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2009年02月13日

【企業が農業に参入するのは何で?】第四弾~農業の利益構造~

 最近は、「渋谷ギャルが農業再生 米作り挑戦、秋に商品化」や、「BRUTUS最新号 みんなで農業」など今まで農業とは対極にあったようなギャルやブランド中心の雑誌などで農業が取り上げられる時代になりました。これは一過性のブームなのか、自然や本源性への回帰なのかは気になるところです。
 さて、【企業が農業に参入するのは何で?】シリーズ第四弾は、基礎知識として農業や農産物流通価格の利益構造について調べて見ました。
 食品スーパーなどで売られている野菜や果物、はたして生産農家の方達の販売価格はいったいいくらくらいなのでしょうか?かなり、安いのだろうと思いつつ、意外に知らないのではないでしょうか?では、まず下の図をごらんください。
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『平成19年食品流通段階別価格形成調査(青果物経費調査)結果の概要』より抜粋引用
では、このグラフの詳しい内容についてみていきましょう。
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◆価格形成の試算
だいこんを例とした価格形成の試算結果は、次のとおりである。
(1) 集出荷団体の販売価格及び生産者受取価格
ア 平成19年直近の決算期間(1年間)のだいこんの100kg当たりの生産者受取価格は、
調査結果から4,767円であった。
イ 平成19年直近の決算期間(1年間)の集出荷団体でのだいこんの100kg当たりの販売
価格(卸売市場での卸売価格)は、調査結果から7,541円であった。
(2) 仲卸業者の価格
ア 仲卸業者のだいこんの販売価格は、仕入価格に対し118.4%であった。
イ 仲卸業者は、集出荷団体の出荷しただいこんを卸売市場を経由して(1)のイの卸売
価格(7,541円/100kg)で入荷すると仮定できるので、仲卸業者での100kg当たりの販
売価格は、販売金額と仕入金額の対比(118.4%)を用いて、
 7,541円 × 118.4% = 8,929円 と試算される。
(3) 小売業者の価格
ア 小売業者のだいこんの販売価格は、仕入価格に対し138.4%であった。
イ 小売業者は、仲卸業者から(2)のイの仲卸価格(8,929円/100kg)で入荷すると仮定
できるので、小売業者での100kg当たりの販売価格は、販売金額と仕入金額の対比
(138.4%)を用いて、 8,929円 × 138.4% = 12,358円 と試算される。 

 つまり、【生産者受取価格4,767円÷販売価格12,358円=38%】となるわけですね。ということは、卸しから小売段階の流通コストが62%も乗っかってくることになります。なお、この流通コストは私たち消費者が便利に買物ができたり、品質管理(サイズ、形の統一)などのメリットを受けるためのコストともいえます。それ以外の野菜等についてもみてみましょう。
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『平成19年食品流通段階別価格形成調査(青果物経費調査)結果の概要』より抜粋引用
 では、次にその流通構造を具体的に見てみましょ。
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農畜産業振興機構:「日本と各国の家計消費支出比較」より引用
 食料品が小売店(スーパー等)の店頭に並ぶまでに、これだけの工程がかかっていることに驚きます。これでは、当然、多くのコストがかかってくるわけですね。ただ、いつでも買える便利さ(最近は24Hスーパーも多い)や、農産物規格の統一が、消費者にとって本当に「必要か否か?」を考えて見る必要がありそうです。
 そして、流通段階のコストの中味のほとんどが「(卸しと小売段階の)販売利益」であって、物流コストの比率は低い。要は、売ってもらうための販売コストということだといえます。
 「農業が儲からないのはなんで?(1)~現在の状況と原因構造~」も合わせて考えれば、農業が儲からない理由として、以下のことが考えられると思います。

①流通コストが高い=複雑な流通構造と多段階マージンの負担
・「生産⇒流通⇒小売」の各段階で「経費+マージン」が加算される。よって、この部分をいかに効率化および省略化していくことができるかが課題。
②流通段階の商品ロスが多い=ものによっては30~50%に達するといわれている
・複雑な流通であればあるほど商品の鮮度は落ち、廃棄ロスも多くなる。消費者(マスコミ)の過剰な品質要求(賞味期限の徹底等)によっても期限切れロスが増えてしまう。また、いつでも多くの商品を揃えることは消費者にとっては便利だが、これも売れ残りロスが増える原因となる。
③価格決定権がない=輸入野菜や作物の出来高によって価格が大きく変動する
・輸入野菜の低価格化によって、国産野菜の売値も徐々に下落していく。あるいは、燃料代や人件費などの生産コストが上昇しても価格アップによって回収することも不可能。すべて、生産者が利益を削って対処するしかない。
・しかし、そうなっているのは、自ら販路を開拓せずに販売や流通を他(農協、卸し業者等)に依存していることで、価格決定権を持たないことが原因といえる。

 そう考えると、現在の農業は一部を除いて販売や生産計画を農協や農政に任せ(減反や補助金によってコントロールされ)、価格決定権や自力販売方法を持たず生産課題に限定された「生産下請け構造」なのではないかと思います。
 これは、農業に限らずどんな産業であれ、「下請け構造=卸し売りや小売>製造の力関係」では儲からないのではないでしょうか。近年は、そういった従来の農業経営の在り方から独自の販路を開拓し、自らマーケティングや営業を担って消費者への距離を縮めることで利益を出している農家が増えていると思います。そのひとつが農家と消費者をつなぐ直売や宅配という販売方法なのだといえます。
農業専用IT「からりネット」で食の安全と農業の活性化を両立
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 現在では直接販売し、その売れ行きや評価(お客様の声)を聞き、商品を改善する。あるいは、売れている農家(成功事例)を見て学ぶといった効果が現れてきているようです。また、自らの農産物が売れ行きをリアルタイムで情報を得て、追加納品や今後の作付けを考えるという行為を通じて「売る楽しさ(生産充足)」を実感し、高齢の農家の方も喜々として携帯やPCを使うようになったとのことです。
 仕事を通じての反応充足を得るということ、あるいは部分課題(生産)だけではなく、全体課題(作付け計画→生産→物流→販売→評価=売行きやお客様の声)を意識できることによる「外圧(状況認識)△=活力△」が事業として利益を出していく根本のような気がします。
 これらの直売、宅配事業の可能性あるいは問題点については次回考えて見たいと思います。

 

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