2010年06月06日
「社員が楽しく働ける職場」づくり~サイバーエージェントの取り組み~
なぜ社員同士で協力できないのかに続いて、「社員が楽しく働ける職場」づくりに取り組んでいる企業を紹介します。すごいな!と思ったサイバーエージェントです。(『不機嫌な職場』講談社現代新書より)。
サイバーエージェントの事業は、インターネットメディア事業、インターネット広告代理事業、投資育成事業の三つだが、最初から軌道に乗ったわけではなく、1998年の設立から2004年まで赤字だった。2000年のITバブル崩壊では、その直前に東証マザーに上場した株価は低迷、人材が次々と流出した。(まさに逆境!)
こうした中で、本当に若い社員たちが魅力を感じて集まってくれる企業づくりへの転換が始まった。その中核的役割を担ってきたのが、2003年に始まったバージョンアップ委員会。これは毎週火曜日朝7時半から9時、役員や人事本部長・事業責任者を含め7名が参加する社内活性化のための委員会であり、その都度、現場との対話を繰り返しながら、社員が元気になる仕組みの検討、周知徹底の方法などが話し合われてきた。この委員会はいまも続いている。
自分たちが、自分たちの手でイキイキと働ける会社をつくろう。そのために知恵を持ち寄り、検証し、徹底的に現場と対話する。そうした会社の姿勢から、大きな変化が起こっていった。
以下、サイバーエージェント流の人づくり、組織が元気になる仕掛けについて、大きく四つに分けて紹介します。
応援、よろしく~
第一の仕掛け 自分たちの会社に自信を持ちたい
人が流出してしまうのは、自分たちの思いが共有されていないからだと考え、最初に手がけたのがビジョンの提起である。
「21世紀を代表する会社を創る」
抽象的だが大きなビジョンを掲げた。事業展開だけでなく、会社づくりそのものでも、21世紀の最先端を行く、そんな思いを共有することから始めた。
次に提起したのが「マキシムズ」という行動規範である。ベンチャースピリットをいつまでも持ち続けるために、この行動原理を掲げ、原点にいつでも帰れるように、豆辞典のような大きさの冊子にして全社員に配った。
さらに、経営的観点から、自分たちの戦い方、流儀を次のようなミッションステートメントとしてまとめた。
これは社員がともに目指すための基本ルールとして明文化したもので、社員から出てきたキーワードをみんなにわかりやすいことばで、直接的に表現している。
第二の仕掛け お互いをよく知る、自分を知ってもらう
役員をはじめ、多くの中核社員は自主的にブログを立ち上げている。マネジメントを行なう者は、考え方や感じ方、価値観を知ってもらう必要があると考えられているからだ。藤田晋社長の「渋谷ではたらく社長のアメブロ」も、トップが等身大の姿をみせることで、社員との信頼関係を築く重要なツールになっている。
同時に、採用においても絶大な効果をあげている。経営陣の人となりを知ることができる、感じることができることは、就職を考えている若者たちにとっては新鮮であり、素直に共感できる。
お互いを知る、自分を知ってもらう取り組みは、採用ホームページの「100words」「55works」という社員や仕事を紹介するページにも表れている。社員紹介ページには100人の社員の顔社員が、仕事紹介ページにも55人の社員の顔写真が掲載されている。そこに、一人一コメント掲載してあるだけだが、コメントや写真の表情から、本当にイキイキとした社員の姿が伝わってくる。「こんなすばらしい仲間が数多くいることを伝えたい」との思いが詰まっている。
もう一つ、お互いを知るための重要なツールがイントラネットで公開されている社内報である。
有志で作成しているこの「社内報Cyber」の目玉コーナーが、「私の履歴書」である。毎回、社員自らが自分の生い立ち、幼少期や学生時代の思い出、過去に夢中になってやってきたこと、会社に入ってやった仕事、それを通して感じたことなどを寄せている。お互いの育ってきた背景や会社にかける思いを知ることで、他部署の人のことも知っていく。そんなツールになっている。
この他にも、「わたしは、あなたの、おかげです。」「ONとOFF」「私の自慢」など、様々なコーナーがあり、互いに知り合う機会が設けられている。
このように組織全体が、互いに関心を持つ姿勢を持つことが、社員間の日常のコミュニケーションにも大きな影響を与えている。
第三の仕掛け 会社の成長と個人の成長を重ねる
事業と人材を育成するためのプログラムはCAJJプログラムと呼ばれる。サイバーエージェント(CA)、ジギョつく(事業をつくる:J)、ジンつく(人材をつくる:J)という意味である。
社内広募による新規事業プランコンテストが行なわれ、優秀者は事業責任者に抜擢される。立ち上げ後は、サッカーのJリーグになぞらえて、利益指標をクリアするごとにJ3からJ2、J1へと昇格していく。
事業づくりと人づくりがセットで考えられており、人づくりではさらに二つの取り組みが行なわれている。
一つは、優秀人材の早期選抜を目的とした「CAバンヅケ制度」である。自薦他薦による優秀人材を見つけ出して、可視化する仕組みで、最終的には経営陣や人事担当者からなる「ヨコヅナ審議委員会」で昇格者を決定する。できるだけ早くチャレンジの機会を与えると同時に、本当に周囲の人たちがついていきたいと認める人が昇格できる仕組みになっている。
自薦他薦に選ばれなくても、社内でチャレンジする「キャリチャレ(キャリアチャレンジ)」という仕組みがある。
社内異動を活性化させることに主眼が置かれ、上司にわからない形で異動を希望することができる。それも「すぐ」とか「半年以降」など時期が選べるのも特徴だ。半年ごとに実施され、毎回10名前後が異動しているが、その仕組みは「活躍している人材」だけが対象になる。活躍している人ほど、現状に満足せずチャレンジして欲しいという考え方からである。
このような仕組みは、すべて社内の流動性を高め、新たなチャレンジの機会を提供するための仕組みである。一人ひとりの成功や失敗をいろいろな人たちがシェアし合うことで、個人の成長と会社の成長を重ね合わせているのである。
第四の仕組み みんなで喜ぶ、みんなで認める
最後に大事にしているのは、成果を褒め、喜びを共有するという仕組みである。
社内認知の仕組みで重要なものが、社内用ポスターである。これまで紹介してきたような新しい取り組みがあれば、社内の告知用のポスターを作成し、しかも異なるデザインの大型ポスターを何枚も同じ壁面に張り出す。本気度を伝えるために、みんながあっと驚くポスターを掲示する。
こうしたポスターを制作する専門デザイナーが人事本部にいて、社員を元気にしたり、みんなで成果や喜びを伝え合う手段として、社内ポスターが重要な役割を果たしている。
もう一つ、独特の仕組みがある。「二駅ルール」というもので、オフィスがある最寄駅から二駅以内に住んでいる人には、月3万円の家賃補助が出る。会社の近くに住むことを奨励する仕組みで、実際に70%近くの人がこの制度を利用している。
何かあったらみんなで飲みに行こう、ちょっとしたことでもみんなで盛り上がろう、こうしたことが可能なようにできた仕組みで、実際、週末は部署内のメンバーや同期などが集まり、懇親会が開かれる。
みんなで盛り上がり、喜びを分かり合うことを日常に組み込むことが、組織を元気にする一つのコツなのだという。
社員を認めることは、何も高い評価をつけることや、それに応じて報酬を加算したり、昇格させることだけではない。みんなに注目されたり、ほめられる。一緒に喜びを分かち合える。その方がずっと自分という存在に自信が持てるようになり、前向きな気持ちが持てるようになる。
自然とみんなが協力し合う組織づくり
「21世紀を代表する会社を創る」。
それは形の決まったゴールに組織が一丸となって突き進めということではない。むしろ、一人ひとりが主役になって、当事者意識をもって前向きに会社を良くしていこう、もっと良い会社にしよう、そういう思いを共有し、みんなでつくろう。そうした思いを、集約したビジョンにほかならない。
如何でしたか?
経営赤字や人材が流出するという逆境を跳ね返して、自分たちで「どうする?」とイキイキ働いている姿が浮かびますね。もうこれって立派な共同体ですね。
お互いを知り合う「親和共認」
⇒会社づくりや戦い方の「課題共認」、ブログや社内ポスターも課題共認に大いに寄与している
⇒会社の成長と個人の成長を重ねる「役割・分担共認」
⇒みんなで喜び、みんなで認める「評価共認」
こんな会社、応援したいですね
- posted by okatti at : 23:45 | コメント (2件) | トラックバック (0)
コメント
○○通信って、いいネーミングですね。
一般の会社では社内広報という形で、一つの専門部署から社内全体へ通知する形が多いと思いますが、
そこここから自発的に○○通信が生まれてくる方が「一部の人が編集した記事でなく、生々しい現状が見えてきそう」で楽しそうです。
羊熊さん☆
コメント、ありがとうございます!
>そこここから自発的に○○通信が生まれてくる方が「一部の人が編集した記事でなく、生々しい現状が見えてきそう」で楽しそうです。
そうなんです~☆みんな、本当によ~く周りをみているなぁって、記事が多くって、どの部署も繋がっているって感じがもてます☆
また、コメントお待ちしていますね☆
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