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江戸時代の教育像に迫る! ~江戸時代の学びの活力源って何?~

前回のブログ [1]の中で寺子屋について紹介しましたが、今回は藩校や私塾を取り上げます。それぞれの学び場にはどんな人が集まり、何を学んでいたのか。それら3つの関係性はどういうものだったのかについて迫りたいと思います!

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(上の写真はこちらのブログ [3]からお借りしました)

■藩校について

藩校は”お国(藩)を治める”を軸に、城内で藩主の子供や城に登城できる武士の子弟や有力な庄屋の子など、身分が高い家の子供たちが儒学(主に朱子学)を学んでいた。

そんな藩校が増えたきっかけは、江戸時代が文治政治であったからであるといえる。

江戸時代以前の日本は武力で国を支配するいわゆる戦国時代。それから豊臣秀吉が天下を統一し、秀吉の死後に徳川家の幕藩体制となった。

これを機に世の中は平和になったことで、武力で支配する時代が終わり、政治や学問(朱子学)で「お国を治める」時代へと変わった。

それにより各藩で学問が必要とされたため、幼少期から自身の「お国を治める政治力」(=統治力)をつけるために学び始めた。

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(「ペリー提督日本遠征記」より。横浜開港資料館蔵

■私塾の教育内容について

私塾は、寺子屋で儒学や読み書きそろばんをすでに学び終えた、言語能力や追求力を備えた15歳以上の人たちが通っていた。彼らは、日本という共同体の枠を超える異国からの外圧を捉え、学んでいた。

私塾の教育内容には大まかに2種類があったという。

一つは漢学塾。16世紀から普及し、儒学(朱子学、陽明学)を中心に学んでいた。

もう一つは洋学、蘭学塾。18世紀後半から普及し、オランダから得た医学や語学、軍事技術、土木などの知識を学んでいた。

(当時外交していた西洋国はオランダのみだったため、オランダを通じて知識が普及した。)

ここで注目したいポイントは、漢学塾は16世紀から19世紀に普及しているが、18世紀後半から19世紀にかけては蘭学塾は爆発的に増加している点。

(★これだけ蘭学が普及しはじめた当時の外圧はどんな状態だったのか? 当時の状況や人々の心情、欠乏はどうだったのだろうか?)

■世界情勢と西洋諸国からの外圧

18世紀後半の世界情勢と、日本国内の「外圧」や「国内の状況」を考えてみると、当時の日本に対する大きな外圧は3つあったといえる。(※ここでいう外圧とは、「外国からの圧力」という意味だけではない。人が感じる“圧力”、それらの総称といったもの。)

〈自然外圧〉

当時は世界的に寒冷期で、その影響もあって日本でも3大飢饉が起き、噴火が多発したり大地震がおきたりと災害が多かった。

〈西洋諸国の世界への侵略〉

日本は中国が1番栄えていて強いイメージを持っていたが、イギリスがアヘン戦争で中国に勝つなど、西洋が世界中に植民地を増やしていた。西洋諸国の台頭。

特に日本には、ペリーの黒船やロシア船、イギリス船らが来航していた。この時、蒸気船など科学技術の進歩を目の当たりにし、「戦争をすれば負けるのでは……」という意識になった。

〈世界市場〉

西洋諸国が世界へ侵略し、侵略した場所に拠点(市場)を作り、金や特産物を求めて貿易を行い、為替でも儲け始めて世界に市場を拡大していた。(例えばアヘン戦争のように、アヘンを売り、中毒者を出して、その国を内部から崩壊させて植民地にしようとする侵略行為とも繋がっていた。)

以上の外圧は、藩だけではどうしようもできないレベルのものだった。だからこそ、当時の人たちはこの外圧を感じ、西洋諸国を対象化しようとした。

中でも、下級武士は危機感を覚えて「どうにかしないといけない」という欠乏から私塾に入った。西洋の事を知るためにまずは語学、つまりオランダ語を学び始めたのだ。

●まとめ

藩校は武力では治められなくなり、お国を治める力(=統治力)を付ける目的に学びを始めた。私塾に関しては、「日本」という観念の範疇(はんちゅう)を超え、西洋諸国を外圧として対象化したことによって西洋に対抗しようとする人が増え、私塾も増え始めました。

(私塾で教えていた講師は藩校でも講師をしていた事例もあり繋がっていたといえる)

そして農民などが通う寺子屋は飢饉が起こり、農業だけではなく商業にも取り組んだので、読み書きそろばんが必要となって、その学びを始めたのです。

これらはどれも、江戸時代に目まぐるしく変わった社会の構造を再び「秩序化させていきたい、良くしていきたい!」という思いを社会全体で持っていた証だといえる。

そして、その思いが武士から農民まで共通していたからこそ、江戸時代の人々の学びへの活力になっていたのではないでしょうか。

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