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2008年10月02日

ビジネス書のベストセラーが指し示すもの

毎年、数多くのビジネス書が世に出ていますが、その傾向を見ると、
大きな一つの流れがあるようです。
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『ベストセラーに見る労働環境の変化と市場のニーズ』

本のベストセラーというのは、市場でのニーズをよく反映していると思います。
たとえば、ビジネス書でいいますと、2005年のベストセラーは『下流社会』『希望格差社会』『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』『頭がいい人、悪い人の話し方』などでした。
これは、1995年に始まった日本の小さい政府施策(政府の規模を小さくして、福祉その他を抑える代わりに、民間の活力を生かそうという考え方)が浸透しはじめて、だんだんと格差社会が目につくようになり、汎用的でかつ入門書に近いビジネス書籍が売れた結果でしょう。
2006年になりますと、『なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?』『千円札は拾うな。』『夢をかなえる勉強法』などがベストセラーになり、少しずつ専門化したビジネス書や勉強法へのニーズが高まってきたことがわかります。
さらに2007年は、『「1日30分」を続けなさい!人生勝利の勉強法55』『できる人の勉強法』『無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法』『レバレッジ勉強法』など、みなさんがよく知っている勉強法ブームの年でした。
そして、この勉強法のブームは、2008年の今年に入って、また新しいブームを生み出しています。【知力ブーム】と私は名づけたいと思いますが、より高度な勉強法や思考法を求める人が多くなってきているのです。
これはある意味、当然です。他者よりも高い生産性を求めるということは、すなわち、健全な競争の中で、他の人よりも豊富な知識を持つということです。勉強法がブームになったことで、勉強していない人が不利になるのは当然として、みんなと同じように勉強したところで、平均点+αくらいしか取れないことになってしまいます。そこで、さらに一歩抜きんでるためにと、より高度なものが求められるのです。
このようななか、次のスキルとして必要とされたのは、勉強という比較的インプットを中心とした考え方から、「知力」という、勉強で得たものをどうやって解釈し、判断し、自分の中で新しい情報として置き換えていくかという部分、すなわち思考力です。
その証拠として、2007年末からの各書店のビジネス書でトップを争っていた売れ筋2冊は『地頭力を鍛える~問題解決に活かすフェルミ推定』、拙書『効率が10倍アップする新・知的生産術~自分をグーグル化する方法』です。
『効率が10倍アップする新・知的生産術~自分をグーグル化する方法』は300ページある骨太の本で、内容も明日からできる簡単なことを扱うというよりは、「これが全部できれば効率は上がるでしょうよ」と一部から揶揄されるくらい、広範囲の技術を扱っています。
『地頭力を鍛える~問題解決に活かすフェルミ推定』は比較的複雑な手順をわかりやすく説明したものですが、それでも、2005~2006年の売れ筋ビジネス書にはなかった難易度です。
この2冊に共通するのは、どちらもこれまで、外資系の世界的なコンサルティング会社しか役立たなかったようなビジネス思考のテクニックが、幅広いビジネスパーソンに要求されるようになった結果だということではないかと考えています。
ほかに、『外資系企業がほしがる脳ミソ~採用試験の定番!問題解決力を試す60問』という本もよく売れています。
なぜこのような本が必要とされているかというと、インターネットその他情報技術の発達、そしてグローバル化により、環境の不確実性と、何か起こった時に対応しなければならない企業にとってのスピードがどんどん加速しているためです。すなわち、現場の一人ひとりが不確実な情報を限られた時間のなかで意思決定していかないと、企業の経営が成り立たなくなってしまっていて、そうした、自分で意思決定していける人材が求められているからだと思います。
もちろん、マニュアル化が進み、このような創造的な意思決定がさほど必要とされない仕事も多くあります。しかし、そのような仕事は付加価値を生み出しにくいため、機械による工程やITによる工程の代替品としての価値しか与えられず、時給も月給も、そして勤め口も頭打ちになってきてしまっている傾向があります。
さらに、こういった雇用がどんどん外国人労働者に代替されてきているのは、東京都心部などでコンビニに寄ったり、ファミレスに入ったりしたことがある人でしたら実感していることでしょう。
将来は極度に不確実である、ということを前提に、私たちのビジネスも人生も、組み立てていかなければならないのです。

(ビジネス頭を創る7つのフレームワーク力:勝間和代 著より引用)
仕事は、無論一人で完結するものではありません。
顧客、社員、関わる皆を導いていくことができて初めて、仕事となりえます。
だから、(この書の言葉を借りれば)【極度に不確実である】今後将来において、
目先の仕事を片付けるためのスキルをいくら学んでも、それでは役に立たない。
いま起こっている現象事実をどの位相で捉え、どこに可能性を見出すか。
そして自ら掴んだ答えを皆に示し、導いていけるかが問われているのだと思います。
言い換えれば、まさに今、構造的な思考が求められている、ということではないでしょうか。
考えてみれば、昨今のビジネス書ブームは、心底にある「これから、社会はどうなっていくのだろう?」という精神的欲求の高まりを裏付ける、一つの事例ではないかと思います。
byひろ

 

コメント

内識機能の疑問

ところで、
>上記は本能的な欠乏についての話である。本能的な欠乏は、それを察知する内識機能はこれまでの進化の過程で獲得しているため、問題はない。

  • 知らぬが仏
  • 2009年3月14日 23:23

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