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2008年10月01日

目先の教育方針ではうまくいかないのはなぜか? ~根本圧力をとらえ、実践するには~

こんにちは、はしひろです 🙂
前回の投稿「相手が『学ぶ』ためには、教える?教えない? -そもそも『教える』とはなにか?-」に引き続き教育について書いてみたいと思います。
人材育成など社員の教育をどうすればよいか、頭を悩ましている人も多いだろう。
しかし、いきなり「教育をどうするか?」という教育問題そのものを扱ってもそれは目先的で本末転倒だ。
目的はあくまで、「企業がどう勝っていくのか?」という社会においてどう生き残っていくのか?である。
まず、社会構造と現実の根本原因を考えなければその答えは出ない。
したがって、自分が考えている教育論や人材育成論は一旦棚上げにしてほしい。

この投稿では前段で、社会の歴史構造と最近の教育問題の原因を分析した上で、「どうする?」を明らかにし方針を出しています。
そして、後段で、その方針を実践している上司の事例を具体的に記載しているので、ぜひ参考にしていただきたい。

では、最初にそもそも「なぜ学ばないのか?」を考えていこう。
⇒「続きを読む」を押してください。
この内容は、ネットサロンという場でみなで議論し合い、さらに「るいネット」という認識形成サイトと通じて塗り重ねられた認識です。
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●なぜ学ばないのか? ~圧力衰弱の構造~
戦後以降、かつて日本が貧困の時代であった頃は、働かざるをえない生存圧力によって、ひたすら働いた。周りの社員よりも出世するために周りをよく見て、盗めるものは盗んだのだ。だから、自然に学んだのだ。
そして1970年代、日本は貧困が消滅し豊かになった。そして、自分のために求めていた「お金」や「地位」(私権)は第一の価値ではなくなってきたのだ。
原因の根本には私権圧力の衰弱がある。
人間を含むあらゆる生命体にとって、外圧と内圧は常にイコールである。従って、外圧としての私権圧力が衰弱すれば、内圧も衰弱する。この内圧の衰弱とは、外圧に立ち向かっていこうとする力、つまり主体性の衰弱を意味する。

例えば私権圧力が旺盛な時代の人間には、複雑な身分序列関係・複雑な人間関係の中でいかに生き残っていくかという関係耐力(自我・私権のせめぎ合いに耐え得る関係能力)があった。しかし私権圧力が衰弱すると、真っ先に関係耐力が衰弱する。関係耐力が衰弱しただけでなく、遊びさえ自分たちで企画できないくらいに主体性が衰弱してしまった。
「主体性の衰弱→喪失が、表層的な仲間関係を生み出した」(内藤琢さん)
主体性が喪失しているのは、社会全体の現象であり現在の30代までの若者は特にこの圧力低下の世代に当てはまる。圧力低下は当然若者だけでなく、社会全般を取り巻き、もはや人材育成の問題は育成側にあるとまで企業は問題意識をもっているのだ。
このように、圧力衰弱の結果「働かなくてもよい」「学ばなくてもよい、」という状況が生まれたのである。
●現在は世の中ではどのような教育方針があるのか?
このような状況において、現在の教育方針、人材育成方針はどのようなものがあるのか?
学校教育で言えば、「個性教育」や「ゆとり教育」がある。
「自分で決めなさい」「選択肢は広いんだからあなたの好きな分野に進学しなさい」という個性重視の教育によって自分で不安の中、判断するしかなくなっている。そして、「ゆとり教育」は強制や競争を排除し、のびのびと子供たちの個性を伸ばす「個性教育」を推し進めてきたが、結果は大量の自己中を生み出した。自己中では、相手を見て「学ぶ」こと、ましてや集団で働くチームで闘う仕事で意思疎通が図れないのは必然だ。
企業で言えば、以前大手企業がいっせいに導入した「成果主義」は個人の成果度のみを評価するもので、周りの仲間社員を敵視→結果企業内の集団性が崩壊し、成果がでなくなったのだ。
ベストセラーとなった「部下は育てるな!取り替えろ!!」も同様に個人の能力にだけ焦点を当て、育成しようとするものであるが、個人に焦点を当てている限りは育成の答えにはなっていない。
また、うまくいかない現象も2000年以降不祥事やミスが急増しているのだ。
。(「不祥事の報道の件数」東京経済大学・駒橋恵子助教授の調査、日本経団連タイムス掲載)
●活力源は圧力 「外圧=内圧」 ~「教える」ためには構造認識が必要~
では、可能性が無いのか?というと、当然そんなことはない。
貧困の消滅による圧力衰弱が根本原因であるのだから、新たな圧力を形成すれば、その外圧に対する内圧=活力が生まれ、そして、主体性が再生し、学んでいくのだ。
しかし、圧力は自らとらえることができないほど複雑であり、また、とらえる力も当然衰弱している。
だから、上司に求められるのは、圧力を伝えるという「教え方」だ。
この「教え方」は、社会の構造をつかむということと同義であり、この構造をつかむ構造認識こそ上司の能力と等しいと言えるだろう。
(具体事例は下記参照)
つまり、教育問題の根本原因は圧力の衰弱にあり、再生のカギは圧力をとらえる構造認識にこそあるのだ。
●具体事例 ~設計の申請作業を「教える」~
私はふだん建築設計の仕事をやっているので、そこでのみんなから信頼される上司の事例を紹介しよう。
設計では確認申請を通し、その建物が法規的に整合したものであれば着工することができる。その申請書類の作成が若手社員の仕事であるのだが、これは設計の中でも最も重要な仕事の一つで、その業務をどのように伝えるか?について。
☆圧力を伝えるポイント
①現在の社会状況。
②今私たちのいる業界の状況、競合との関係etc
③我が社のおかれている状況。
④だから、こういった方針になるといった根拠。
⑤任せる仕事への期待

■現在の社会状況と、我が社のおかれている状況を伝える
建築はニュースでも度々言われている通り、現在世間から「耐震偽装」「談合」など非常に厳しい評価であり、数年前に比べても格段に業務の内容が難しく、かつ精密になった。
特に、申請業務は、申請期間が長くなったこと、構造の審査(適合判定制度)が加わったりと、審査内容、期間(以前は3週間→2ヶ月以上)共に厳しい状況だ。また、審査機関もその外圧を受け(例えば耐震偽装した建物の確認を通すと、審査機関の評価が地に落ちる)、書類と図面の不整合が一つでもあると、申請が通らない。
さらに一つのミス、一日の遅れによって、申請の確認遅延→工期の遅延→莫大な費用がかかる。
このように申請業務は、期間通り建物を建てたいという施主の期待に応える重大な業務だ。
⇒「ミスをせず、申請を早く通すためにはどうしたらよいのか?」
■業務をどう進めるか?と仕事への期待を伝える
この厳しい申請を通すためにはどうすれば良いか?
まずは、「何のためか?」「誰のためか?」「誰が見るのか?」を捕らえる必要がある。
・「何のためか?」
⇒申請とは「建物が法的基準を満たしていること」を証明するためのものである。
⇒では、「そもそも申請をする必要があるのはなぜか?」
・「誰のためか?」
⇒施主のため。
⇒図面に印鑑が押されれば、その「副本」が施主のもとに残り、それが設計成果品となり業務と正確に履行していることの証明となる。
⇒では、「施主が満足できる図面とは?」
・「誰が見るのか?」
⇒申請機関、行政の人、そして施主が見る。
審査の人が見る視点に立ち、「どうすれば見やすいか?」
これら、業務の立場を伝え、その大きな骨子を示しつつも課題の方針の答えは出さない。
その方針を部下に出させ、確認する事で、業務を理解しているか、自己の判断で仕事をしていないかを逐一確認することが上司の役割である。
常に視点は、業務を導く圧力をかけ続けられているか?部下が正しく圧力をとらえているかどうか?だ。

■学ぶのは結果であり、成長は周りの人の評価によるもの
そして、「学んだ」かどうかは、周りの人の評価があって初めてうまくいったことが分かる。つまり、「学んだ」は「評価された」積み重ねによって初めて自覚し、自信と次につながる方針が蓄積できるのだ。
そして、重要なのは、上司は常に「できないことを認識させる」ことだ。できないことは新たな課題で、新たな圧力だ。社会圧力、期待圧力は大きければ大きいほどよい。

このように、企業をとりまく外圧状況、その作業で求められる方針を伝える。そして、この業務を通しての成功体験を部下が積んでいくことで「~すればうまくいく」という思考が形成され、「主体性」を再生していくのだ。
ちなみに、この申請業務をやった社員は現在27歳。去年度入社し、1年間仕事を通して社会をとりまく外圧状況を把握し、成功を積んだことから現在では立派な信頼できる社員へと成長しています。
「教えること」に求められるのは、企業を取り巻く外圧をとらえ、方針を打ち出す構造的思考、「育つことを待つことができるかどうか」肯定的に部下の成長を見守る姿勢です。
●その他具体事例
・「なんで?」を共有することで「当たり前」になる充足規範 (かなめんた)
・「どうしたらもっとうまくいくだろう?」は場を充足(収束)させる魔法の言葉 (白虎)
・「だれのため?」「なんのため?」 (橋本宏)
※「人材育成どうする?~『充足規範』の関連投稿のインデックス~(三浦弘之)」より

 

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