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2016年04月14日

全員経営~自律分散型イノベーション企業①~プロローグ

以前このブログの記事「JALの意識改革の手法はどの組織でも役に立つ」で、経営破綻した日本航空を稲森和夫名誉顧問が「JALフィロソフィ」と「部門別採算管理制度」を導入して、全員経営でV時回復を実現したことを紹介しました。

リーマンショックや東日本大震災という日本経済にとって大きな打撃を受け、急速に崩れていく企業に中にあって、JALと同じように建て直しに向けて大きく動き出し、活路を見出した企業が他にもあります。その事例を集めた本「全員経営~自律分散イノベーション企業成功の本質」(野中郁次郎・勝見明著:日本経済新聞出版社)の内容を元に、これからの企業のあり方を探索したいと思います。

この本に拠れば、例えば、JALの再建と同時期にホンダでは「全員、本田宗一郎になろう」を合言葉に、社員全員で創業者から受け継がれたDNAを喚起する動きがありました。

日立では、2009年3月決算で国内製造業最悪の7,873億の赤字計上を受け、「世界有数の社会イノベーション企業」を新たなアイデンティティとして掲げました。「例えば、材料の仕事に携わっている社員にとって、いい材料が出来れば、いい電池が作れ、優れた太陽康発電のシステムが生まれる。自分の仕事は社会イノベーションにつながり、下支えしている。その意識を共有し、コンセンサスを取る事が何より大切だ。」と再建を任された川村社長は語っています。

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かつて経営の神様と言われた松下幸之助は、「衆知を集めた全員経営」を提唱していました。経営者が決断を行うには、自分の思い込みや囚われを排除するために、社員や部下の話や意見を聞くこと。素直に物事を見て、筋道立てて物事を考えること。そうすれば、良い知恵が集まり 良い決断が出来る、という意味です。JALやホンダ、日立の事例は、衆知経営という日本企業の潜在的な可能性が、顕在化した結果ではないかと考えています。

さらにこの全員経営への動きは、日本に限らず世界に拡がっています。

検索サイトグーグルは「邪悪になるな」というビジョンの下、「スマート・クリエイティブ」と呼ばれる「自律的思考」のできる人材を集め、全員経営を実践しています。具体的には毎週金曜日の午後に「Think god! It’s Friday!」と呼ばれる全社集合が開かれ、社員は創業経営者のラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏や経営陣に質問をし、答えを求める事が出来ます。直接参加できない社員も質問を送信すると、全社員が良い質問か悪い質問かを投票して、高い得票を得た質問に経営陣が答える仕組みになっていて、社員全員に強い当事者意識が生まれています。

世界1位シェアを持つ、中国の家電メーカーのハイアールは、「社員8万人全員が経営者になる」というスローガンを掲げ、企業としての1枚の財務表を社員全員分の8万枚の財務表に振り分け、社員一人ひとりが約2000の自主経営体の一員となって、相互の社内取引を行いながら収支を管理していく、つまり市場を内部化することで社員が「経営者」になるという全員経営です。そして顧客を上に置き、顧客に近い人に権限を与えていく事に加え、成果をちゃっかり給与に連動させていくことから「中国式アメーバ経営」と呼ばれています。そのハイアールの会長兼CEOの張瑞敏氏は、アメリカ経営学会2013年総会で次のようにスピーチしています。

「ドラッガーの有名な言葉にあるように、情報を基盤とする組織では従業員は自律しなければならない。情報化の時代において、企業は従業員一人ひとりをCEOにしなければならない。これはハイアールが目標とすることの一つで、全員がCEOにならなければならない。情報化時代においては、組織をフラットにすることの究極の目的は、従業員全てがポテンシャルを最大限に発揮することである。」

世界的にも全員経営が求められ、注目されるようになった背景には、知識こそが唯一の経営資源となる知識社会の到来があります。すなわち戦力の大きさで競合相手を圧倒する消耗戦から、一人ひとりが「知的機動力」を発揮する機動戦への転換で、そのためにはまずは社内における情報の共有、そしてそこから皆の知恵を結集させるという、まさに全員経営のあり方そのものになっています。

では次回から具体的に全員経営に向けた組織のあり方、マネジメントの仕方、仕事の取り組み方について具体的な事例を通して、整理していきます。

 

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