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『青い理想をどす臭く実現する』 ②~企業理念でつながっているからこそ力を発揮できる

会社の会議でいつも同じ話を長々と展開して、周囲を困らせる上司っていませんか?「早く終わらないかなぁ」っと右から左に流しているそこの君!本当にこれは無駄なお説教なのでしょうか。

前回 [1]紹介した、パナソニックビジネスイノベーション本部事業戦略センターイノベーション戦略企画部に所属する山本祥馬氏もその一人でした。 密かに「走る巨人」と呼び、仕事上での”まね対象”として注視していたのは、当時社内カンパニーエコソリューションズ社事業開発センター長だった日野田知也氏。
その日野田氏は定例会議で必ず15分~1時間に及ぶ演説をするのが常でした。山本氏はそれを陰で「日野田節」と呼んでいたそうです。

パナソニックは、住宅関連商品の提供から、家に関わるサービスを広く提供する新規事業として「プロイエサービス」を展開中のとき。山本氏は既にそのプロイエの店長でもあったため、「早く会議を終えて店に戻りたい」と念じていても、毎回「日野田節」が始まるそうです。
「お前らはプロイエというものが、どういうものか分かっているか?プロイエとはな、・・・」と概念を説くような演説が延々と続く。

ところが日野田が引退した直後から、メンバー同士の連携や経営上の判断にブレが生じ始めた。そうなってから山本氏が気づいたのは「日野田節」は実は、経営理念を語っていたのだということ。

「売上の浮き沈みや、日々の営みの中で生まれる課題、そしてその解決策にばかり会議参加者の気持ちが振れている中で、日野田はパナソニックのそもそもの経営理念との照合を演説で行いながら、私たちの発想や姿勢からブレを取り除こうとしていたんだと気づかされたんです。」(山本氏)

山本氏は、社員がそれぞれ目の前にある数字だけを追いかけていくと、全体としてはブレていくのが、感じるようになったそうです。

「お客様のことを忘れ、社員たちが事業を数字だけで語ってしまいがちなところに、ミッションをくり返し語り、『お客様のところで何が起きているか?お客様のために何ができるのか?』という大切な視点を取り戻してくれていた。ミッションドリブンに業務を執行することがいかに重要か?ということに、日野田がいなくなってから皆が気づいたというわけです。」(山本氏)

元々パナソニックには、前身である松下時代から松下幸之助が定めた7精神(産業報国の精神/公明正大の精神/和親一致の精神/力闘向上の精神/礼節謙譲の精神/順応同化の精神/感謝報恩の精神)があり、それは日野田節にも度々登場していた。

「宗教みたいだ、と思われて引いてしまうかもしれませんが、現実のビジネスの最前線で、この七精神の価値観が本当に頻繁に役立っているんです」(山本氏)

いつの間にか私たちは、「お金」というモノサシにする以外の価値観を、全部「宗教」として切り捨てています。個人ですら全ての行動が一貫されたものではなく、常に矛盾を孕んでいる。そんな個人が組織の中で動くとき、ましてや「無数の中小企業が集合した合衆国」と言われるパナソニックでは、行動指針となる「企業理念」がなければバラバラになってしまう。その反復は羅針盤となっていたのです。

「企業理念」は会社の土台であり、社員同士がつながっている安心感を生み出している。社員の能力をフルに発揮させられるかは、この安心感が不可欠であり、「企業理念」は社員同士だけでなく、組織同士を結び付ける「紐帯」として益々重要になっているのです。

参考サイト [2]

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