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小さな組織から天下取り ~明王朝創始者・朱元璋~

「明」といえば1368年に建国された中国王朝。その創始者は貧農生まれの朱元璋です。
彼はわずか24人の部下と兵士から、中国統一王朝を築きました。
一体どうやったのでしょうか?

当時中国は、1971年から続くモンゴル民族の元王朝でした。彼が生まれた1328年頃には宮廷内の内紛と大飢饉により社会は混乱状態でした。抑圧されていた漢民族が反乱を始め、その後1351年には赤い頭巾を巻いた軍団による「紅巾の乱」が勃発します。
一家離散となった朱元璋は托鉢僧として各地流浪し、その後地域の紅巾軍に参加します。朱元璋は勇敢だったので出世しますが、軍は戦闘で元軍を破っても、結局盗賊のように略奪を働くだけで、将来への発想がないことに失望。⇒大半の兵士を他の武将に預け軍を脱退し、24人の腹心と兵士とで占領勢力のない江南の地を目指して南下することを決断します。

当時、戦乱から身を守るため各地に自衛組織が作られていました。そこで出会った地方の地主からの「南京を根拠地として略奪を止め、秩序の統括者となれば天下を平定できます」という方策を受け入れて、過去の軍とは異なり、戦闘後の略奪を禁止して「農民の味方」となり民衆からの支持を集めます。そして江南の自衛組織を吸収しながら集団を拡大していきました。
朱元璋は、さらに各地の知識人や地主の意見を取り入れ、農業改革と商行為への課税を維持したので、彼の支配地域では安心して農耕し、商業も活発になります。自軍を盗賊から治安維持と漢民族復権を掲げる組織へと脱皮させたのです。
その後、1368年に南京で即位し国号を「明」とし、元への北伐に勝利して天下を統一します。

組織は通常、過去から続く目標を手放すことがなかなかできません。時代の変化に矛盾し始めても、大きくなった組織を維持するために、少なくとも今の時点で機能している目標を追いかけることから抜け出せないからです。
朱元璋が最初に属した紅巾軍も、盗賊のような反乱集団では民衆から信頼されないことは理解していたでしょう。しかし膨れ上がった集団は今日も食べていかねばならず、一日の糧を得るために盗賊行為や民衆からの略奪を止められなかったのです。こうした目先収束した軍団はやがて組織内での縄張り争いや権力闘争を続けて自滅していくのが常です。

貧農で苦しんだ朱元璋は、その点に気付き少数の仲間で新天地を求めたのでしょう。

写真はコチラからお借りしました [1]

写真はコチラ [2]からお借りしました

ビジネスでも巨大組織は、事業計画の中に「小さなマーケットの攻略」を組み込むことはできません。仮にその事業に成功しても、全組織が食べていけないからです。この仕組みを解明したのがハーバード・ビジネス・スクールのレイトン・クリステンセン教授でした。同氏は、著書「イノベーションのジレンマ」の中で、イノベーションについて

イノベーションには、従来製品の改良を進める「持続的イノベーション」と、従来製品を破壊して全く新しい価値を生み出す「破壊的イノベーション」がある。
優良企業であればあるほど、優れた製品によって顧客を獲得し発展したため、その顧客と投資家の声を無視できず、その製品の持続的イノベーションを軸に事業を進める。このため破壊的イノベーションには踏み出せない。

と述べています。そしてそれを打破する要因を次のように紹介しています。

・破壊的技術を開発するプロジェクトは、小さな機会やその勝利にも前向きになれる小組織に任せる。
・破壊的技術の市場は試行錯誤を繰り返して形成されるので、失敗をわずかな犠牲でとどめるように計画を立てる。
・主流組織の資源は活用するが、それとは別の、破壊的技術に適した価値基準やコスト構造を独自に作り出す。
・主流市場の持続的技術として売り出すのではなく、破壊的製品の特徴が評価される新しい市場を見つけるか、開拓する。

まさに朱元璋が小集団ゆえに、新しい理念と行動規範に塗り替え、志を掲げて一致団結し、強敵のいない江南で成功を積み重ねていったことと同じです。

現代でも検索エンジン大手のグーグルは、2015年にAlphabetという新会社を創業者であるラリー・ペイジ氏らが立ち上げ、従来グーグル内にあった複数の企業をグーグルからAlphabet傘下の企業にしたのです。目的は、投資、先端技術、ドローン物流、健康・医療などの新分野でよりイノベーションを加速させるためと言われています。先端企業の代名詞であるグーグルでさえ大企業化するうちに、その殻から外に出る方がより挑戦的になれると判断したのです。

組織は大きい方が安定して良さそうですが、激動の時代では小さい方が変化に柔軟で適応しやすさもあります。外圧に如何に適応するかは、組織統合における永遠の追求テーマなのです。

※参考:「戦略は歴史から学べ」(鈴木博毅著:ダイヤモンド社)

 

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