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2011年10月28日

世代を超えて謙虚に学びあう共同体組織を実現・・・『加藤製作所』さん

今回は、高齢者雇用で、活力を上げている『加藤製作所』さんを紹介します。この企業を、取り上げた背景として、


厚生年金:支給開始68~70歳検討 「在職」減額緩和--厚労省厚生労働省は11日、60歳から65歳へと段階的に引き上げている厚生年金の支給開始年齢について、2030年度を想定している引き上げ完了時期を9年繰り上げて21年度とする案を社会保障審議会年金部会に示した。



また、支給開始年齢そのものを68~70歳へと遅らせる案も提示し、68歳とした場合の引き上げスケジュールを公表した。ただ、定年延長などの法整備は進んでおらず、早期実現は困難なのが現状だ。

今、このような社会問題が世間を賑せていることも関係しています。

ところで、年金制度の議論の以前に、高齢化社会の問題の本質とはなんでしょうか?日本に限らず、高齢化社会を迎えた先進国は財政赤字に苦しみ、高齢者の生活のよりどころである年金制度は破綻しています。その核心は『働きたいの働けない』という定年制の問題に集約されると言っても過言ではありません。 定年退職ってどうなの?

そして、定年制の背後には、企業は市場で自由競争により利益を上げることが何にも勝り、その足かせになる、生産効率の悪い高齢者は雇用しないという市場原理による価値判断があります。よって、この制度を運用していくと、企業の所有者である資本家だけが富を蓄え、他方雇用者は、定年になれば職を失い、その後の生活は年金という国家制度に頼るしかなくなるのです。

そして、その年金制度は、創設時から出費のほうが遥かに多いという騙しの構造でのため、破綻することは見えていたのです。 『強制加入の年金制度』は、ねずみ講よりたちが悪い

これをもっと大きく捉えると、定年と年金は資本家の利益のための制度であり、彼らにとって不都合な、定年後の高齢者の生活を守ることは、すべて国家(これは国民の払う税金でできている)に押し付けられてきた、ということになります。これが、先進国の高齢化社会では、国家財政が赤字になることの原因です。まさに資本家だけに都合の良い、市場原理を実現するための制度といえます。

このような背景から、年金に代表される社会問題に対して、それを作り出したのと同じ市場原理で行動していたのでは、問題は解決しないことが分かります。なぜならば、それは資本家によって大衆に押し付けられた社会問題を、また誰か他の大衆に押し付けることになるからです。つまり、自分の利益第一で、年金をよこせと主張するだけでは、その原資を支払う若い世代との対立を深め、ますます社会は閉塞していくことになるのです。

そして、今回紹介する『加藤製作所』さんは、社会を行き詰まらせた原因である定年制度を超えて、世代間で謙虚に学びあう新しい組織づくり向かわれています。それではその取り組みを見てみましょう。

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☆☆☆高齢者募集コピーは『土曜・日曜は、わしらのウイークデー』


『意欲ある人を求めます。男女問わず。ただし、年齢制限があり。60歳以上の方』 これが、2001年にはじまった、加藤製作所さんの高齢者採用の条件です。

この決断をした背景は、年々厳しさを増す価格競争に勝つ為に、設備投資した高額機器の稼働率を上げることが必要になるという経営状況がありました。そのために、いままで休日だった土日も営業を行い、競争力をつけるという戦略をとったのです。



そこで、賃金が安く、暇をもてあましている高齢者が、地元の人口の20%を占めることに注目して、高齢者採用に踏み切ったのです。採用した高齢者の最高年齢は79歳になります。これだけを見ると、市場原理だけで判断しているようにも見えますが、実は加藤社長の、深い思いは別のところにも注目しはじめていたのです。


☆☆☆世代を超えて謙虚に学びあう関係が出来た


稼働率を上げるために土日を高齢者で営業するという戦略も、2007年のリーマンショックを境に減少し、土日は休業するしかなくなりました。ところが、加藤製作所さんは土日限定で募集したシルバー社員さんを解雇するわけでなく、平日に出社してもらい現役の社員さんたちと一緒に働かせることにしたのです。

その時の基本的な役割は、コアは若い人、サポートは高齢者と明確にしています。この結果、これまで組織の前線に立って課題をこなしてきた人々が定年後に全く始めての業種に取り組み、しかも、自分より年下のものに指導されるという状況になります。



これがうまく行くのだろうか?という疑念はまったくの杞憂でした。むしろ、シルバー社員の方々は一所懸命学び、どんどん進化していきました。実際、製造ラインという一部所の業務を何年かで卒業し、新たな業務である出荷担当に異動して、更なる能力獲得を遂げた方もいらっしゃいます。

また、現役世代のほうからもっと一緒に働きたいという声すら出てきたのです。それは、シルバー社員の方々にどのように説明したらうまく作業をすることができるのか?を考えることで、現役社員の指導力が養われていき、そして、一生懸命働く高齢者を見て自分たちが頑張らないわけには行かないという意識が芽生えていくことがわかったからです。

このように世代を超えて、成長し合える関係が出来ていったのです。

☆☆☆『働けるだけでもありがたい』という高齢者の想いを現実のものに

「どうせ毎日が日曜日。働けるだけでもありがたい。」(加藤製作所で働く60歳代男性の言葉)

これは、シルバー社員の方の言葉ですが、素直に働ける(=誰かから期待される役割がある)ことのありがたさを感じておられます。このほかにも、『働くことで生きがいを感じる』『職場の若い人と話すのは楽しい。』という内容は、採用されたほとんどの高齢者に共通の想いです。そして、一緒に働くようになってぐんぐん元気が出てきたのです。

このように見ていくと、今まで常識とされてきた、定年後は年金で悠々自適な生活を送るという幸福像はまったくの間違いであることに気がつきます。すでに年金を受給されて、経済的にはほとんど問題の無い高齢者であるのもかかわらず、賃金に関係なく、『働けるだけでも』ありがたいと思っていらっしゃるのです。

まさに、『働きたいの働けないという』定年制が問題だったのです。

☆☆☆このような組織が実現した背景にある、意識潮流の大きな変化

かつて、豊かになりたいという想いから、お金や地位(=私権)が、働くことの目標だった時代がありました。この延長に、豊かになることだけを目標にした年金制度があります。それでもこの時代は、みんなが貧困だったために、地位やお金も活力源足りえましたが、同時に、人間本来の期待の応えることによって感謝される充足(=共認充足)が置き去りにされてきたのです。

しかし、先進国で貧困が消滅した’70年以降、この流れは大きく変わります。まず、この時代以降に生まれた若者は、もはやお金や地位より共認充足が勝り、お金よりもやりがいにその活力源をシフトさせています。他方、若い時代に、お金や地位を目標にしてきた定年退職後の高齢者も、いまさら私権にこだわる必要もないため、人間本来の欠乏である、共認充足に気がつき始めていたのです。

このように、異なる二つの世代が、共認充足の実現という共通の目標を持てる時代になっていたのです。

☆☆☆本当の充足を顕在化する、先人たちの規範意識を伝える社長の言葉

このような充足をより顕在化させるためには、言葉が必要です。それは会社の中で行われることなので、一般的には経営理念という言葉で表されています。ところが、これらの多くは、先の市場原理を基にしているので、経営の効率や、利益の増加のためにどのような戦略で経営にのむかという、非常に無機的で人間味に無いものになっています。

しかし、そのような経営理念では今の時代は乗り切れないというのが、時代変化を直感する経営者の潜在思念だと思います。では加藤製作所さんの経営理念はどうなものなのでしょうか?


経営理念(志-全社員と共有するもの)

「喜びから喜びを」 

人が幸せになるために、会社があります。幸せには自分自身を喜ばせる幸せと自分以外の人を喜ばせる幸せの2つがあります。私たちは仕事を通じ社員とその家族、協力会社、お客様そして多くの皆さんの喜びを私たちの喜びとする、そんな会社を創りましょう。

人づくりとモノづくりで、「喜びから喜びを」が私たちの経営理念であります。人が幸せになるために、会社があります。幸せには自分自身を喜ばせる幸せと、自分以外の人を喜ばせる幸せの2つがあります。私たちは仕事を通じ、社員とその家族、協力会社、お客様、そして多くの皆さんの喜びを私たちの喜びとする。そんな思いを、創業時より経営の志としております。

創業を明治21年に遡る当社が、激しく移り変わる時代の波を乗り越え今日まで発展し続けられた所以は、この志にあります。KATOは今後とも、この志を受け継ぎつつ、創意と行動力にあふれた技術先導型の多角化企業として、お客様の多彩なニーズにお応えしていく決意であります。どうかより一層のご愛顧の程よろしくお願い申し上げます。

のように、企業経営の指針というより、人としてどう生きるかという規範であり、それは志であり全社員と共有するものであるというい位置づけです。これは、鍛冶屋時代から去から引き継がれてきた先人たちの創り上げた共同体的規範をそのまま経営理念にしていることになります。

そして、このような規範は、簡単な文章で表しきれないくらい深い意味をもちます。そこで、加藤社長は、毎月一回欠かさず、この思いをさまざまな角度から槌音というブログで発信して、その定着を図っています。


「鎚音(つちおと)」 平成18年7月13日 加藤 景司

日頃より加藤製作所のホームページをご覧頂き、誠に有り難うございます。多くの皆様から、ご支援、ご協力を賜り、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。 

さて、平成18年7月より、題名を「鎚音(つちおと)」として毎月1回、社長メッセージと、加藤製作所の社員教育の場(駒場村塾)で学ぶ、社員の感想文を掲載する「駒村物語」をブログとしてお届けする事に致しました。多くの方に読んで頂いて、日頃、私達が、会社の理念の元にどのような活動をしているか、また、今年の6月で早66回めを迎えた、独自の社員教育が、どのように行われ、社員がどう育ってきているかを、少しでも感じ取って頂ければ、大変嬉しいです。

このような発信を繰り返し行うことで、社員と経営理念=共同体規範の共有を図っているのです。また、この規範の定着の為に、社員教育の場(駒場村塾)などの合宿研修も行っているのです。共同体的な企業経営には、規範の共有なども含めた共認形成がいかに大切かを感じ取られているのだとおもいます。

☆☆☆共同体再生の先駆事例に期待

2006年調査時点でも、男性の77%が定年後も組織で働くことを望み、内75%は定年前に働いていた企業を希望しているが、民間企業における定年制度の実施状況は 

定年制を定めている  :93.1

定年制を定めていない:6.9

という時代状況において、

先の意識潮流に乗り、伸び盛りでエネルギーの高い若者が仕事の中心部を担い、高齢者は、自らの豊富な経験や知識をもって彼らをサポートする。そうやって、共に支えあって生きていく組織を実現している加藤製作所は、現代における共同体再生の先駆事例だとおもいます。

またこれは、成員の一生はその集団内で全うされるという、かつての共同体を、現在の外圧の中に適応しながら再生するという試みでもあると思います。そして、これが実現すれば、年をとっても活き活き働くことが出来て、高齢者の医療問題も介護問題もほとんど解決すると思います。

このような可能性のある企業が、これからも、どんどん広まっていくことを期待しています

 

 

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