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2016年07月14日

全員経営 自律分散型イノベーション企業⑧ ~企業内特区が既成概念を突破する

激しい競争を繰り広げる日本の軽自動車業界。その中で流行のハイブリッドカー(HV)でも電気自動車(EV)でもなく、ガソリンエンジンでHV並みの低燃費を実現する「第3のエコカー」をコンセプトに開発されたのが、ダイハツ工業の「ミライース」です。

ガソリン車でトップクラスの低燃費を誇る、 このミライースは、ダイハツ内で「企業内特区」ともいうべき異色の「バーチャルカンパニー化」したプロジェクトチームによって開発されました。「全員経営~自律分散イノベーション企業成功の本質」(野中郁次郎・勝見明著:日本経済新聞出版社)を元に、今回はダイハツの挑戦を取り上げています。ちなみに前回までの記事はコチラ
①プロローグ
②ヤマトは我なり~クロネコヤマトの挑戦
③ヤマトは我なり~バスとの連携
④釜石の奇跡~Ⅰ防災教育
⑤釜石の奇跡~Ⅱ姿勢の防災教育
⑥釜石の奇跡~Ⅲ「率先避難者たれ」の意図
⑦釜石の奇跡~Ⅳ故郷を大切に想う心が皆の命を助けた

従来の開発事業では、機能別の各部門からメンバーがCEの元に集められ、大部屋方式で進められた。縦割りに横串を刺すマトリックス組織です。(*トヨタやホンダなども概ね同じ)この大部屋組織は各部門のメンバーが集まってはいるものの、一時的に席を持ってきただけで、肩に背負っているものは本籍のある部署の意向。プロジェクトで判断するときも、各部門の上長の次々と承認を得ないと決められない。時間がかかる上に、時には、上長から「ダメ」が出て戻ってくることも。これでは悪しき縦割りの縮図を作っているだけだったのです。

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そこでダイハツは「バーチャルカンパニー化」に取組みました。この取組みの背景には、HVがより低燃費化、低価格化を進め、軽自動車の存在価値が問われる状況に追い込まれた危機感が、強くありました。

ミライースの開発責任者のチーフエンジニア(CE)の上田亨氏は「今までにない目標を達成するには、今までにない開発体制を組むしかない」と決意したのです。バーチャルカンパニーとは、開発プロジェクトチームを一つの会社に見立て、多くの権限を集中させること。特に注目すべきは人事の分権化。現場に近いところに人事権を移すと、従来のシガラミではなく、適時適切かつ適材適所のダイナミックな人材配置が可能になります。

さらにメンバーを転籍させ退路を断ったバーチャルカンパニーには、技術系だけでなく、製品企画、デザイン、技術系エンジン、トランスミッション、ボディ、シャシー、電気技術、実験といった設計部署、生産技術、さらには営業、広報まで10を超える部門から最大時50人ほどの次長、課長クラスのコアメンバーが移籍したのです。設計から製作、販売までのグローバルな視点を持つ組織にしたのです。

そしてCEである上田氏の行ったマネジメントで出色なのが、求められる仕事の取り組み方のコンセプトを独自の「言葉」で表現し、全員の共認軸にしたこと。

その一つが「同期設計」。従来の大部屋組織は技術系だけだったため、生産に移行する段階になると生産部隊が組まれた。その際、出来上がった図面では生産工程を組めない箇所が見つかり、設計のやり直しのための手戻りというロスがしばしば生じた。そこで考え出されたのが同期設計だった。図面を描く設計担当、評価担当、生産技術の担当が一堂に会し、全員が最適且つ必要と思う要件を全て取り込み、図面を仕上げていく。それを「同期設計」という新しい言葉で表現し、「生産工程を組めない図面は描くな」と、メンバーに強く印象付けたのです。

常に出口(アウトプット)側を意識せよ、ということ。実は他にも出口を意識した発想があります。

「予算制」もその一つ。従来は「原価低減」でした。原価低減とは、積み上がった原価を削って目標に辿り着こうとする考え方で、削れなかったら仕方ないという発想に陥りがち。一方、予算制は最初から財布の中身が決まっているので、その中で最大限機能を満足させる思考になるのです。

もう一つ重要なことは、このバーチャルカンパニーの社長役福塚氏が、既存の各部門に積極的に働きかけたこと。兎角、目新しいことを始めると、「お任せ」「お手並み拝見」的な傍観者の視線がメンバーに向けられることが多い。そこで福塚氏は各部門の担当役員に定期的な情報共有会を開き、全社的な後押しを求めたのです。

これらにより、各メンバーが安心して各部門の壁を越えて思考することで、チームもまとまり成果を出したのです。そしてその効用は、バーチャルカンパニーが解散しても、その体験を蓄積したメンバーが各部門に戻り、既成概念に囚われない視点を活用するリーダーになっていくことで社内に拡がりをもたらしたそうです。歴史と実績を持つ大きな組織になればなるほど、組織全体を変革するのはリスクが高く、難しい。しかしそこで「働く人の思考の変えること」≒「思考の枠を取り払うこと」は、言葉と決意と仲間がいれば出来るのです。その立証となる事例でした。

 

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