2009年09月29日
共同体企業、社会事業を模索するアミタの実践例
これからの企業の方向性を考える上で必要な認識としては、以下の二つがあります。
自主管理への招待(2)より
自己の現実が深く関わっているこの社会は、それ自身の生命と構造を持っている。社会は、その時代の人々の欲求に応え、かつ人々の営為によって担われる〈生産様式〉を土台として、その様式に応じた生産と政治の諸関係を構成し、再び人々の存在と意識をそれらに適応させる。つまり、人問と社会との夫々の存立の基盤を成し、夫々の存在の中核と成っているのは、生産であり労働である。従って、私たちの認識にとって重要なのは、あってもなくても良いような「思想」ではなく、人間と社会の基底的な現実を形成している生産様式の認識であり、あるいは、社会への一方通行で空まわりの「自己主張」ではなく、人々の根底的な欲求が交わり合う生産関係の認識である。
潮流5:失われた40年より
この世には、医療だけではなく、農業や介護や新資源・エネルギー開発、あるいは「なんでや露店」のような社会活動etc、市場には乗り難い(ペイしない)が、社会的に絶対必要な仕事(or活動)がいくらでもある。(中略)
物的需要(の喚起)から類的供給(の喚起)へと舵を切っておれば、日本経済はバブルにも経済危機にも陥らず、次代をリードする国家市場を実現し、世界にそのモデルを提示し得た筈である。
今回は、このような認識に基づいて活動をしている企業、株式会社アミタをご紹介したいと思います。
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まずは、株式会社アミタの社長である熊野英介さんが書いた本
思考するカンパニー―欲望の大量生産から利他的モデルへ:
の内容をご紹介。
du pope : NAKANO Hajime’s Blogより以下引用。
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ぼくがアミタという会社を初めて知ったのは、環境や社会貢献についての情報誌「オルタナ」の特集でだったと思う。
この会社は「持続可能経済研究所」という組織があったり、京都(京丹後市)に「森林ノ牧場」という森林の再生・再資源化の実験場を持っていたりと、廃棄物や環境といったキーワードだけでは括れない不思議な奥深さを感じる。
で、「思考するカンパニー」は、アミタの経営者である熊野氏が何を考え、アミタという会社を通じてどんな社会を実現していきたいのかを書いた本だ。
まず、本の題名にある「カンパニー」だけど、この本ではカンパニーは「仲間」という意味で使われている。立場や組織を超えて人が集まる「有機的なカンパニー」という言葉や、就職するのではなく「合流する」という表現など、契約ではなく使命・志ドリブンな会社をめざすという価値観の表われのようだ。
その「会社」についても、こんな記述がある。
「会社という言葉は福沢諭吉がつくったといわれている。江戸時代に人々が集まる場を意味した「会所」という言葉と、同じ志をもつ人々の集団を指す言葉「社中」、この二つを合わせて会社という言葉をつくった。これからは「社中」のほうへ、会社のメーンフレームをもっていく。そういう新しい企業のデザインが必要なのだ。」(105ページ)
アミタという会社は、工業社会の過度な発展が生み出した自然破壊や資源の濫用を防ぎ、循環型の社会システムを創出するために人の「利他的欲求」を活かすという。「信頼動機を科学する」という節では、多くの人が持っているが、常に発揮されると期待はできない利他的欲求を活用するモデルについて、こう説明する。
「利他的欲求の実践はこれまで思想的・宗教的な教条(ドグマ)のもとで行われてきたケースが多いが、これらの場合、利他的欲求の不確実さを否定して「人はつねに利他的欲求をもっていなくてはならない」として活動を進めていく。これは本来の人間の姿とは離れているため、その活動を社会に広めていくには限界があった。
事業家である私の発想は、あくまで合理的な形で、人間の本来の姿、本能に沿った形で利他的欲求に基づいた経済モデルをつくっていこうというものである。思想やモラルで人を動かすのには限界があるが、合理的な経済モデルは受け入れられれば、素早く社会に浸透していくはずだ。」(80ページ)
「一人ひとりの利他的行動は儚くても、大勢の人間が集まれば質的にも量的にも確実性が増す。さらに多くの人が参加して相乗効果が生まれれば、一人ひとりの利他的行動の時間も長くなるはずだ。
私が早急に進めたいと思っているのは、利他的行動を質的、量的にかつ継続的に把握していくこと。」(92ページ)
儚くて脆いリソースに基づくシステム構築の要諦としては、以下のような要素を挙げている。
「儚くて脆い利他的欲求が顕在化しても量的に管理するためには、価値観を提供し続けられる仕組みが必要になる。関係性の提供を持続するためには事業を継続させるプラットホームと──潜在的でありながら共有の──価値観を翻訳できるコミュニケーション技術が必要になる。それらが構築できれば、精神的満足はつねにベル曲線を描き、利他的欲求を持続的に管理できることになる。」(173ページ)
儲けの話は好きだが志の話に興味がない人は多いし、一方、志の話は夢中になってするが儲けの話を嫌う人も多い。
この本では、志と儲けにこんな橋をかけている。
「「儲かることだけをやっていればよいではないか」という話は多い。至極もっともではある。しかし、利益しか興味のない企業は案外続かないものだ。なぜだろう? 多分、儲かる仕事はすぐに陳腐化して市場の細分化が進み、資本が大きくなければ価格競争に負けてしまうからではないか。」(115ページ)
「利益に対する間違った偏見と企業活動に対する偏見が、真実を曇らせている。
しかし、どんな生命(いのち)も自分の生命のために一所懸命だからこそ、生態系の役に立つ存在となりうるのだ。遠慮して生きている生命など何一つないが、周りを破壊する生命もまたない。そこに気がつき、この大真理をどう事業として形づくっていくかだ。
事業とは営利事業ということではなくて価値をつくっていく行動を意味する。そして価値をつくる手法としては事業が最善の道なのだ。」(119ページ)
「おわりに」という章、熊野氏自身の精神の遍歴を語る部分で、
「利他の精神という気づきは、利己の追求の先にあった。今は自分の未来と対話したとき。未来の私が語りかける現在への要求は、利他と利己の区別がつかない要求がほとんどだ。」(191ページ)
というくだりには驚いた。こういうことが言える境地はすごい。
アミタのビジョン、そのための手段(事業)について一番わかりやすい説明が最後の方にある。
「もう一度、人間が破壊してきた循環を人間の手で、大いなる循環の再構築をする。それが、私たちの使命なのだ。環境破壊と資源枯渇を解決する手法として「資源リサイクル」という旗を掲げ、再循環をより明確化するために、アミタは資源とエネルギーとを製造する活動を加速している。そして、今、自然と人間の関係を修復していく事業が始まろうとしている。」(192ページ)
そしてそれは、「世の中に対してひたすら誠実な凡人が集まってはじめてなせるもの」だという。
(以上引用終わり。)
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さらに、アミタの事業内容についてはこちら⇒循環型社会モデルに取り組むアミタ②企業サイトからのメッセージ
このアミタの経営理念、事業に関して、生産活動(企業活動)が社会形成の土台となっていることを強く認識し、市場拡大という従来の価値観から脱却した自然資本、社会資本の持続可能性の実現によって社会貢献を実践している点に、可能性を感じました。
今後も、最初に挙げた認識に基づいて、新たな可能性を実現している企業を定期的にご紹介していきたいと思います。
- posted by staff at : 22:20 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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