☆ランキング☆
にほんブログ村 経営ブログへ

最新記事一覧

最新コメント

最新トラックバック

2012年01月09日

『共同体的企業の中身とその構造化② ~社長ブログの現状~』

%E5%90%8D%E7%A7%B0%E6%9C%AA%E8%A8%AD%E5%AE%9A-2.jpg
昨年末の当ブログ記事『共同体的企業の中身とその構造化① ~共同体的企業って、何?~』では、
◆共同体的企業が増えてきた時代背景(実現基盤)、特に重要な『貧困の消滅』の時代認識
◆その結果現在多くの企業がぶつかっている壁

・私権(給与と身分が全て)では人は動かず、指揮系統だけでは持たなくなった。
・従って、指揮系統だけでは動かない領域が増大し、会議(共認形成)の必要度が増大してきた。
・さらに、会議でも補えない仕事以外の領域=理念の浸透と社員の活性化の必要度が上昇した。

◆更に、それに適応して、現在多くの企業で起こっている動き

[自主活動]
サークル活動や地域活動など、主に社員の充足=活力を高めるための活動。指揮系統では欠落する領域を補うもので、一貫して拡張。
[体制補完活動]
朝礼や社内新聞やブログなど、欠落領域=理念・共認の浸透がメイン。私権序列では持たなくなり、共認系で統合する体制が拡充中。
[制度・体制]
指揮系統が機能しなくなり、必然的に、会議時間が増大する。対面からメールへの移行などの変化はあるが、共認形成にかける時間は今後も拡充。

などをお伝えし、「企業を取り巻く状況(=外圧)と、適応軸(=内圧)」を構造的に整理しました。
今回は、外圧状況に応じて現在多くの企業で起こっている動きの中から、「社長ブログ」に着目し、注目すべき潮流や企業を探っていきます。
☆☆☆社長ブログはどのくらいあるのか?
最近、企業のHPを開くと「社長ブログ」へのリンクをよく目にするようになりました。その多くはここ5年位の間に開設されているようです。近年のこの動きはどのくらい広がり、何人の社長がブログを開設しているのでしょうか?
実数を掴むのは困難ですが、例えば幾つかのブログコミュニティのカテゴリやランキングで現時点の登録数を調べると、
ライブドアブログ社長カテゴリ:9,269
アメブロランキング社長カテゴリ:9,119
gooブログ社長カテゴリ:10,045 
yahoo会社経営カテゴリ:8,401 
と、それぞれ1万程度の「社長ブログ」があります。ランキングに参加していない方がいることや、ブログコミュニティは上記の他にも沢山あることを考えると、少なくとも10万程度は開設されているのではないでしょうか。
H21年時点で日本の法人数は26 1万7, 0 6 4社(国税庁:H21年会社標本調査結果より)ですから、社長100人のうち、3~4人は「社長ブログ」を開設していることになります。多忙な経営者が貴重な時間を使って記事を書いていることを考えると、かなりの割合です。
では、「社長ブログ」を開設している経営者は、ブログにどんな可能性を感じ、どんな発信をしているのでしょうか?
いつも応援ありがとうございます

にほんブログ村 経営ブログへ


☆☆☆肩書き抜きに自分を知って欲しい、が現状
ランキング上位のブログをはじめ、「社長ブログ」の殆どは、自分の事を綴った普通の日記です。勿論経営への想いや考え等も折に触れて書かれていますが、趣味や食べたもの、家族のことなども雑多に綴られており、目的や対象が不鮮明で、存外中身が薄いことに驚きます。
では、何のために貴重な時間を割いて発信し続けているのでしょうか?
少なくとも社員は読者として意識しているだろうことを考えると、発信を続ける動機は、潜在的に捉えた「指揮系統によらない組織内の共認形成の必要」にあるのだと思います。そしてまずは、
肩書き抜きに自分を知って、何でも話せる仲間として親しみを持って欲しい
折に触れて発信する自分の感覚や考えに興味を持ち、共感して欲しい

といった発信に留まっているのが、多くの「社長ブログ」の現状です。
☆☆☆研修と連動した社内の共認形成の場
しかし、少数ながら(3%くらい?)、「社長ブログ」を社内の共認形成の為の発信と位置付け、経営理念の奥にある想いを具体的に言葉化し、社内研修と合わせて実践的に理念の浸透を図っている経営者もいます。以前当ブログ記事『世代を超えて謙虚に学びあう共同体組織を実現・・・『加藤製作所』さん』で紹介した加藤製作所さんもその一つです。その他、いくつか紹介します。
株式会社どうきゅう
社員の幸せを第一に掲げ、社長が

・社員は適切な判断力をもっているのだから、仕事の監視や管理・監督する時代は終わった
・将来は管理という言葉をなくしたい

と語る外食産業の株式会社どうきゅうでは、社長が経営についてブログで発信しながら、理念研修・社長セミナーなど、年間30回以上(参加は自由)の社内研修を行なっています。
そうして社員に想いが浸透するに連れ、「社長ブログ」の発信は社員の活力にも繋がっています。

images.jpg24日にあるパートさんの送別会を開催しました。(中略)
その席上で私の隣に20歳の女性の社員が座った。いつも笑顔の○○子ちゃんだ。お客様からもとても人気があり、成長株の一人である。その子が・・・、
私、朝起きたら一番に社長のブログを見るんです。更新しているのを楽しみにしているんです。あれを見てから出社すると元気が出るんです。今日はそのブログを書いている人の隣にすわるなんて芸能人と一緒にいるみたい。嬉しくてワクワクするんです。」(中略)
120事業所もあると中々現場のみなさんと接する機会は少ないんです。でもこのようにブログなどで共感しあえるって嬉しいですね。(後略) 『どうきゆう 社長ブログ』より

サンフロンティア不動産株式会社
いわゆる社長ブログの形式ではありませんが、サンフロンティア不動産株式会社では、HP上に『社長通信』欄を設けて社長がメッセージを発信すると共に、毎週

同じ小船に乗る運命共同体として「何とか社員と意識をひとつにしたい」とすがる思いではじめたのが「社長3000字レポート」でした。 『社長3000字レポート』より

というレポートを社長が十数年に渡って書き綴り、社長講話として、社員に発表されています。その他にも、「社内勉強会」や、社長が講師を勤める「社長研修」、共通のテーマで議論する「哲学コンパ」など、業務外で十数種類の研修や勉強会が開かれ、社長の発信を軸に社内の共認形成が図られています。
☆☆☆経営者同士の繋がり作りと知名度アップ
一方、経営者専用のブログコミュニティで発信する一部の社長には、経営者同士の繋がり作り、マスメディアへの露出、出版といった知名度アップを目的としてブログを続け業績に繋げてている方もいます。

takashima.jpg「他の町工場の社長と同じく、私も人前で話すのは苦手でした。でもブログを続けているうちに、さまざまな方と出会い、講演もこなすうちに苦手意識はなくなりました。もちろん当社の知名度も大きく向上しました。町工場の社長ほど、ブログで発信すべきだと強く申し上げたいですね」三元ラセン管工業株式会社 髙嶋社長 社長ブログ:『ベローズ・ラボ ☆ベローズ案内人☆』

terada.jpg「経営者会報ブログは、元気な経営者が情報を発信し、それが共有化され感動が広がっていく、という特徴があります。私のモットーである『動感動喜(行動の中に感動がある、行動の中に喜びがある)』を実現してくれたコミュニティであり、他にこうした場は存在しない、と感じています」 京都工芸株式会社 寺田社長 社長ブログ:『センスで贈る! (株)京都工芸 タオルソムリエ寺田 元 の日記です』

hurushiba.jpg「情報発信に努めるとしたら、現時点ではブログほど適したツールはないでしょう。自ら情報を発信することで、出会いとご縁が生まれます。そのご縁を大切にする――社業にとっても社長の人格形成のうえでも重要な姿勢ですし、出版の機会はあくまでも、その過程で巡ってくるものなのだと思います」 枚岡合金工具株式会社 古芝社長 社長ブログ:『金型工場2代目会長の「経営革新」成功への日々を綴ります。』

それぞれの内容は日記なのですが、一般的な「社長ブログ」と比べ、更新頻度や記事の密度が高く、事業内容についても詳しく紹介されています。
☆☆☆全社ブログ化による社員の活力上昇
また、社長が「社長ブログ」で発信力向上の効果を実感したのを機に、社長の薦めで全社的にブログに取組み、社員の活力が上がっている事例もあります。
フットマーク株式会社
水泳・健康・介護用品メーカーのフットマーク株式会社では、「社長ブログ」の他37の公認ブログが立ち上げられています。情報発信の目的や優先順位、相手発で肯定的な発信といった発信規範を「ブログ憲法」に定めて始めた全社ブログは、みんなで会社を良くしていこう、という風土も手伝って大いに活発化しました。
その結果、認知度アップや情報発信力の向上に留まらず、以下のような副次的効果が現れました。

(前略)
imgdaa9ccd3zik7zj.jpg1.接客日記が面白い
 同社は法人取引中心だが、箱根ユネッサンの直営店は顧客の生の声を聴く大切な要である。その報告書はこれまでも回覧していたが、毎日のブログで顧客との印象的なやり取りを紹介すると、愛読者がより一層増えた。その結果、店舗スタッフのモラル・観察力・接客態度が向上したのは言うまでもない。
2.地道な苦労をブログで自慢
 物流部門ブログを、ある月の優秀作に選んだことがある。通常は顧客の目に触れない倉庫の中で、地道な工夫がされていたことが分かって印象的だったからだ。これまでは現場の知恵を自慢する機会がなかったからだれも知らなかったのだ。これを顧客が読めば、真面目なスタッフとその仕事振りに、さらには同社に好印象を持つだろう。
3.“意気込み”入りの開発日誌
 雑誌でもヒット商品開発者のインタビューをよく見かける。しかしブログでは具体的な商品になる前の、開発者の心意気を知ることもできる。例えば、ある障害に悩む人に接したときの一個人としての感慨と、その解決に向けた決意を知れば、心を打たれずにはいられない。その後の開発日誌にエールを送る人も増え応援してくれるだろう。
4.さらば!職場の同床異夢
 同じ企業の中でも所属部門が変われば、取り扱い商品もスタッフの人物像も分からないものだ。しかし社長ブログや広報ブログはもちろん他部門のブログを読み、相互に紹介し合ううちに理解が深まってくる。そして社長も隣の部門のスタッフも、より身近に感じられ共感できるようになることで、自ずと全社員の心がひとつになってくる。
(後略) 『社員が元気になる全社ブログ化計画』

対外的な情報発信の他、全社的に仕事の気付きや嬉しかった事、期待を発信しあうことで社員の一体感が増し、活力が上昇しているフットマークの試みは、開かれた社内の共認形成の場、としてのネットの可能性を開いています。
☆☆☆組織を統合する認識の中身が問われる時代
ここまで事例を通じて「社長ブログ」の現状を見てきました。多くの経営者が改めて社員と想いを共有して集団統合を図る必要を感じはじめていますが、その殆どは、親しみやすさや感覚の表出に留まっています。一方、「社長ブログ」を軸に、研修で経営理念の具体化と浸透に着手している企業の事例からは、抽象的な経営理念や感覚の共有ではもはや組織は統合できず、今の時代は乗り切れないという意識も感じます。
「社長ブログ」が増えてきた状況は、経営者を筆頭にどのような状況認識に立って方針を出し、どのような経営理念=集団規範を共認するかが、社員の活力も、統合度も、成果も左右する、「組織を統合する認識の中身が問われる時代」になったという事も示しているのではないでしょうか。
☆☆☆新たな認識の獲得が求められているしかし、冒頭で述べた時代変化の下、現在殆どの企業が壁にぶつかっています。それは、経営者の多くがこれまでの私権(給与と身分が全て)的な価値観や制度、その枠組の下で体系化された知識や理論に囚われたままで、新たな時代に可能性を開く認識を提示できずにいることを示しています。
今後は、現代の行き詰まりの原因構造をこれまでの私権的な価値観の時代を超えて深く追求し、その過程で見出した歴史を貫く普遍構造の認識や、それを駆使して構築した新たな理論を獲得し、新たな時代状況に応じた答えを出していくことが求められているのです。
既に『るいネット』では長年に渡って歴史構造の追求や新理論の構築が始められていますが、多くの経営者や企業人がそうした勉強の場に参加し、新たな認識を獲得して次代の可能性を追求する事で、「社長ブログ」や「全員参加の社内ネット」も可能性のある認識を紡ぐ社内の共認形成の場として発展していくのではないかと思います。

 

コメントする

comment form

trackbacks

trackbackURL: