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『青い理想をどす黒く実行する』 パナソニック若手社員の仕事の取組み

今回は、パナソニックで活躍する山本祥馬氏の記事を取り上げます。パナソニックは言わずと知れた従業員約27万人の大企業。その中で山本氏は、現在ビジネスイノベーション本部事業戦略センターイノベーション戦略企画部に所属しています。
彼の仕事の取組みスタンスは『青い理想をどす黒く実行する』こと。およそ一流企業に似つかわしくないこの言葉は、一体どうやって生まれたのでしょうか?

彼はそう実感→言葉化したのは、当時パナソニック㈱の社内カンパニーエコソリューションズ社事業開発センター長だった日野田知也氏との出会いから。日野田氏は既に「トリプルワイドIH」など数々の新商品や新規事業を確立させてきたレジェンド級の人物。山本氏は、彼を「走る巨人」と呼び、真似対象として見ていました。そして日野田氏から叩き込まれたのは、徹底した「カスタマーファースト」でした。

最初の出会いは、パナが始めた「顧客直掌インフラ構築実証プロジェクト」という新規事業に山本氏が参加したとき。それまで経理部の立場から全体の経営をみていた山本氏は、パナソニックが市場を取っていく為として

「パナソニックは家の内(家電)も外(家、住宅設備)もやっているから、パナソニックに解決できない家の困りごとはない。我々が困りごと解決のインフラになれば、お困り事も情報も全部我々のところに来る。これからはIoTの時代。日本ではIoTのスイッチやコンセントなんかは顧客自身では付けられないから、IoT機器を作る我々がインストーラー(設備施工業者)も出来たら、IoTの覇権も握ることが出来る」

と持論を展開。 そんな山本氏に対して日野田氏は

「話は面白い。でも今お前、一瞬でも客のことを考えたか?

と一喝。頭をかち割られつつ、日野田氏の言葉に心酔した山本氏は、それから「住まいの困りごとを解決する『プロイエ』」という新規事業部門の一員になります。

当初のプロイエは「戸建て住宅」を対象にしたサービスとして展開。しかしなかなか受注に至らない状況だった。なぜか?
戸建ての場合は家によって空間の広さや設備もまちまち。サービス内容によって、値段も施工方法も変わってきて、商材として難易度が高い。一方、マンションならば構造も設備もほぼ同じなので、提供できるサービスも値段も均質化できるし、お客様にとってもわかりやすい。山本氏はそう考え、戸建てではなく、まずマンションでの展開するように社内で提案したという。

しかし現場を知る先輩からは一蹴。理由は「住まいに関するアンケート結果では、マンション住民よりも圧倒的に戸建て住民の方が関心が高い」から。ニーズが高いところに市場が生まれるという理屈でしょう。

納得できない山本氏は、自らデザインし自腹を切ってチラシを作成し、マンションに配布して実証することに →→ 見事に予想通りの反響 →→ そこからマンション開拓が全店舗戦略となったのです。

お客様に喜んでもらうため、皆が時間と経費をかけてビジネスをしている。だから何でも「試しにやってみていい」なんて有り得ない。実績のない若手が頭でっかちな青臭い提案をしても、現場を知る先輩方から反対意見が出るのは当然です。問われるのは「それでも絶対やりたいんだ!」と言い続ける熱意裏付けがあるかどうか。自分で全責任を背負ってでもやりたい、と言い切れる覚悟があるかどうかです。

そしてそれを実現するために山本氏は「正しい相手に、正しいプロセスと正しいタイミングで、正しいロジックを使って伝える」ことを心掛けているそうです。

パナソニックは、従業員27万人それぞれが向き合っている業界も、お客様も、職種も、立場も、考え方も異なる、複雑に絡み合った組織。そんな環境で主張を通そうと思ったら、青臭い理論をお門違いな場所でわめいても、誰も耳を貸してくれない。ありとあらゆる知恵を使って、適切な人にアプローチし、したたかな行動を展開するしかない。単に情熱を振り回すだけでなく、冷静に打ち返せるだけの周到な準備も必要になる。その全てを山本氏は「どす黒く実行するプロセス」と呼んでいるのです。

パナソニックには「社員稼業」という言葉があるそうです。与えられた仕事をこなすだけでなく、社員一人ひとりが経営者的な立場でものを考え、仕事を進めよ、という考え。

経営者として仕事を進めるという社員家業。良く聞く話ではありますが、一体どういうこと?それは売上を上げること?採算を考慮すること?
私権が衰弱しどの組織もトップダウンでは動かない。しかし一人でできる仕事はたかがしれている。今、経営者の視点で仕事を進めるということは、組織を動かすこと、に他ならない。つまり立場≒権限の有無に係らず組織を動かせること、この力が今求められているのです。

参考サイト [1]

 

 

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