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先端企業の戦略(5) ~・よろづ屋『TOPPAN』:技術と人脈を活かした事業拡大・~

凸版印刷という企業をご存じでしょうか?

最近では「TOPPA!!!TOPPAN!」というテレビCMを見られた方も多いかもしれません。
ホーム|凸版印刷

トッパンと聞くと印刷事業をイメージされる方も多いかもしれませんが、現在では「情報コミュニケーション」「生活・産業」「エレクトロニクス」など多くの事業分野に取り組み、様々な場面で私達の生活を支えています。

◆顧客の期待に応えてきた歴史

トッパンは大蔵省印刷局の技術者であった木村延吉と降矢銀次郎によって1900(明治33)年に創立された100年企業です。

竣工当時の本社工場(1922年)

創立当初から「エルヘート凸版法」という当時最先端の技術を基礎としつつ、人脈を活かしながら、当時大蔵省の管轄であった「たばこのパッケージ」や「証券」の印刷を積極的に受注していきます。工業の発展と共に消費文化が花開いた日本の新たな情報発信のニーズに応え、多くの印刷物を世に送り出しました。

※エルヘート凸版法とは 精巧かつ同一の印刷版を大量に作成できる印刷技術。 精緻な紋様を使うことで、高品質かつ偽造防止効果が高い印刷が可能なため、当時の印刷局(現在の独立行政法人 国立印刷局)で紙幣の印刷などに用いられていました。(参照:トッパンのあゆみ [1]

その後、日本企業が関東大震災や世界恐慌によって不振に追い込まれるなか、トッパンは世界有数の近代的工場の建設を進めていきます。それらは戦時下の証券(国債)、戦後の全ての日本銀行券の発行し、国との繋がりを強めながら高度な印刷技術を可能にしていきました

これらから、トッパンは創立から戦後まで一貫して大蔵省で培った技術と人脈を活かした戦略で事業を拡大してきたことが想像できます。
そして、国との繋がりから多くの国家プロジェクトを受注し、それらで得た金を惜しまずに技術投資することで急速な成長を遂げていたようです。

◆産官学との連携による共創成長戦略

そんなトッパンが更なる事業の拡大に取り組んだのは1970年代頃のことです。1970年代は日本では人々の豊かさが実現した時と重なり、国が推進する事業にも陰りが見えてきます。
少子高齢化や新たなメディアの普及と共にライフスタイルの多様化が進みました。人々は豊かな暮らしを望む中、トッパンはそんな顧客の期待に応えることで新たな技術を開発していきました。

当時、欧米諸国において産官学の連携が盛んにおこなわれるなか、国の政策に先んじて産官学の連携事業を始めます。
そして、東京工業大学と富士写真光機(株)(現在のフジフィルム)と共同で最新鋭のホログラムを開発するなど、産官学との連携を図り、技術開発を促進していきます。

最近では産官学との連携による共創成長戦略トッパンが目指す共創イノベーション」 [2])を掲げ、デジタルを起点にした社会ネットワークの構築や社会的課題の解決と持続可能性を重視した事業の改革など、新たな挑戦を始めます。
創立当初、国との繋がりによって急速に成長したトッパンは、民間との繋がりも大きく拡大させることでより多くの挑戦を可能にし、時代の先端を進み続けています。

ビジョン|社会課題の解決に向けて|トッパンソーシャルイノベーション

特に、DX事業の推進は2021年に発表した中期経営計画の中でトッパンの成長基盤としており、2018年度に発足した「DXデザイン事業部」が核となり様々な共創事例が展開されています。

◆「よろづ屋」こそ商いの根幹

そんなトッパンの代表取締役社長 麿秀晴氏はインタビューの中で、トッパンが目指すべき企業の在り方「よろづ屋(万屋) 」と表現しています。
「よろづ屋(万屋) 」とは、生活に必要ないろいろな品物を売っている店のことを指す言葉で、そこから派生してなんでも屋、なんでもできる人という意味です。
これこそが商売の根幹であり、このよろず屋を実現するためには、世の中の期待に応える確かな技術力と、あらゆる人との繋がり(人脈)が必要となります。

トッパンはこれまで培った2万社の顧客とのネットワークと、印刷業界で得てきた情報の蓄積によって、顧客の事業をサポートする“コンサルタント”のような役割「よろず屋」としての地位を高めています。
業界でトップの業績を誇るトッパンは、国家や行政を相手にしているという意味でも、常に社会評価の圧力に晒されているでしょう。社会が相手だからこそ、どんな状況でも社会の潮流を読み、それに応えていく力が求められる。
これが120年もの間、成長を続けてきたトッパンのもう一つの武器ではないでしょうか。

また、時代毎の市場の流れを掴むためには、常に社会の先端の情報を取り入れる必要があるということです。現在のトッパンが“情報の活用”のためにDXに取り組み、新たな可能性を発信しているように、時代を掴み、他企業などとの共創によって認識を塗り重ねていくことが「よろづ屋」の真意なのかもしれません。

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