2016年07月22日
全員経営 自律分散型イノベーション企業⑨~非ツリー型組織に可能性あり
前回は、ダイハツミライースが、社内で組織化された「バーチャルカンパニー」によって開発されたことを取り上げました。
流行のハイブリッドカーでも電気自動車でもなく、ガソリン車でトップクラスの燃費を実現したのは、企業内特区とも言える組織形態である「バーチャルカンパニー」が重要なポイントでした。
通常のビジネスシステムの官僚制階層組織は、ピラミッドのような「ツリー型」であるのに対し、ミライースのプロジェクトチームは、階層がほとんどなくフラットなため、官僚組織に比べてコミュニケーションが時空間的に圧縮される「非ツリー型」になります。
では非ツリー型組織になると、人は何故、機動性や創造性が高まり、より実践知を発揮するようになるのでしょうか。
その組織構造について、今回も「全員経営~自律分散イノベーション企業成功の本質」(野中郁次郎・勝見明著:日本経済新聞出版社)を元に、明らかにしていきます。
ちなみに前回までの記事はコチラ
・①プロローグ
・②ヤマトは我なり~クロネコヤマトの挑戦
・③ヤマトは我なり~バスとの連携
・④釜石の奇跡~Ⅰ防災教育
・⑤釜石の奇跡~Ⅱ姿勢の防災教育
・⑥釜石の奇跡~Ⅲ「率先避難者たれ」の意図
・⑦釜石の奇跡~Ⅳ故郷を大切に想う心が皆の命を助けた
・⑧企業内特区が既成概念を突破する
非ツリー型組織になると、人は何故、機動性や創造性が高まり、より実践知を発揮するようになるのでしょうか。
それは都市の作られ方に例えてみると、分かりやすい。
例えば、京都の町並みの方が、大規模なニュータウンより居心地がいいと感じる人は多いはずです。
1970年代に住民参加型のまちづくりを支援したクリストファー・アレグサンダーというイギリスの都市計画家・建築家がいます。アレグサンダーは計画的かつ合理的に作られた近現代の「人工都市」と、歴史的な時間を経て自然に出来た「自然都市」との違いは、ツリーと非ツリーの構造の相違である、とし非ツリーの方を「セミラティス構造」と呼びました。
これは集合論の概念で、ツリーは全体の集合の中で下位の各集合が重なり合わず、整然と階層をなしています。
これに対し、セミラティスは下位のある集合の構成要素が別の集合にもオーバーラップして含まれ、集合が重なり絡み合います。簡単に言えば、多次元的な要素が複雑に絡み合っているということ。つまり人工都市は、それぞれの空間が機能別に分化し、一方、自然都市では、機能が重なり合います。
例えば、マンハッタンの交差点は、そこに立つ人間にとって「信号を待つ場所」であり、「傍の新聞スタンドの新聞の見出しから情報収集する場所」であり、「新聞を購入する場所」でもあるといった具合に、複数の役割を同時に担います。
アレグサンダーは、居心地のよい都市とは階層的に構成されるツリー構造ではなく、様々な要素が絡み合って形成されるセミラティス構造であると説きました。
このことは企業の組織のあり方についても当てはまります。それについて述べる前に、アレグサンダーの唱えた「パタン・ランゲージ」の理論を全面的に取り入れて、中心市街地活性化の稀有な成功例となった香川県高松市の「高松丸亀商店街」の再開発の事例を次回に紹介したいと思います。
- posted by komasagg at : 9:32 | コメント (2件) | トラックバック (0)
コメント
クリストファー アレクサンダーのセミラティスの考え方素晴らしいですね。街づくり、都市づくりの考え方にこんな素晴らしい理論があったんですね。
読んでいるだけでワクワクしてきます。
コメントありがとうございます。
人が棲むまち、としての快適性がセミラティスの考え方にあるようです。
遊園地でも行楽地でも閑散としているより、少し歩きにくくても混雑している方が楽しいのも同じかもしれません。
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