2010年11月06日
農に始まる企業の再生 ~マイファームによる企業の農業参入支援~
京都に面白い共同体的企業があります。
「耕作放棄地の再生」を貸し農園事業や農家支援という形で実現している、マイファーム株式会社(http://www.myfarm.co.jp/)。
同社は2007年設立、従業員26名という若い会社ですが、社会全体で農業への関心が高まる中で「自産自消」の理念を日本全体に広めていくことをミッションにした同社の活動は、着実に成果に繋がっているようです。
先日も類グループ(類農園)と一緒に京都大学で開催されたシンポジウム「企業の農業参入の可能性~新たな地域連携の生成~」に参加し、類グループ(類農園)の共同体経営についても「うちも同じ」と同社の社長自身がコメントしていたように、今後共同体的企業の繋がりを広げていく意味でも注目に値する企業です。
さて、マスコミでも「畑DE婚活」が取り上げられるなど多くのユニークな取り組みをしている同社ですが、中でも注目したいのが、貸し農園事業で培ったノウハウを武器に他の企業にコンサルティングを行い、企業の農業参入を促進している点です。
以下、11月3日京都大学で行われた上記のシンポジウムの講演資料からの引用紹介です。
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ここで事例紹介されている4社は、ネットでの情報サービスを提供しているNECビッグローブ、生活情報誌を発行しているサンケイリビング新聞社、京都の老舗テレビ局である京都放送(KBS京都)、携帯電話の機能およびコンテンツ提供を行うモアコミュニケーションです。
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■事例1.ビッグローブファーム
○サービス概要:
・リアルなレンタル農園に加え、ネットサービスで利便性・楽しさを追求
・初心者の方でも参加しやすい広さ、低価格(7.5㎡・3,980円~)実現
○ビッグローブの農業新規事業としての取り組み
①農業参入への旗印
②農業用ウェブカメラのモデルルーム利用
③耕作放棄地を再生させるためのCSRを含めた収益事業として採用
※8月現在、埼玉県久喜市、埼玉県浦和市の2箇所に展開をしており、2010年度末までに20農園を目標として打ち出している。
写真はビッグローブファーム(http://farm.biglobe.ne.jp/)から。
■事例2.リビングファーム
○サンケイリビング新聞社としての農業新規事業としての取り組み
読者層を狙った新たな社会貢献型収益事業として関西地区の耕作放棄地を利用し、マイファーム事業を展開。マイファーム以外の特色 ①近畿発の新品種作物を同時に作り、サンケイ産として利用者や法人への販売を行う予定
※8月現在、大阪府高槻市、兵庫県西宮市のマイファーム隣接地にリビングファームとして開園中。いずれの農園も満席でキャンセル待ち状態。今後の展開としては関西を中心に2010年度末までに5箇所開園予定。
参照:サンケイリビングのHP(http://www.lcomi.ne.jp/monorail/pdf/1008_07.pdf)
■事例3.KBSファーム
○KBSの土地有効活用事業
電波塔の下の雑草地を利用して、体験農園を行って地域貢献+副収入を得る仕組みを導入。KBS側が地主となり、マイファーム社が場所を借り受け、農園を運営。
総務省より有効活用事例として雑誌に掲載され、地域からの評価があがった。今後はこの敷地内に直売所を置き、野菜は花苗の販売をおこなっていく方針がでている。
参照:マイファーム西辻一真のブログ「KBSファームがOPENしました!」(http://ameblo.jp/okinawa-kyoto/entry-10454551281.html)。
■事例4.モアコミファーム
○モアコミュニケーション社の狙い
①社内の福利厚生として農園を導入
②携帯アプリ「おやさい」という農園シュミレーションゲームで特典として野菜を配るために生産。
③ゲーム会社が農園をすることで農業系アプリのトップランナーの地位を確立するため。
写真はモアコミファームのブログ(http://farm.more-com.co.jp/)から。
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これらの企業はいずれもメディア関連企業ですが、少し前であれば“なんでメディア関連企業が農業参入??”と不思議に思われたことでしょう。それくらいに企業を取り巻く状況の変化は急速に進んでいます。
ここ約40年間の社会の変化を見てくると、その答えが浮び上がってきます。
1970年の豊かさ実現によって、生存圧力が低下し、人々の私権獲得競争が鈍化していく中で、それまで企業集団を統合してきた序列原理(肩書き・身分)が次第に価値を持たなくなってきました。そして最近の若者に至っては大半が「出世」になど興味を持っていません。
こうして企業の人間関係で序列原理(一方的・擦りあわせなし)が通用しなくなった今、共認原理(双方的・擦り合わせあり)に軸足を置いた企業が増えてきました。そのような企業では、仕事上の擦り合わせはもちろんのこと、仕事以外でのやり取りのよる充足も楽しんでいます。最初のうちそれは、社内でのサークル活動や食事会、社員旅行といった、親和の場、消費の場での充足、盛り上がりとして顕在化します。
しかし、やがて単なる親和や消費では飽き足らず、その課題の中身が「より社会的なみんな課題の追求」へと変わっていきます。近年、CSR(企業の社会的責任)活動として環境活動への取り組みが増えてきているのも(その良し悪しは別として)その一例ですし、企業の農業参入や「るいネット」や「ネットサロン勉強会」における社会の勉強などは、まさにみんな課題の追求による充足の典型といえます。
この流れは、大きく捉えて、社会全体の期待が「豊かさ期待」から「本源(=本源的な人間関係、集団の再生)期待」へと変わったことで、企業集団における課題共認の中味も、私権価値の追求から、本源価値の追求へと大きく様変わりしてきていることを示しています。
今回紹介したマイファームをはじめとする企業群、あるいはすでに10年前に農業参入している類グループの事例は、「企業人が活力持って取り組めるようなみんな課題(←本源価値)とは何か?」という問いに対する有効な答えの一つである、と言えるのではないでしょうか。
- posted by seiichi at : 17:41 | コメント (2件) | トラックバック (0)
コメント
予想以上に早い現地復興の様子がわかりました。
神戸の震災時の復興事例も挙がってましたが、確かに「創造行為」は誰にとっても楽しく、充足できるもの。
でも、復興資金のように「誰も反対できない」お金がある場合は、とりあえず誰にも分かり易い「ハコモノ」の創造へ走り勝ち。
本当は中長期的な「ヒトのココロ」の創造が必要なんですね。
たむたむさん、コメントありがとうございます。
政府責任者の「被災者の救済などは自治体にやってもらうことにして、私たちはもっと楽しい夢やビジョンを描きましょうよ」 には驚くと同時に、いらっときました。
地元で頑張りたいという人たちの夢やビジョンを考えてもらいたいものです。
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