2012年01月02日
日本の育児を根底から変えたい~JPホールディングス~
JPホールディングさんは全国102か所(2012年4月にはさらに10か所追加される)の保育所を運営するほか、児童館、学童事業にも本格参入し、子育てのトータルサポートを提供する民間の最大手企業で、従来の保育所にはない民間だからこそできる徹底した利用者の目線で提供するサービスによって、日本の保育のあり方や運営を根底から変えてきたパイオニアです。近年は、農学部出身の食育専門指導員による食育活動や、臨床心理学・教育学の専門家チームによる発達障害児の支援、年間200コマの保育士研修など、ほかにはない取り組みが注目を集めています。今回はこのJPホールディングさんを紹介します。
当ブログっを読んでいただいている皆さんの周りに、保育事業で働かれている方はいらっしゃいますか?私はこれまで何人かの保育士さんに出会ったことがあるのですが、その多くは「子供はかわいいけれど、事業の体制が・・・」「親御さんとの関係が大変で・・・」「モンスターペアレンツが・・・」etc.子供の為⇒社会の為にとやりがいを求めていたはずなのに・・・なんてことをよく聞きますし、休職や転職される方も多い業界のようです。そんな中で先にも述べたようにJPホールディンスさんでは、次々と規模を拡大されています。この背景にはきっと何かあるはずです。そこで、業界に働く外圧、経営者(山口 洋氏)の想いやJPホールディングさんの取り組みに迫ってみます。
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保育事業にかかる外圧
一言で言ってしまえば「新規参入者排除 🙁 」という裏の論理が働いているようです。
<参考>より
もともと保育園は公立と社会福祉法人立・・・社会福祉法人と言っても、その実態はプライベートセクターで“社会の公器”としての自覚に欠けるところが多いのです。多くは地元の名士が運営しており、代々世襲するのが通例です。地域での競争が存在しない独占事業なので、サービス向上を図るという発想はありません。
行政から運営費が出るので、行政から言われた通りにやってさえいれば、何世代にもわたって無税で給料が入り続ける構造になっているんです。固定資産税もなしですよ。これぞまさに既得権益ですよね。“おいしい収益マシーン”ですから、決して手放したくはないし何も変えたくはないんです。
(中略)
これが実態であるとするならば、既存の保育園が既得権益を守るために新参者を排除しようとするのもうなずける。具体的にはどのようにして排除に動くのだろうか?
「新規参入した企業が、子どもや保護者の目線に立ったサービスを提供しようとするとしましょう。もしそんなものができたら、既存の保育園は自分たちが世間から批判されることになるので、それが嫌で行政に対してクレームを付けるのです。社会福祉法人は行政への発言力の強い地元の名士が運営しているケースが多いので、行政としても彼らからの圧力は無視しにくいという事情があるのです」
こうした自己保身のための圧力や妨害によって、利用者目線に立ったサービスを志す者は、保育業界への参入を阻止され、あるいは撤退を余儀なくされる。そして、待機児童問題はますます深刻化することとなるのだ。
こんな状況では、そこで働く人にとってはなかなかやりがいを見出すことなどできませんよね。また、厳しい経済環境下、小さな子どもを抱えながらも夫婦共稼ぎをせざるを得ない家庭や、離婚率の上昇でシングルマザーとなった女性の数は年々増えています。ところが、子どもを預かってくれる保育園を見つけるのは、絶対数が不足しているため非常に難しい。また、やっと見つけても、基本的に夕方になれば仕事の途中でも子どもを迎えに行かないといけないなど、利用者の置かれた就業環境にそぐわなくなっているのが保育園の現実です。
経営者:山口 洋氏の想い①
山口 洋氏
山口洋氏へのインタビューで印象に残るのは「特別のことをやっているわけでなく、お客様や子供たちにとって何が求められているのかを考えそのまま実践しているだけ 😀 」という言葉です。
<参考>より
「もちろん立派な経営をされている保育園もありますが、一般的な傾向として言えば『夜は仕事をしたくないので夕方までしか預からないし、日曜や祝日は仕事をしたくないので子どもを預からない』というのが業界の体質です。だから、保護者会や運動会を平気で平日の昼間にやるんですよ。働いている人を支援するために存在するのが保育園なのに、働いている人の事情をまったく考慮せず、自分たちの都合だけで運営しているところが多いんです。
延長保育はせいぜい19時までで、それも内心快く思っていないので、そういう気持ちが子どもや保護者に対する態度となって露骨に表われるんです。まして休日保育をやっているところなんてほとんどありません。許せないですよ」
「しかも、保育園側のそうした運営姿勢が多くの子どもや保護者を苦しめていることに関して、自分たちの責任だとは認めず、逆に保護者に責任を転嫁して面と向かって彼らを非難するのですから話になりません」
「保育園の経営者たちには、厳しい立場にある人たちや、夜遅くまでの延長保育や休日開園など保育園のサービス内容改善を希望する人たちに対して、『何でそんな仕事をしているのか? 子どものためを思うならば、月~金曜の9~17時の仕事に就け』と平気で言い放つ人が多いのです。何かというと『子どものため』と言いますが、自分たちのためでしかないのです 🙁 」
こんな想いから、「徹底した利用者の目線で提供するサービス」というのを柱に保育事業経営を行っておられます 😀
経営者:山口 洋氏の想い②
保育事業を開始して全てが順風満帆にいったわけではないようです。
山口洋氏は43歳にして大学院に入学して、児童学の博士課程(前期)まで修了されています。この原動力となったのは・・・
従業員の陰口に奮起より
2000年の法改正で、社会福祉法人などにしか認められなかった保育園の運営が株式会社にもできるようになって。助成金をいただければ事業として成り立つと分かったんですね。それと、日曜祝日とかをやらない理由が単に保育園側の都合だったというのが分かって。これを変えたいという思いがすごくわいてきた。
それで方向転換※したんですけど、事業が大きくなるにつれて、なかなか言うことを聞いてくれない保育士さんが出てきた。それまで勤めていたところと違うのが不満なんですね。「社長は保育のことを何も知らない」と陰で言うわけです。
(※元々は他の業種:ワゴンサービスをメインにしていた)
保護者のふりをして役所にクレームを言いに行って「こんなとこに保育さしたらいかん」とか。つらかったですね。自分とこの従業員に後ろから竹やりで刺されているんですから。
変わったのが保育士の国家試験の勉強を始めてからですよ。この事業、もし本気で続けるんだったら、私自身もっと勉強しないといかんと思って。大学院に入って二年間で百冊の専門書読んで、論文書いて。従業員の誰にも負けないくらいの専門知識が身に付きましたから。離職率も減ったし、「社長は自分たちのことよく考えている」という雰囲気になって黒字転換した。
JPホールディングスの取組①~園児自身が育てた野菜を給食に~
JPホールディングスさんでは2009年から食育専門指導員を招聘して、保育園の園庭や近隣農地で野菜などの種まきから栽培・収穫・調理までの計画立案を行う農業食育プロジェクトを行っています。園児が指導員と一体となって畑仕事をし、それを給食で食べます。
園児も畑仕事を手伝います。給食を含め、園内で使用する水にもこだわり、高純度の軟水(ハワイアン・ウォーター)だけを使っているそうです。
<参考>より
「調理に関しては管理栄養士たちがいくつかのチームを作っていて、地産地消を原則にして、和洋中などさまざまなメニューをチーム単位の回り持ちで作っていくようにしています。『今度はどんなおいしい料理で子どもたちを喜ばせてあげようか』と、みんなで味覚を鍛えながら調理の技術やセンスを磨いて、一生懸命、新しいメニューを作り出すんです」
学校や保育園がモンスターペアレントを育てている
昨今大きな話題になっているモンスターペアレントの問題は発生していないのでしょうか?その問いに対して、山口洋氏はこんなことをおっしゃっています。
<参考>より
「弊社では全国の保育園で5700人ほど、児童館や学童クラブまで入れると8000人ほどのお子さんをお預かりしています。しかし、社長である私が出動しなければいけないようなケースは年間1件あるかどうかという程度で、いわゆるモンスターペアレントの問題はほとんど生じていません」
「モンスターペアレントは、学校や保育園が育てるものなのです。企業を悩ませるいわゆるクレーマーも同じことです。企業がクレーマーを育てているのです。最初からモンスターペアレントやクレーマーだったという人は、ごくごく少数です。それなのにモンスターペアレントやクレーマーが育っていくのは、学校や保育園、あるいは企業がいい加減に対応し、平気でうそを言い、ごまかしてばかりいるからなんです」
「毅然と対応することが大切だと考えています。もし被害を与えたのなら、逃げずに、きちんと対応する。しかし、だからといって、お客さんの奴隷になってはいけない。」
社会問題となると、国が悪い、政治が悪いとなりがちですが、他のせいにするのでなく、自社でどうするのかを当事者として考えるからこそ、組織として強くあり続けられるんですね 😀
JPホールディングスの取組②~さまざまな研修制度~
山口洋氏の言葉に
「今は職員が楽しく働ける職場というのを経営理念にしています。保育士さんが楽しければ子供は絶対に楽しいんですよ。お母さん方に対しても優しい気持ちになれますから。」
というのがあります。この経営者の想いが、社員へと伝わり、規模拡大のための土壌が育っているように感じます。また、社員を育てるためにさまざまな研修制度を自社オリジナルで創設し、そこでのやり取りがたくさんの社員の紐帯となっているようです。
社員さんの声より
当社の研修制度はものすごく充実していて本当に勉強になりますよ。私が一番印象に残っているのはバースコーディネートの研修。バースコーディネートっていうのは、赤ちゃんができてから実際に生まれてくるまで両親をサポートする職業なんですが、その研修では、赤ちゃんがお母さんのおなかの中でどういう状態なのか、どうしてあげると良いのかなどを、ものすごく細かに教えてくれるんです。私たちは保育士の学校などで専門の知識を学んできていますが、実際にはもっともっと学び続けなくてはいけません。研修に出ると自分はまだまだ知らないことがいっぱいあることに気づかされます。ある意味でそれが一番大事な勉強かもしれませんね。
JPホールディングスさんでは、「お客さんのために」・・・これをやり続けた結果が、周りからの信頼と社員のやりがいとを創出されています。 😮
長文になってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございます 😀
- posted by kura at : 14:31 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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