったまま生まれる人が、たまにいる。指が4本。そういう人の脳を調べてみると、5本目に対応する場所がないんだ。<
>「脳の地図」はかなり後天的なものだったことだね。言ってみれば、脳の地図は脳が決めているのではなくて身体が決めている、というわけだ。
(分離手術してその結果5本の指はちゃんと別々に使えるようになるが)、調べたらわずか1週間後にはもう5本目の指に対応する場所ができてたんだ。<

つまり、脳が出来上がって身体機能や表現機能が発達したのではなく、身体機能や表現機能の発達が脳をいっそう役割分化させて統合脳として発達していくということ。

このことは、次のような事例でも確かめられると思います。
例えば、脳溢血で倒れて言語中枢が壊されてしまい、上手くしゃべれなくなった。ところが、まわりの励ましや本人の努力によってしゃべろうとリハビリを続けていくと、言語の中枢が別のところにできて言語の回路が繋がって再生される。身体機能の回復が脳の回復を促すという関係です。

このことは、始原人類が洞窟で行っていたと考えられる「踊り」。それは声を出しながらあるいは手を動かしながらのリズム運動だったと思いますが、それは歩行訓練だけでなく、実は知能の発達に大きく寄与しただろうと推測されます。

おそらく、現在話題になっている深呼吸や音読の効果もこのこととかなり関係があるのではないでしょうか。深呼吸の効果は直接的には身体の安定したリズムをもたらす。それは、あらゆる機能を収束させ統合させることに重要な働きがある。そうすると、脳内にリズムをもたらし、脳内の回路が収束していき、整合性や統合性の回復をもたらす。
また、音読(身体表現)することで、脳内の言語の中枢や共認回路が一層活性化されるのだと思います。

脳は外圧に対して後天的に変化していくことのできる、可変性を持ったものなのですね。身体と脳との相互作用によって外圧を内圧に変え、つまり全宇宙のリズムに乗って大きな一つの波になることで、人類は進化しながら生き延びることができたように思えます。

このようにリズムは人類の身体・脳両方に影響を及ぼし、身体と脳はお互いに影響し合っています。
リズムと人類進化・脳進化、これらには密接な関係があるようです。

宇宙_身体_脳 made in tada [8] 

リズムにはまだまだ不思議な力がありそうですね。

次回は
3.共鳴・共感・共認機能の解明
についてです。リズムの不思議な力が分かるような予感です。お楽しみに。

参考
三木成夫著からの引用
http://www.geocities.jp/seto_no_shorai/Miki-chosaku.htm [5]

[9] [10] [11]