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女性社員の活躍は風土づくりから

最近、企業における女性活躍の必要性が叫ばれています。それは労働力不足への対応?消費を推進するのが女性なのでそのニーズを掴むため?いえいえ、企業組織の活力再生には女性の力が不可欠だからです。
企業間闘争の決め手が、創造力・追求力である現代では、個々の成員の英知を結集させることが不可欠になっています。そこで重要な要素が女性の充足力。存在するだけで充足・肯定の空気を作り出し、周りの活力を上げていく女性の力こそ現在の企業に求められているのです。 ※参考となる過去記事は「共同体経営とは?」16 [1]

今回はその女性の力をいち早く活用している企業として「天彦産業」を紹介します。

天彦産業は大阪市にある1875年に創業した会社です。経営理念は「われわれは人類社会向上のベースたる働きをするものである」で、特殊鋼、ステンレス、シリコロイの素材販売、加工販売を行っています。

写真はコチラからお借りしました [2]

写真はコチラ [3]からお借りしました

男中心社会の典型と言われる鉄鋼業界において、女性社員が活躍している異色の企業として注目され、経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選2013」にも選定されています。

このような女性の活用はどうして始まったのでしょうか?
きっかけは切実な経営問題でした。1985年プラザ合意以降、世界的に円高が容認され、生産拠点を海外に移転する企業が年々増えていきます。そこで天彦産業も海外展開に活路を見出そうと計画⇒そのために語学の堪能な人材募集することにしました。しかし中小企業では大卒男子の応募はなし。そこで当時相対的に就職が難しかった大卒女子採用を強化する方針に切り替え、ついに2001年、国立大卒の語学堪能な女性社員の採用が実現したのです。
そこから生まれた代表的な成果が2007年のウェブ営業チーム。ある女性社員が、育児休暇から復帰する際に、子育て期間中でも着実に仕事ができるようにと、「特殊鋼の海外向け販売サイト」を立ち上げたのです。男性社員の「足で稼ぐ」方法とは違い、丁寧な顧客履歴管理とかゆい所に手の届く女性らしいサービスで、アジアや中東圏からの顧客開拓を推進しました。

しかし優秀な女性を採用すればいい、というものではありません。どうして天彦産業は上手くいったのでしょうか?
「社員の少ない中小企業は男女問わずに余剰人材はなく、全社員が戦力となって会社を支えなければ経営が成り立たない」と樋口友夫社長は話しますが、放っておいてそうなるはずがありません。

樋口社長が取り組んだのは、制度より風土づくりです。

制度ありきは危険だ。まずは社内にそのための風土を作る。そして社員のニーズと業務状況を見ながら、夫も効率的に働けるようにするための制度をその都度検討し、個別対応する。そうすることでスムースな運営が可能になった」

特に社内風土を作るために効果的だったのが自主的委員会活動です。
社員全員が「スッキリ」「ハツラツ」「ヒラメキ」「トキメキ」の4つの委員会のいずれかに所属し企業文化作りの活動をしています。

「スッキリ委員会」は、社内清掃・花壇整備・防災訓練の活動。花壇整備では年間計画を立て、種まき、水やり、収穫まで行います。
「ハツラツ委員会」は、朝ラジオ体操・金剛登山・献血等の活動。金剛登山では社員の家族やクライアントも参加するイベントにしています。
「トキメキ委員会」は、社内報・会社案内・社員ブログ等の活動。
「ヒラメキ委員会」は、同じ夢をもった人とのきらめきコンパ・ひらめき図書館の運営活動。

しかしこの委員会活動も社員から「なんで仕事以外のことをしなければならないのか」と言われ続けて、習慣化するまでに10年近くかかったそうです。それでも社長は「生きがい・やりがい」が人を育てるという信念を貫きます。実際に委員会活動によって、業務以外で見える社員の長所可能性成長が、組織内の「タテ」「ヨコ」「ナナメ」の関係から発掘→評価され組織の結束力を高めます。天彦産業では、こうした風土の上に女性の活躍できる制度や仕組みを構築したからこそ、成功したのです。

このように女性が働きやすい職場とは、まずみんなが働きやすい職場であり、それは深い相互理解の土壌があってこそ。したがって他の企業の制度をそのまま転用しても上手くいきません。しっかりとした土壌をみんなで耕し、そこに根の張る制度をみんなで植えていくこと。時間がかかっても、この「みんな」で作ることの大切さを共通価値にすることが、女性を含めたみんなの活力につながっているのです。

※参考資料:「日本でいちばん女性がいきいきする会社」(坂本光司・藤井正隆・坂本洋介著:潮出版社)

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