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選択と集中 ~千葉県流山市が徹底した戦略

少子高齢化から本格的な人口減少時代に入りながら、人口を増やし続けているまちがあります。2018年市区町村人口増減ランキングによれば、1位は神奈川県川崎市、2位に大阪市、次が福岡市、さいたま市、と軒並み大都市が続きますが、その中で13位で健闘しているのが、千葉県流山市です。流山市は2003年に15万人程だった人口が、2019年には19万人を超えるまでになった。その要因は「お役所」らしからぬ戦略の実践とそれを支える体制にあります。
一体、流山市はどう取り組んでいいたのでしょうか?

写真はコチラからお借りしました [1]

写真はコチラ [2]からお借りしました

1.戦略の実践

① 人口増の要因として最も大きいのが、2005年に開業した「つくばエクスプレス」です。これで都心に30分以内にアクセスできるようになりました。

② 市は、その利便性を活用すべく「都心から一番近い森のまち」として住環境の良さをアピールします。単に「森がある」に止まるのではなく、「森のマルシェ」「森のナイトカフェ」「森のフェスティバル」など、森のブランドイメージを活かした統一的なイベントを展開。2015年にはイベント参加者数は15万人を超え、その半数を市外からの来場者が占めるまでになっています。未来の流山市民を呼び込んでいます。

③ 次が、子育て支援のための認可保育園の新設・増設です。2010年に17園で1789名の園児受け入れ→→19年には77園で6051名の園児を受け入れるまで拡大しています。
並行して2010年に「母になるなら、流山市」というキャッチフレーズを発表→東京都内の駅に展開していきます。この徹底的なPRが功を奏したのです。

④ 保育園を新設しても、その立地が必ずしも街の中心部の近い場所とは限らない。家から遠ければ子供の送迎は保護者にとって大変になる。そこで流山市は市内2つの駅に「駅前送迎保育ステーション」を設置。保護者は出勤する際に家から送迎保育ステーションに子供を預け→そこからバスで子供を核保育園まで登園させるシステムを導入した。さらに送迎ステーションでは最大夜9時まで延長保育で預かってもらえるので、共働きの親にとって非常に助かる仕組みです。加えて最近は企業内保育園も積極的に推進し、子供の傍で働けるまちづくりを目指しています。

⑤ さらに学童クラブでの路線バスの活用や、夏休み期間の学校開放による「子供の居場所作り」事業など、共働き世代にとって有難いことを多く取り組んでいます。

これらによって30代を中心にした「子育て世代の共働き夫婦」を人口流入が加速し、人口増は勿論、人口構成も若返ることができたのです。

2.戦略を支える体制

1で見たように、流山市は「子育て世代の共働き夫婦」をターゲットとして選択し、それに合った施策を次から次へと集中的に繰り出す戦略をとっています。流山市の成功の要因は、このマーケティングの勝利と言って過言ではありません。 民間企業では市場の中で顧客となる層のターゲットを絞ることは常套手段になっていますが、「平等」を重んじる役所が特定の層に支援していくことは珍しいことです。

そしてこの戦略を担っているのが、2004年に設置された「総合政策部マーケティング課」で、それを推進しているのが、2003年に当選した井関義治市長(現在4期目)です。民間企業ですら「選択と集中」のリストラクチャリングは困難で、相応の勇気と覚悟を持った経営者しかできません。

前例がない施策を推進していくときに、抵抗勢力になるのは議会だけでなく身内であるはずの市役所内部。旧体制からの幹部や多くの職員が当初はお手並み拝見モードでしたが、徐々に、市長と同じベクトルを向く職員が増え、少ない職員数で、より多くの仕事を、より短時間でこなせるようになってきたそうです。

その市長室の壁には、次の色紙が飾られています。

「これは壁じゃない、扉だ」

目の前に立ちふさがる課題に対峙して、それをどう捉えるか?そのスタンスが大きく可能性を広げることにつながるのです。

※参考資料:「日本の革新者たち」(齊藤義明著:㈱ピー・エヌ・エヌ新社)

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