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【今週の注目情報】敗者の生命史 38億年

生物は弱肉強食。社会は強者が弱者を支配する。歴史は勝者によって創られる。今や貧困の遺伝が問題視されている。
しかし、現実は本当にそのような構造なのか?生物における勝ち負けとはどういうことなのか?改めて捉えなおす視点を提起してくれる書籍をご紹介します。

[1]

稲垣栄洋・著『敗者の生命史 38億年』 [2]から引用します。

  • 地球の異変で生き残ったのは、僻地に追いやられた生命
    こうして地球に異変(全球凍結や海洋全蒸発など)が起こり、生命の絶滅の危機が訪れるたびに、命をつないだのは、繁栄していた生命ではなく、僻地に追いやられていた生命だったのである。
    そして、危機の後には、必ず好機が訪れる。
    スノーボール・アースを乗り越えるたびに、それを乗り越えた生物は、繁栄を遂げ、進化を遂げた。真核生物が生まれたり、多細胞生物が生まれたりと、革新的な進化が起こったのは、スノーボール・アースの後である。そして、古生代カンブリア紀にはカンブリア爆発と呼ばれる生物種の爆発的な増加が起こるのである。カンブリア爆発によって、さまざまな生物が生まれると、そこには強い生き物や弱い生き物が現れた。強い生き物は、弱い生き物をバリバリと食べていった。強い防御力を持つものは、固い殻や鋭いトゲで身を守った。

 

  • 逃げ回ることしかできなかった弱い生物がしたこと
    その一方で、身を守る術もなく、逃げ回ることしかできなかった弱い生物がある。その弱い生き物は、体の中に脊索と呼ばれる筋を発達させて、天敵から逃れるために早く泳ぐ方法を身につけた。これが魚類の祖先となるのである。やがて、脊索を発達させた魚類の中にも、強い種類が現れる。すると弱い魚たちは、汽水域に追いやられていった。そしてより弱い者は川へと追いやられ、さらに弱い者は、川上流へと追いやられていく。こうして止むにやまれず小さな川や水たまりに追いやられたものが、やがて両生類の祖先となるのである。巨大な恐竜が闊歩していた時代、人類の祖先はネズミのような小さな哺乳類であった。私たちの祖先は、恐竜の目を逃れるために、夜になって恐竜が寝静まると、餌を探しに動き回る夜行性の生活をしていたのである。常に恐竜の捕食の脅威にさらされていた小さな哺乳類は、聴覚や嗅覚などの感覚器官と、それを司る脳を発達させて、敏速な運動能力を手に入れた。

 

  • 敵に追いやられながら、私たちの祖先は生き延びた
    <中略>生物の歴史を振り返れば、生き延びてきたのは、弱きものたちであった。そして、常に新しい時代を作ってきたのは、時代の敗者であった。そして、敗者たちが逆境を乗り越え、雌伏の時を耐え抜いて、大逆転劇を演じ続けてきたのである。
    まさに、「捲土重来(けんどちょうらい)」である。
    逃げ回りながら、追いやられながら、私たちの祖先は生き延びた。そして、どんなに細くとも命をつないできた。私たちはそんなたくましい敗者たちの子孫なのである。

一面的に見れば「負け組」の弱者でも、その弱者が逆境を乗り越えたからこそ生物の歴史は塗り重ねられ、現在の私たちがある。そう考えると、一時の「食う、食われる」「力が強い・弱い」などの現象で「勝ち負け」を捉えたら本質を見誤るのだなと感じます。
適応し、生き延びるための探索し続けることにこそ進化の源泉はあるし、その探索に答え出した者が歴史=時代を作ってゆく。だからこそ、敗者が次の時代を探索し創造する最前線にいるのでしょう。

このままじゃ全然役に立てない!生きていけない!苦しい!そんな時こそ、「自分はダメだ、負け組だ」と卑屈になるのではなく、「進化の時だ!」と必死に探索していきたいなと思わされます。

参考:敗者の生命史 38億年 [3]

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