2013年01月22日
いま、社会の基底部で何が起きているのか-2 私権の終焉と市場の縮小と権力の暴走
前回は、「現代=大転換の時代」を扱いました。
これまで多くの花形産業が生まれましたが、現在も花形であり続けている産業はひとつもなく、認識力を身に付けることこそが真の安定への道です。そして前回は、現在=大転換の時代の認識として、’70年頃を境に貧困が消滅したことを明らかにしました。それまで社会は私権の強制圧力で埋め尽くされ、私権圧力に対応する私権追求の活力が時代を貫く最大の活力源であり、市場の拡大の動力源ともなってきていたのです。
今回は、豊かさが実現された後、どのような変化が生じたのかを扱います。
しかし、豊かさが実現されると、事態は一変する。飢餓の恐れが無くなると、人々はもはや私権を獲得するために身を粉にしてまで働こうとはしなくなる。また、上から命令するだけでは人々は動かなくなり、私権の強制圧力に基づく家父長権も、企業の指揮系統も、機能不全に陥ってゆく。更にまた、私権の強制圧力によって加圧され肥大されてきた物的需要も衰弱してゆく。従って、市場も縮小してゆかざるを得ない。
ところが、市場拡大は至上命題であるという固定観念に囚われた学者・官僚・マスコミ・政治家および財界は、不足する需要を補う為に、国家に巨大な借金を作らせてその資金を市場に注入し続けてきた。それが、’70年代の公共投資であり、それが限界に達すると’80年代は福祉バラ撒き、それも限界に達すると’90年代はバブル化(日本は’86年から)と、次々と市場の人工的な拡大を演出してきたが、それらの原資は全て国の借金に依っている。そして’00年に入ると、バブル化による見せかけの経済成長も限界に達したことによって、彼らは遂に打てる手が無くなり、あろうことか自分たちの作り出した借金を国民に穴埋めさせるべく鉾先を国民に向けて暴走し始めた。
■企業の指揮系統の機能不全
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私権時代には、指揮系統が十全に機能し、上司の命令は絶対というかたちで企業も統合されていました。しかし、貧困が消滅すると、企業内では内部告発が急増し、そもそも企業に属さないフリーターが増えるなど、私権圧力では企業集団を統合しきれなくなっていきます。
またそればかりか、私権が衰弱するほどに不正や不祥事が続出し、企業の存続を脅かすほどの状況を生み出していきます。私権圧力が強く働いていた時代には、ミスや問題隠蔽行為は即序列、生存を脅かすものであったたため、多くは起こりませんでした。しかし、私権への収束が完全に衰弱し、収束不全が顕在化した2000年代半ば頃から、福知山線脱線事故、耐震偽装、日銀総裁ファンド投資など、考えられないような不正や不祥事が次々と明るみに出てきます。
これら不祥事は、組織内部においては薄々はわかっていたものがほとんどで、単なるミスに留まらず、問題や不正の隠蔽ということです。指揮系統は上意下達のライン(単線)で構成され、指令を受ける担当は一人です。つまり、他の人は誰も知らないため、ラインのどの段階にでも隠蔽が可能であるという、指揮系統が必然的に孕む欠陥が私権圧力の衰弱に伴い、噴出したということなのです。
参考:不正・不祥事の続出は、指揮系統の末路の姿
トラブルの根底に指揮系統あり。すべてをネットへ
■大企業の収益は国の借金頼みとなっている
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近年よく耳にするエコポイント、エコカー補助金、エコカー減税などは、耳障りのいい言葉を使ってはいますが、実態は税金による大企業保護以外の何者でもありません。
‘70年ごろの貧困の消滅に伴う物欲の衰弱により、製造業は国内では商品が売れなくなりました。しばらくは輸出の比率を増やし、利益を確保してきましたが、輸出も頭打ちになると、経済界→政界への強い影響力を利用し、露骨に大企業有利の政策を誘導するようになっていくのです。
逆に言えば、輸出系大企業は、税金で保護してもらわなければ生き残れないほど窮地に追い込まれているということなのです。
■消費増税も大企業の利益確保のための政策
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消費税増税が既定路線となっていますが、なぜ増税するのでしょうか?国の財政が厳しく、国民みんなで負担しなければいけないからなどと言われていますが、上げるべきは本当に消費税なのでしょうか?なぜ経団連をはじめとする経済団体は消費税の増税を要求し続けているのでしょうか?
一方では、自動車取得税が廃止の方向で調整に入っていますが、この動きにこそ意図が隠されています。他にも経団連は、消費増税と同時に法人税の減税を求め、しっかりと自らの利益は確保しようとしています。更には、輸出系の企業は、増税すると「輸出戻し税」により、益税が見込めるのです。輸出戻し税とは、企業の売り上げの内、外国への輸出では消費税は取れないので、その分の仕入れ原価に掛かる消費税分が国から還付される仕組みのことです。(参考:リンク)
つまり、これらの動きには、一貫して国民の負担を増やしてでも大企業の利益を確保しようという意図が働いており、前段の税金による大企業保護から続く一連の流れなのです。
このような意図を隠し、国民みんなで負担しましょうなどという政策は、暴走と呼ばざるを得ません。
参考:これからの税制どうする? 第1回~消費税増税するのなんで?
それが’10年代、国民生活を守ろうとする勢力(小沢)を排除しようとする司法とマスコミの独善と横暴、あるいは原発や消費税やTPPに見られる学者・官僚・マスコミの騙しと暴走である。今やこの社会の統合者たちは、自分たちの権力を維持することしか眼中になく、彼らの飼い主たるアメリカ(金融勢力)の云いなりになって国民からとことん毟り取り、その国富をアメリカに献上することしか考えていない。
だが今や、そのアメリカも含めて、世界経済はいつ崩壊してもおかしくない状況にある。
■総選挙における自民党圧勝はアメリカ→経済界の意向
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昨年末に行われた衆議院解散総選挙は自民党が圧勝しました。投票日前から、マスコミでは盛んに自民党圧勝が既定路線であるかのような報道がなされ、論点となるはずだった原発、消費税、TPPなどの問題は自民党優勢報道の増加とともに、いつの間にかうやむやになってしまいました。
これらの論点が議論されなかった理由は、政界を動かす経済界にとって都合が悪かったから、の一点に尽きます。原発や消費税、TPPを論点にすればするほど、勝たせたかった自民党には不利に、未来などには優位に働くことは明確でした。だからマスコミは敢えて橋下などを大きく取り上げ、全般的に政策についてはできるだけ話題にしなかったのです。その意味では、政策的には国民の意識とは正反対の結果が生み出された、特異な選挙だったと言えるでしょう。
戦後、一貫して日本の政治はアメリカからの強い影響力を受け続けてきましたが、この圧力が、近年の世界規模の経済状況の悪化とともに、急速に強まっています。
中でも、集中攻撃を受けているのが小沢一郎です。氏が中心の一人であった日本未来の党は惨敗を喫し、更には分党に追い込まれました。数年前から続く小沢裁判もこの構造の一事象です。このように、アメリカ→経済界に徹底的に操作されてしまっているのが現在の政治の実態です。
参考:マスメディア情報工作が生んだ「元の木阿弥政権」
アメリカ発『世論操作』
米国・電通のマスコミ支配
■世界経済はいつ崩壊してもおかしくない状況
日本の経済が危機的状況にあることは、薄々は感じているところと思いますが、経済は世界規模で危機的状況にあります。
アメリカも日本以上に危機的な状況にあります。先日、「財政の崖」問題を回避したという報道がありましたが、予断を許さない状況は続いています。税収90億ドルに対して米国債の利払いだけで300億ドルという借金地獄に陥っており、このままいけば、2月15日から3月1日までの間に破綻するとまで言われるような状況(リンク)にあります。次も回避する公算が高いとも言われますが、結局は延命措置を繰り返しては益々悪化するという繰り返しであり、本質的な解決はもはや不可能とも言える次元にあります。ここにきて、1兆ドル硬貨の鋳造を検討しているという話も出てきており、いつどのような動きがあってもおかしくありません。
ヨーロッパも、PIIGSなどの国はもちろん、頼みの綱のドイツまでもが信用を失いつつある状況で、欧州危機は未だ進行中です。
中国についても、GDP、貿易など各数値で陰りを見せ続けており(リンク)、極端な格差問題も解決されないまま、対中国投資が他の新興国への投資に切り替えられつつあるなど、世界経済を支えるだけの力はありません。
このように、世界経済はリーマンショック以上の崩壊現象がいつ起こってもまったく不思議ではない状況にあり、市場の動向に存続すらも委ねざるを得ない「企業」は、根本的な転換が不可欠なのです。
参考:国の借金とGDPグラフ(最新2010年版) 借金による水脹れを除けば、一貫して縮小している市場
通貨発行権奪還の布石か?~オバマの1兆ドル硬貨構想
ここまでは、私権原理に基づく社会の行き詰まりを扱ってきましたが、次回以降は深層で胎動する可能性を扱います。何もかもが行き詰っているように見える社会の中、どこに可能性があるのか、企業はどうするべきなのかを明らかにします。
- posted by doUob at : 22:18 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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