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2009年10月07日

『社会に背を向けた閉鎖的な企業』から、『社会を再構築していく新しい企業』へ

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写真は『ナチュラルアート』さんよりお借りしました
   
40%を切る日本の食糧自給率をどうする?という思いを、農家を組織化して実現しようとする企業を紹介する。鈴木社長は信託銀行の元社員で、多くの起業家を支援してきた。その時、ある魅力的な起業家の影響もあってから自ら起業することを決めた。
まずは、『ナチュラルアートHP』 より
   
   
経営理念
    
100年続く会社を目指す 100年社会に貢献する
   
100年社会から求められる会社になる
     
新しい産業としての農業の構築
     
過去の延長ではなく、新しい農業
     
農業を通して、世界の食料事情の健全な発展に貢献し、かつ社会に広く貢献する
     
   
経営戦略
   
1.新産業としての農業プラットフォームの構築
   
2.持続可能な農業経営の確立
   
3.ポートフォリオ (品目・地域を分散し、規模も面積も圧倒的日本一の農業生産者グループを確立)
     
4.農業バリューチェーンの構築 (生産から加工・販売まで)
      
5.破綻農業会社の再生及びファイナンス
     
6.レバレッジを効かせたロールアップモデルの確立
     
というところだ。では社会貢献を機軸に置いた企業、その中身に迫ってみよう。
     
  

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『提携農家が1000軒を超える』
    

ナチュラルアートという社名は、自然の芸術作品という意味です。米、野菜、果物、牛や豚に鶏など、自然界を利用しながら人間が育てる農作物はすべて命を有しています。命の創造とは、いわば神の領域。この農作物を密閉された食料工場で人工的に大量量産する研究もあるそうですが、僕はそれを否定します。だから、当社がまず何を始めたかといいますと、実際に青空の下の畑で農作物をつくること。埼玉県の神泉村の遊休地をお借りして、自分たちも大根やニンジンをつくり育てる一方、当社の理念に共感いただけた40軒の農業法人や農家と提携し、共につくり、売ることからスタートしたのです。最初の販売場所は賃料が高くスーパーが進出しづらい千代田区の20坪ほどの小規模店舗。おかげさまで今では最初の店舗の5倍ほどの広さの店舗に移転し、直営マーケット「なちゅらる・あーと一番町店」として好評運営しています。
    
   
 当社が一番力を入れていること。それは「畑を増やすこと」にほかなりません。創業当初から5年半が経った今、直営農場10カ所でイチゴやメロンをつくり、牛や豚を育て、全国を休みなく歩き回って協力を取りつけた提携農家は1000軒を超えています。また、2年ほど前からM&Aで醤油製造会社、食肉製造卸会社など支援を始め、グループ会社も6社に増えました。そうやって志を同じくする仲間と共に、農産物や畜産物の生産、加工、販売を行っているというわけです。ちなみに直営店は、千代田区一番町にある「なちゅらる・あーと一番町店」、千葉県柏市の「農場れすとらん六素(ロッソ)」の2か所と、当社Webサイトでのネット販売。もちろん大手小売りや外食産業、食品メーカーなどにも直接販売しています。

    
のように、提携農家が1000軒を超えて組織化されている。その目的は?
      
『日本の食料安保に貢献』
   

多少価格が上がっても、金を出せばなんとかなると考えていた平和ボケ日本。世界の秩序が急速に変わろうとしているにもかかわらず、です。そんな現状の中、世界を構成する一国である日本が今何をしなければならないのか。間違いなく食料安保でしょう。ちなみに有機・無農薬で安心をうたったブランド作物が増えていますよね。別段否定はしませんが、僕の目には一部のマニアや富裕層向けのビジネスゲームに映ります。そもそも食料が安心・安全なのは当たり前。当社も努力はしますけど、特別それをウリにはしません。そもそも世の中に広く行き渡らないものが、日本の食料安保に貢献できるとは思えませんから。食料安保のために当社ができること。まずは、たくさんの仲間と一緒に畑を増やすこと。そして価格交渉権を持った持続可能な新しい農業の仕組みを構築すること。この両輪を主軸とし、日夜奔走しているというわけです。

   
それは、日本の食料安保に貢献するため。そして、そのために仲間を増やし、価格交渉権を獲得して農家の経営基盤を確実なものにしていくため。その活動の結果、
      
『価格決定権を獲得』
    

 1000軒を超える農家の方々が協力してくれたおかげで、たとえばこんなことが起こっています。山口県のイチゴ農家の話です。それまでは、100円の原価をかけてつくったイチゴでも、流通側から80円でしか買わないといわれたら、泣く泣く売らざるを得ませんでした。でも今、ある品目のイチゴを共同でつくることで、県内では一番大きな出荷シェアを獲得するまでになっています。朝穫りイチゴを仕入れたい流通側は、当社に頼むしかルートがなくなった。そうなって初めて、農家側に価格交渉権が生まれるというわけです。いくら農作業が好きであっても、作物の評価が低いとやる気なんて出ませんよね。ずっとそんな状況が続いていたから、農家の人々も見下されていると感じ、負け犬根性に陥ってしまっていた。でも、流通と同じ土俵で交渉できる仕組みがありさえすれば、農家の人々の収入も尊厳も戻ってくる。これからも全国でそんな活動を積極的に行っていきます。

     
のように、農家の人々の収入も尊厳も戻ってきた。
     
『企業活動を支える志』
    

情熱をもって壁を乗り続けているうちに、ふとわかったことがあるんです。この仕事は金儲けでもビジネスゲームでもない。農業再生、日本再生のためにやっているんだって。苦労の連続であっても、自主的にこの事業をやめることは許されないのです。上場も視野に入りましたが、それはより長く成長し続けるための通過点。100年続く会社を目指す。100年社会に貢献する。逃げ道をつくらないために打ち立てた当社の企業理念です。起業とは挑戦の連続です。困難と出遭った時、勇気をくれるものが志や理念。ぜひ、志の高い挑戦を目指してほしいと思います。

   
この企業経営には新しさを感じる。かつて企業は、自社の収益第一でそれが社会に貢献できているかどうかは二の次だった。それが現在では、社会貢献をうたうのは企業の常識となりつつある。ところが、殆どの企業は、流行りに乗って社会貢献を打ち出すだけで、本質的には自企業の利益しか考えていない。
    
   
例えば、企業利益が低下すると下請けをたたき、派遣を切り、正社員をリストラすることになる。そうすると、生産集団は縮小・減少していく。その結果、社会全体の雇用状態は悪化し、活力は低下する。そして、集団の成員の面倒を見るという責任は国家に押し付けられる。これではとても『社会貢献』しているとはいえない。
    
   
ことろがこの新しい企業は、弱小な農家を組織化していく。そして、価格交渉を有利にし利益を上げる。その利益は、提携農家と自企業の自立のため、共同体的企業群の中で分配されていく。その結果、提携農家も含めた集団の雇用、生産性、活力を再生する。これが、最終的には、社会問題である日本の食糧自給率をも改善して行く。
    
    
これは、従来の企業と全く逆のベクトルをもつ。
    
    
『社会に背を向けた閉鎖的な企業』から、『社会を再構築していく新しい企業』へのベクトル転換なのだろう。
    
    
このことは、『ナチュラルアート』の端的な企業理念に現れている。

 

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