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2009年06月02日

長寿企業に見る経営の本質 ~日本人が本当に充足できる「おもてなし」とは?~

先日、接客サービスで有名な「リッツ・カールトンホテル」東京を訪れてみました。
「リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間」という本も出版され、マスコミでも盛んに取り上げられていたホテルだけに、期待半分、疑い半分で足を踏み入れてみました。
 その接客の印象は、「なにか主張するような」「キビキビした」「プレゼン調」といった言葉で形容できそうな内容。GWの繁忙期で忙しかったということを差引いても、残念ながら“サービスを超える瞬間”は訪れませんでした。
 そしてむしろ、「これなら純和風の老舗旅館の方がよっぽど行き届いたサービスがされているのでは?」「外国人であればあんな雰囲気が受けるのだろうか?」といった疑念が湧いてきたのです。
 というわけで、今回のテーマは日本の伝統企業・旅館編
omotenashi.jpg
(英治出版HPから引用)
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■リッツ・カールトンのサービスの根底にある思想
 まず、リッツ・カールトンのサービスとは何だったのか?改めてHP(http://corporate.ritzcarlton.com/ja/About/GoldStandards.htm)をチェックしてみました。
 そこには、同ホテルの価値観と理念である「ゴールド スタンダード」が掲げられています。それらは、クレド、モットー、サービスの3ステップ、サービス・バリューズ、従業員への約束という、階層的な5つの要素から成り立っていて、
 例えば、
「クレド」では、
>「お客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。」<
「モットー」では、
>「「紳士淑女をおもてなしする私たちもまた紳士淑女です」をモットーとしています。」<
「サービスの3ステップ」では、
>「1.あたたかい、心からのごあいさつを。お客様をお名前でお呼びします。」
「2.一人一人のお客様のニーズを先読みし、おこたえします。」
「3.感じのよいお見送りを。さようならのごあいさつは心をこめて。お客様のお名前をそえます。」 <
といった主張が並んでいます。が、これらは接客業としての基本が殆どであり、一見なんの変哲もない言葉に見えます。
しかし、「サービス・バリューズ」を読み進むと、そこには彼らの思想は鮮明に出てきます。
「私は、強い人間関係を築き、生涯のリッツ・カールトン・ゲストを獲得します。」
「私は、お客様の願望やニーズには、言葉にされるものも、されないものも、常におこたえします。」
「私には、ユニークな、思い出に残る、パーソナルな経験をお客様にもたらすため、エンパワーメントが与えられています。」
「私は、『成功への要因』を達成し、リッツ・カールトン・ミスティークを作るという自分の役割を理解します。」
「私は、お客様のリッツ・カールトンでの経験にイノベーション(革新)をもたらし、よりよいものにする機会を常に求めます。」
「私は、お客様の問題を自分のものとして受け止め、直ちに解決します。」
<等々。
 つまり、この「私」がリッツ・カールトンの思想の根幹にあります。もちろん接客業ゆえお客様に対する思いやりの言葉は随所に見られますが、基本はあくまでも「私」(接客する側)にあり、お客さんとの関係で主導権を握ろうという強い意志さえ感じられます。
 アメリカで設立され、世界各地に展開しているグローバル企業が掲げる思想ですから、「私」中心になるのはある意味当たり前なのでしょう。当然、プライバシーの保護が絶対的価値に位置づけられますから、接客サービスも「あなたはあなた。私は私」と、お互いに踏み込まない中途半端なものにならざるを得ない。先日東京で感じた違和感はこのあたりに原因があったようです。
■「心のこもったおもてなし」を掲げる老舗旅館
 一方で日本には多くの有名な老舗旅館があります。中でも注目したいのが、プロが選ぶホテル・旅館100選で、29年連続で1位を獲得している石川県の旅館「加賀屋」です(参照:http://www.narinari.com/Nd/20090111012.html)。
 明治39年に創業された同社のHPには、先代女将の小田孝さんが創業80年を機に出版した「元気でやってるかい」という書籍が紹介されており(参照:http://www.kagaya.co.jp/kagaya/tradition/index2.html)、そこに描かれた女将の姿からは、旅館が長年に渡って評価を獲得してきている理由が見て取れます。以下引用です。
●「お部屋回りでお客様の満足度を肌で知ることができました」 
 >アメリカさんたちの宴席におきまして、知事さん(柴野和喜夫さん)が、お一人お一人にお酌しながら、丁寧に挨拶して回っておいででした。「あんな、えらい人がこまめに…」と、まことに感心いたしました。それで、私もと、お部屋まで必ずご挨拶に回るようになったのです。(中略)
 余談になりますが、そのせいか現在は、ひざが角質化してしまい、正座することが困難となってしまいました。持っている着物のすべてのひざに当る部分は、すり切れてしまっています。
 
 お部屋回りは、お客様に感謝するという意味で、おかみとしては欠かせないことですが、お客様の満足度を肌で知るうえでも、これ以上の方法はないということにも気がつきました。お部屋へお伺いした雰囲気で、お客様のうちに対する評価がわかるようになってきたのです。<
 今では当たり前になった「答えは現場にある」と同じ内容ですが、常に学ぶ、真似ぶ姿勢を持った謙虚な人だからこそ、行動しその大切さに気づくことができたのですね。あと、先ほどのリッツ・カールトンの思想とは全く逆で、「お部屋周り」という“プライベート空間へ女将が入っていく”という行為が日本旅館ではむしろ自然に、一つの価値として提供されている点に注目すべきでしょう。
●「採算にとらわれずに、お客様と真剣勝負をするつもりで」
 >一番最初に、部屋の中を見回しますので、「奥さんはただ挨拶にくるんやない。部屋の中を見にくるんや」といわれました。(中略)
 
 そして、“観察”の結果をすぐに女中さんや板場さんにはね返すわけです。「○○の間の料理はすぐに取り替えて」「でも、予算どおりなんですけれど…」「いいからすぐ替えなさい。あれでは寂しすぎます」。そうしないと、私の気がすまなかったのです。採算を考えることも必要ですが、お客様に満足していただけなければ、“張り”というものがないですよね。
 
 そんな意味もあって、「できません」とはいわないようにして、一人一人のお客さんと真剣勝負をするつもりで、サービスにあたりました。「何とかという、珍しい名前のたばこが欲しい」と、いわれれば、七尾まで車を飛ばして買いに行かせました。酒宴が始まってから、「富山の酒(銘柄は忘れましたけれど)が、どうしても飲みたい」と、おっしゃる方がいらっしゃり、タクシーを飛ばして砺波の醸造元まで買いに行かせたこともあります。酒宴にはもちろん間に合いませんでしたが、夜中には届きました。
 
 採算など合うはずもありませんし、無茶な要求だと思いましても、無茶とわかってて要求するお客様の願いがかなえられた時の驚き、喜びは、ひとしおだったようです。
 
 そんなお客様は、必ず末永くお得意客になってくれましたし、友人、知人の紹介もしていただけました。そんなことなど、客商売の面白さをひとつずつ覚えていきました。<
 目の前のお客さんをとことん幸せにする。これもいまやサービス業では当たり前の鉄則になりましたが、お客さんからの期待圧力を“張り”という言葉で前向きに捉えている点が印象的です。
●「早朝でも深夜でもお見送りはかかしませんでした」
 >私のことを“化けもの”とうわさされていた時もあったようです。早朝でも深夜でもお客さんのお見送りを欠かさなかったことから、「よく体が持つものだ」といわれ、それが誇張されて「夜も寝ないでがんばっている」になり、ついに「化けものや」といわれるようになったらしいのです。
 
 確に、朝早くおたちになるお客様がある日には、前夜から寝ないでいることもあり、深夜の場合は、目をこすってでも頑張りました。ただ、そうしないと私の気がおさまらないからで、それ程意識してやっているわけではありませんでした。私のクセのひとつとでもお思いになって、気になさらないでいただきたかったのですが、なかなかそうは見ていただけなかったようです。まあ化けものなら化けものでもいい……とあきらめて、フテくされていた次第でした。
 
 「いらっしゃいませ」という私の特徴ある声をテレビかラジオのコマーシャルに使おうと、むすこたちが相談していたことがあるそうです。まったくひどい話です。私のお客様に対する自然に出てきた気持ちを、そんな形で使われては困るのです。化けものは化けものになりきってしまったために、加賀屋の看板になってしまったのでしょう<
 この「気がおさまらない」とはどういう心境なのでしょうか?おそらく次から次へと応望意欲が湧き上がってくる状況なのではないでしょうか。
 そんな先代の精神は現在にも引き継がれています。以下「元気印企業の経営戦略に学ぶ」『加賀屋』(和倉温泉)、27年連続日本一の秘密に迫る 作業から解放して質の高いサービスを提供(http://sme.fujitsu.com/tips/study/study119.html )より、同社の小田禎彦会長の言葉です。
●共同体的経営 ~昭和61年には企業内保育園も創設~
 「旅館では、目の届かない部屋の中でサービスが行われることが多いのです。それだけに、見ているところではやるが、見ていないところでは手を抜く社員では困ります。見ていないところでも、とにかく誠心誠意、一生懸命やってもらうには、社員との間に心が通じていなければなりません。『やれ、やれ』というだけではできないのです。社員の身内が亡くなれば、お通夜、葬儀にお参りして手を取り合って泣いたり、子供が入学したと聞くと、時計をプレゼントしたり、そういうことが大事なんですね。みんな自分が一番かわいいだけに、自分の立場で物事を考えてくれる、泣いてくれる、そういう人を頼っていこうというのは当然なんですね。社員満足度を高めることを、早い時期からやってきたことがよかったのではないかと思います」(中略)
料理を調理場から各階に自動的に搬送するシステムによって、客室係はその時間の大半を接客サービスに割けるようになったが、取った策は、それだけではない。
「ハイテク、ハイタッチとでもいえばいいのでしょうか。ハードが整備されたことで、客室係は疲れることもなく、にこやかにお客様にサービスできるようになりました。しかし、問題はありました。子供を抱えて働く女性が多いのですが、子供のことが気になるとサービスに専念できません。そこで、昭和61年には、子供を抱えていてもしっかりやっていけるようにと、企業内保育園付き母子寮の『カンガルーハウス』をつくり、子供たちにも喜びを与えられるようにしました」(以上、引用終わり)。
■「おもてなし」とは何か?
 「おもてなしの源流 日本の伝統にサービスの本質を探る」(リクルート ワークス編集部著)では、サービスする人・される人、どちらにとっても味わい深い、日本流「おもてなし」の本質を、「一期一会」「主客共創」といった言葉で紹介しています。以下、上記の書籍紹介文からの引用です。
 >レストランで、客同士で楽しく会話しているのに割って入って長々と料理の説明をするウェイトレスにうんざりしたことはないだろうか。近年、効率化、マニュアル化が推し進められた結果として、「本物のサービス」とは何か、が見え辛くなっているのではないか。そこで、「サービス人材」の探求に力を入れてきたリクルート『Works』編集部が目をつけたのが、日本伝統の「おもてなし」だ。
 花街で極上のおもてなし術を披露する太夫(芸妓の最高位)、老舗の呉服屋の若旦那、海外スターにも人気の温泉地・由布院の旅館経営者、などなど各界一流の「おもてなしの達人」や、松岡正剛さんはじめ日本のおもてなし文化に造詣の深い研究者の皆さんに聞いた話は、まさに目からウロコの連続だった。
 「主人(もてなす側)」と「客(もてなされる側)」が、一方的な関係ではなく共にその場をつくる「共創」の関係を持つこと。お決まりの接客ではなく「一期一会」を演出すること。そして、「ふるまい(態度・振る舞い)」「しつらい(室内装飾・インテリア)」「よそおい(外観・装い)」を兼ね備えること。長い伝統の中で磨かれた日本の「おもてなし」から、もてなす側・もてなされる側双方にとって、より良い「おもてなし」を創造するためのヒントが見えてくる。<
 そしてリッツ・カールトンも、加賀屋も、同じくこの「おもてなし」を掲げています。でも、今回見てきたように、その中身はまったく逆の思想で貫かれています。
 かたや、
お客と接客のプロという個人と個人の対等な関係の中に、「おもてなし」を追求するリッツ・カールトン
 一方で、
お客ともてなす側が共に一体となって場を創り出す中に、「おもてなし」を追求する加賀屋
 それは、個人主義的経営と共同体的経営の違いとも言えます。
 そして、この傾向は単にこの2大有名旅館に限ったものでなく、外資系ホテル(まがいも含む)と和風老舗旅館の全般に見られるものであって、すでに「自分からみんなへ」と大衆の意識潮流が変化する中で、どちらの経営手法が成功するかは明らかだと思うのですが、みなさんはどう思われますでしょうか?

 

コメント

コニシくん、こんにちは♪
>まずは手元の資料を見たり、人に聞いたりすることで状況を認識することが「考える」のスタートなのでしょう
そうですね♪
何を考えるにも、そのもの(対象)の背景や状況を知らないとどうにも判断できない・考えられないと想います。
昨日、論理的思考の研修を受けてきましたが、そちらでも同様のことを言われていました~~
「どうする?」となったときに
まずはゆったりと周りの人やモノを見渡す(意識を向ける)ことって大切だと想いました☆

  • ふぇりちゃん
  • 2009年10月31日 17:31

コニシさん、こんにちはv
>「どういうパーツが仕組みを構成しているか」「どういう目的でその仕組みが作られたのか」
作った人の意識や作られた背景に同化するという行為は、意識的に繰り返しやっていって感度を磨いていかないといけないなって思います。
>まずは手元の資料を見たり、人に聞いたりすることで状況を認識すること
これ、具体的に実践してみての気づきがあればゼヒ聞教えてください!☆

  • ナエ
  • 2009年11月1日 01:21

ふぇりちゃん
>何を考えるにも、そのもの(対象)の背景や状況を知らないとどうにも判断できない・考えられないと想います。
本当はこの通りなのに、「妄想して考えているつもり」になっている状態が一番怖いことだと感じました。
まずは現状認識から。遠回りなようで、最終的にはこれが作業の精度とスピードを上げるために必要ですね。
ナエさん
>具体的に実践してみての気づきがあれば
状況認識って言っても、ただ紙面上の文字を追いかけたり、人の言葉の上っ面だけなぞっても見えてこないなと感じています。
なので、ナエさんがおっしゃるように、「作った人の意識や作られた背景に同化する」ということを意識的に行うようにしています。
なかなか難しいですが、正確に状況を理解するためには避けられない道。頑張ります。

  • コニシ
  • 2009年11月2日 13:41

上司から指導されたことを、こうして発信していくことで1つ1つ吸収していけますね(^^)
導いてくれる人がいる環境があること、本当素敵ですね☆

  • ゆっきー
  • 2009年11月12日 22:00

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