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2012年05月17日

情報通信産業に期待されることは?~前編~

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画像はこちらからお借りしました。
これまで、「建設産業・都市の未来はどうなる?」(前編)(後編)、「環境産業の可能性はどこにあるのか?」(前編)(後編)と続けてきた産業シリーズ、今回は第3弾の「情報通信産業に期待されることは?」です 🙂
まず、現在の情報通信産業の状況をざっと抑えてみましょう 🙄

120512%E5%B2%A9%E4%BA%95%EF%BC%A7%E6%83%85%E5%A0%B1%E9%80%9A%E4%BF%A1%E7%99%BD%E6%9B%B8.png平成21年の情報通信産業の市場規模(名目国内生産額)は87.7兆円で全産業の10.0%を占めており、情報通信産業は、全産業の中で最大規模の産業となっています。また、雇用者数は、413.1万人(対前年比0.7%増)、全産業に占める割合は7.3%で、小売業(734万人)に次いで雇用者数が多く、卸売業(439万)や建設業(418万)と肩を並べています。産業全体への付加価値誘発額は全ての産業分野の中で最大の115.9兆円、雇用誘発数は711.5万人でこれも小売業や建設業に比肩する規模です。情報通信産業は今や日本の経済を支える産業分野だと言えます。
しかし、ここまで順調に成長してきた情報通信産業ですが、この分野も他の産業同様に市場拡大の限界を迎えつつあり、過当競争に陥るなど成長にかげりも見えてきています。今後、情報通信産業はどの方向に進んでいくことが期待されているのでしょうか
(前編)では、情報通信産業発展の歴史を振り返り、現状とその課題を整理します。そして次回の(後編)で情報通信産業の問題構造を解明し、その進むべき方向を明らかにします。興味を持たれた方は、応援もお願いします

参考
平成23年版情報通信白書のポイント
「平成23年版情報通信白書」の概要

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■情報通信産業発展の歴史
1.大型コンピュータの時代(1950年代~1970年代)
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この画像はこちらからお借りしました。
コンピュータが導入された当初は、メーカーは「箱」(+基本ソフト=OS) だけを売るのが一般的で、ソフト開発は内作が中心でした。1970年代になるとオンライン化の進展に伴って、専業企業が躍進し始めます。企業数や売上高も増え73年に特定サービス産業実態調査に「情報サービス業」が追加されます。当時の情報サービス業界の規模は858社,1672億円,47675人でした。
 最初は単なる計算機として開発されたコンピュータが企業に導入され拡大普及して行ったのは1970年代からです。この時代は、豊かさが実現し市場が縮小過程に入った時代でした。企業は生き残りをかけて、経営を効率化するためにコンピュータを導入しました。大型コンピュータの時代は、企業の全社的なシステムをコンピュータ化していく時代でした。
コラム:IBMのコンピュータ販売戦略
当時は世界のコンピュータ市場を席巻したIBMですがコンピュータ市場を独占するためにかなり汚い手も使ってきたそうです。
コンピュータを売り込むためにIBMがまず最初に行ったのは、これからはコンピュータがないと仕事ができないと不安心をあおる噂を流すことでした。その上で業界1位の企業に行き3ヶ月無料で貸しますといってコンピュータを置いてきてしまう。そして、マスコミに「A社はIBMのコンピュータ導入」と新聞に載せてもらい業界2位以下の企業が恐怖にかられてIBMのコンピュータを導入するという作戦をとったそうです。
 IBMの日本上陸を受けて、日本のコンピュータ産業は大打撃を受け、当時の首相だった田中角栄は日本メーカーに10年分まとめて費用を払いIBMに対抗させ、新日鉄や神戸製鋼などに日本の製品を使うよう指示を出したそうです。これに怒ったIBMは日立や富士通に罠を仕掛けるなど、血みどろの戦いが繰り広げられます。
2.パーソナルコンピュータの時代(1980年代)
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画像はこちらからお借りしました。
 パソコンの低価格化・高性能化が進んだことが、情報システムを大きく変え、1970年代後半ごろからオフィスの生産性向上を目指すオフィスオートメーションが盛んになりOAブームがおこります。それまで、コンピュータは専門家が扱う機械でしたが、普通の事務職員がコンピュータを使うようになります。1970年代の会社全体のシステムをコンピュータ化していた段階から、さらに生き残り競争が激化して、全職員のオフィスワークをコンピュータ化することで効率化を図る必要が出て来たのです。
OA化の進展に伴い、80年代に情報サービス産業は急拡大し年平均24%の拡大を実現します。85年通信開放、VANへの進化で企業内から業界内・異業種をつなぐオンラインが実現し、メーカー系ソフト子会社や企業の情報システム部からスピンアウトした独立系ソフトウェア企業の創業が相次ぎます。
また、パソコンの小型化、低価格化が進む中で、ファミコンなどの子供向けゲーム機器や、パソコンゲームなどのソフト開発も盛んになっていきます。
3.ネットワークの時代(1990年代~)
1990年代に入ると、バブルの崩壊の影響を受けて、情報サービス産業は淘汰の時代を迎え産業としての拡大に大きなブレーキがかかります。しかしその後、インターネットの商用プロバイダーによる接続サービスの開始、1995年のWindows95の登場によってインターネットが一般の人々に爆発的に普及します。これに加え、1990年代後半には携帯電話によるインターネットの接続が可能になり、大衆まで一気に普及して行きます。ネット社会がはじまり、情報通信産業は再活性化の時代を迎えます。
 それまでは、仕事や一部のマニアだけが使っていたネットワークに大衆、消費者が参入することで様々な新たなサービスが登場し普及して行きます。Yahoo・Googleなどのポータルサイトや検索サイト、Amazon、楽天などのネットショップ、SNS・ブログ・Twitter・YouTubeといったソーシャルメディア、オンラインゲームなどが代表的です。
 1990年代のネットワーク時代以降は、情報通信産業の役割が大きく変わります。それまでは企業を中心にして業務の効率化のために利用されてきました。それが、ネットワーク時代に入ると利用者が一般大衆にまで拡大します。人々は情報通信システムを娯楽、コミュニケーション、情報探索、情報発信などのツールとして用い始めます。
この大きな変化は、バブルの崩壊後、’90年代を通じて私権の衰弱と社会の閉塞感が強まっていき、世界バブルが’02年に崩壊し私権拡大の終息が大多数の状況認識となって共認された、という人々の意識潮流の変化をストレートに反映しています。’02年はネットバブルの旗手であったライブドアの堀江社長が逮捕され、私権獲得の道具としての情報通信産業の限界が明らかになった年でもあります。
私権獲得では充足出来ない、あるいは可能性を感じられなくなった人々は、私権獲得以外の目的で情報通信システムを活用するようになっていきます。目標を失った不安を紛らす逃避先としてゲームに埋没したり、新たな可能性を求めて人々の意識を探索したり、私権に変わる価値として人とのつながり(共認充足)を得るために情報通信システムを活用するようになってきたのです。
情報通信産業は、‘70年代に私権獲得を目的として企業の経営効率化のために導入され発展してきました。そして日本の経済を牽引する中心産業になるまでに発展して行きました。しかし今や、経済的な役割だけではなく、私権統合社会に変わる新しい共認統合の社会を実現する、社会基盤としての役割も期待されている、重要な業界なのです。
参考
情報システムの歴史的変遷著者:佐藤 敬 
情報産業の歴史 
情報産業・職業論5 
パーソナルコンピュータ
テキスト5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全

■情報通信の発達は、何をもたらしたのか
○情報探索の恒常化・高速化、情報中毒による追求力の低下
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画像はこちらからお借りしました。
情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口

同類探索のさらに源泉は、共認充足にある。従って、共認収束⇒同類探索、つまり期応充足を母体とする探索なので、おおむね充足が主・探索が従で、必ずしも一直線に先鋭な探索に向かうわけではない。むしろ、仲間やテレビ・ネットの充足時間あるいは休息時間の中で、たまたま気になる情報があれば吸収するという具合であり、そうであるが故に、逆に膨大な情報に晒され続けることになります。
市場社会では、私権拡大の可能性が開かれるとともに、生活の回転スピードが高速化したことによって、同類探索が加速され、情報量が数十倍に増大する。それによって、人類は常に過剰な情報刺激に晒されることになったとも言える。
’70年以降は、私権拡大の可能性は終息したが、代わって共認収束の可能性が開かれたことによって、本格的な同類探索≒共認探索が始まり、さらに情報量が増大する。
さらに’90年以降は、経済危機や見通し不安など、危機意識発の同類探索が加わり、ネットの登場も相まって、さらに情報量が増大している。
いまや人々は、農家時代の数十倍の情報に晒されており、その情報の洪水の中で、情報を収集するだけでいっぱいになり、それを深く肉体化させる前頭葉の統合力や追求力が異常に低下している可能性が高い。云わば、情報中毒に陥っているとも云える。

○マスメディアに代わる社会共認形成の可能性、匿名による自我肥大=闇空間の拡がり
インターネットは、誰でも自由に発信出来るという、今までにないインフラです。新しい社会共認形成の場として画期的な可能性を秘めています。しかし一方で、ネット空間という無圧力の匿名空間が自我※を肥大させて、現実世界での不全からネットで他者否定と自己正当化の発信を繰り返す、犯罪的な行為も蔓延っています。
※自我とは、みんなの共認によって(自分には)与えられなかった評価を、他者否定と自己正当化によって、己に都合の良い幻想に収束することで自己充足を得る機能。
深層心理を少し考えてみる・・・ネット暴力

その状態が精神科のお医者さんが言われる内容とそっくりなのでびっくりしたものです。そのときの先生と私の結論は「コンピュータはなんでも言うことを聞くので、自分が偉いと錯覚し、言うことを聞かない友達に腹を立てる」と言うことでした。
つまり、コンピュータでは”master and slave”の関係になるのですが、日本語では「主人と奴隷」と言うことです。主人が命令したことは奴隷は文句も言わずに聞いてくれる、そんなコンピュータを扱っているうちに、「なぜ、あいつは俺の言うことを聞かないのだ!」という精神病になるということです。

情報通信技術の進展により、便利な世の中になった、新しい可能性が登場したことは一面の事実として間違いないのですが、「どう使いこなしていくのか?」、「どう社会的に役に立てていくか?」という本質的な課題については、人類は未だよく分かっていない段階なのだと思います。

■情報通信産業が直面している問題
○需要の見極めが迷走、価値の些細な差異化に終始する競争状態
情報通信産業のビジネス形態は多岐にわたりますが、例えばパソコン、携帯電話、スマートフォンなどの商品の場合、新たに登場した際は一気に市場拡大しますが、一定ほとんどの人の手に行き渡ってしまうと当然頭打ちになり、供給過剰で価格競争にさらされるのが常です。その後は機能のバージョンアップや付加価値で需要を狙うことになりますが、大局的に見れば複雑化しているだけであったり、必要のない機能を追加していたりと、些末な差異にしか見えません。そうであるがゆえに、新商品・新サービスのサイクルも高速化or短命化しています。
一般消費者からすれば、目新しい物を次々買い換えるより、いいもの、わかりやすく使いやすいものを長く使いたいという意識が強くなっているのではないでしょうか。
ソフトウェアや情報サービスなどの意識生産の分野では、人々の潜在的な期待を掴んでシステムやサービスとして提供していく必要がありますが、現状はその方向性が迷走しているように感じます。人々が必要としているとは言えないようなサービス、極論すれば「なくてもいいもの」「暇つぶしにしかならないもの」をムリヤリつくりだしているような様相さえあります。
上記のような競争状態の中で、購買意欲を煽る手法も過剰さを増しています。
例えば今注目されているモバイルソーシャルアプリの分野では、人間心理(依存性、中毒性、射幸性など)や人間関係を巧みに利用した手法がとられているようです。
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参考
最近ではモバイルソーシャルゲームの「コンプリートガチャ」と呼ばれる手法が問題となり、業界大手もこのサービスを廃止することを表明しています。ここまでくると、まともなビジネスモデルと言えるのかどうか微妙な感じです。
コンプリートガチャに嵌ってしまうカラクリ
○激化していく市場
情報通信産業は非常に競争が厳しい産業と言えるでしょう。ベンチャー企業が一気に名を上げてくることがよくありますが、その一方で多くの企業が生まれてはすぐに消えています。なぜそのようなことが起きるのでしょうか?
情報通信産業の特にソフトウェアにおいては意識生産の分野であるため、工場や大きな機械のような物に初期投資する必要がないので開業、成功することは資本力に依存しません。この分野に参入しようとすればパソコンが一台あれば参入することができ、あとは能力次第で大きな成功を得ることが可能です。
このような条件であれば新規参入者も多くなり、それに比例して新商品が次々発売されていくことになります。その中で生き残ろうと、さらなるスピードでどの企業も商品を次々発売していくことになり、最終的には企業自体も「どう社会の役に立つべきなのか?」、「今後どうしていけばいいのか?」ということを考えるヒマがなくなるほど加速していき、その流れに取り残された企業は次々と倒産していくことになります。これは相当の大きな外圧にさらされていると言えるでしょう。そのため非常に企業寿命が短い産業となっています。
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業歴10年未満の構成比は、金融・保険業が43.7%(前年47.6%)でトップ。次いで、情報通信業41.9%(同44.6%)、サービス業他32.9%(同33.1%)、小売業28.5%(同27.5%)、運輸業26.2%(同24.1%)と続き、製造業は14.2%(同15.9%)にとどまった。 参考

まとめ
情報通信技術の進展は、社会に大きなインパクトを与えていることは間違いありません。しかし、「どう使いこなしていくのか?」、「どう社会的に役に立てていくか?」という本質的な課題については、人類は未だよく分かっていない段階にある、このあたりの認識がカギになるとに思います。
そうであるがゆえに情報通信産業が迷走しているとも言えますし、逆に言えば、人々の意識潮流やその先の社会的期待を明らかにしていくことで、新たな意識生産としての突破口が見つかるのではないでしょうか

 

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