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2012年09月08日

『企業の進むべき道』13~大企業と中小企業の適応戦略の違い☆

 前回は、企業の根幹ともいうべき“共認”について考えてみましたが、今回は、その共認を企業がどのようにして受け継いでいったのか考えていきたいと思います
 
 
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画像はこちらからお借りしました
 
 近年、大企業を中心にした吸収合併・大リストラのニュースが飛び回っていますね。それに加え、社員、とりわけ幹部クラスの不祥事も日々報道されています。何か企業を取り巻く状況が変わってきているのはハッキリと感じられますね。今企業に求められている適応戦略とは何なのでしょうか?まずは、その歴史からそれぞれの適応戦略を見ていきましょう
 
  

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◆大企業と中小企業の差別化の歴史 
 
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 初めて中小企業と大企業が世間の話題に上がってきたのは明治初期 薩摩藩出身で「布衣の農相」として知られる前田正名が殖産興業を実施し、日本の産業を「我国固有ノ工業」と「器械的工業」と大きく二分したのが始まりです。器械的工業とは明治維新以降の移植産業であるのに対して、固有工業とは輸出商品となるべきもので、その振興と輸出奨励が推進されました。このとき既に、殖産興業によって固有工業(在来産業)は近代的施策の犠牲であるとする「在来産業問題」として取り上げられています。これが、日本には無かった産業を主軸に発展した大企業の誕生の瞬間です。もちろん、GHQによる財閥解体を逃れた明治以前からの財閥はそのまま大企業として残存していくことになります。
 
 次に違いが強調されたのが、産業資本主義の確立期の明治30年前後。機械制大工業に対する遅れた生産分野・経営形態として「小工業問題」=小工業の没落と再編成の問題として取り上げられました。このとき、日本の下請け問題の萌芽として、足利地方の機械業が注目を集めたそうです。
 
 3回目は、第一次世界大戦以降、大正期から昭和恐慌に至る日本経済の発展過程期で、それまでの「小工業問題」から「中小企業問題」へと進展しました。当時、遠州、川越、知多、福井地方の織物産地で、力織機化による中規模織布工場の下請的賃織化が現出し、満州事変後の下請盛行の前兆となりました。大正時代後期には、商業資本的工業生産介入、問屋を元方とする下請工業が進展し、1927年(昭和2年)の金融恐慌、1929年(昭和4年)の大恐慌を契機に、大工場元方の主導する日本下請工業の急速な発展を向かえることとなりました。
 
 4回目は、第二次世界大戦後、朝鮮動乱後の1952年(昭和27年)頃から、大企業と中小企業の「系列化」問題、日本経済の「二重構造」問題として取り上げられました。
 
 こうして大企業と中小企業の差別化がクローズアップされるようになり、資本主義社会下での企業の主従関係として国民に定着していきました。つまり、国家戦略の元で大きく市場原理へと傾倒していった結果、圧倒的な資本力に基づく力の差が生まれ、大企業と中小企業との間にも、歴然とした格差が出来上がったのです。このように、近代化と共に構築された企業の形成史を踏まえつつ、さらに具体的に大企業と中小企業の時代適応の違いは一体どこにあるのか見ていきましょう 8)
 
 
  
◆大企業と中小企業の違いの中身☆ 
 
企業が大事にする経営資源とは  
 
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 中小企業における経営資源とは、上の表から分かるように「人材」です。半分が人材で、3割が技術、資本は1割に満たないというのは、大企業と正反対。大企業における経営資源とは言うまでもなく「資本」です。大企業にとっての絶対命題は徹頭徹尾、利益確保第一。株主や銀行の意向に逆らう訳にはいかないため、大量に人を切り、時には工場ごと従業員を売り払ってでも、採算をあわせるような行動に出ています。結局のところ、序列上位の為の戦略に貫かれており、その様な企業方針に愛想をつかして、希望退職を募集すると予想以上に応募が殺到する、といった事まで起こり始めている状況です。(ex.2012年8月:NECの希望退職に2,400人弱の応募。グループ全体で5,000人、非正規雇用含めると10,000人のリストラ)
※その他事例:不景気.com
 
 
大企業と中小企業の大事にしているところ
 
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 大企業が突出している項目を見てみると、消費者の動向やニーズ、自社の技術、大学、競合他社、従業員のアイデア、産業構造や社会構造の変化といった消費をどう作っていくかという視点に収束しているようですね。しかし、この「最先端の物的供給を与えることで、新たな消費需要を生む」という大企業が行ってきたサイクルは、物的飽和状態となった70年代以降ではすでに時代遅れになった方法です。現在は破綻したこのサイクルをどう変換していくか、大企業が岐路に立たされている状況と見てとれるでしょう。
 一方、中小企業が突出している項目を見てみると、顧客の動向やニーズ、同業他社・異業種間の交流、素材・部品の動向、経営者のアイデアといった顧客の思いをどう実現していくかという視点に収束しているようですね。物的飽和から類的価値へ時代が移るにつれ、中小企業の「答えを一緒に導き出す」スタンスは次代の可能性を秘めているのではないでしょうか 🙄
 
 
 
大企業と中小企業の雇用状況
 
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 上の表を見ていただくと、大企業を中心に大量の雇用を抱える企業は、2002年以降正社員数を固定して、パート・アルバイト・派遣社員へ雇用転換を図ってきていることがわかります。定年で辞めた分だけ新社員を取り入れ、仕事の増減に応じて非正社員を起用する。ここ10年、大企業はこうした硬直体制をずっと続けてきた訳です。この硬直体制は中小企業にも同様に当てはまります。
 
「ネットカフェで寝泊まりし、派遣会社に電話して、仕事を探す。派遣会社は社会保険を払わないようにするため、14日/月しか働かせない。」
 
 こうした話をテレビで見たことがありますが、これではまとまった収入にもならず、家賃・国民年金・社会保険料も支払えない。そうした負のサイクルが子世代にも引き継がれる。働きたくても働けない、その日子どもを食べさせるのがやっと。実におかしい社会になってしまったと思いませんか 😥 😥
 
(この原因の一つには、小泉内閣が2000年に実施した労働者派遣事業法の改正があります。仕組みは簡単で、派遣先が派遣会社と契約、派遣会社が派遣会社と契約する形。派遣側が何重にも隠れ、野放し状態にされるヤクザ稼業というのが実態です。近年の原発ムラの派遣社員問題も元をたどればここに行き着きます。フランスに至っては派遣社員の方の賃金を高くして不安定さを担保しているくらいです。そのため、日本では1986年、IT関連など、専門性のある職業にだけ開放されるにとどまったのです。)
 
 
  
◆大企業と中小企業が進んでいく方向は? 
 
大企業と中小企業の賃金と労働時間の推移 
 
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 一方、2007年までの平均賃金と平均労働時間を見てみると、賃金は年々上昇、逆に労働時間は年々減少と、個人単価がどんどん上昇しているように見えます。バブル期以降停滞している初任給の増減や、吸収合併を続ける大企業をみていると、賃金が上昇し続けているのは不思議ですよね。実態は、企業拡大時に抱え込んだ沢山の正社員が、現在では幹部クラスとなり高給取りとなって“平均”賃金を引き上げているのです。加えて、将来不安からの消費の節約、1970年以降の実態市場の縮小を受け、仕事は減るばかり。その為、労働時間は減る一方となっている訳です。
 明らかにこのまま続けていたら崩壊が見えています。でもこの現象、大企業も中小企業もこれまでの社会期待にしがみつき、新たな社会期待を掴めていないことを表しているんではないでしょうか
 
 そんな中、過酷な価格競争を戦ってきた製造業を一つの事例に、これまで大企業の下請けとして仕事を得ていた中小企業が自ら社会期待を捉え、顧客の期待を掴み、自ら仕事を得ようとする流れが生まれています 😉
 

●辻谷工業
大企業の【奴隷】にだけはなりたくないと、自社製品を製作しなければと、父の働く自動車部品製造工場を離れ、奥さんの実家の工場に。そして現在、辻谷工業さんは、小さな町工場で、世界一と称される砲丸を作っています。  
世界で唯一完全に真ん中に重心がある砲丸と言われ、五輪3大会でメダルを独占☆
http://bbs.kyoudoutai.net/blog/2010/12/001024.html
http://www9.plala.or.jp/tuk-hougan/index.html

 
 
 新たな社会期待を素直に取り込み、自らの業態を変化させる これは本来どの企業も持っているモノ。市場社会の中で、自ら業種・業態というアイデンティティを築いてきた為、大企業を中心に変化する社会期待を捉える力が弱くなってしまった訳です 😥
 

中小企業が引き起こす業態革命と大企業の終焉
 
 
 つまり、市場の縮小→終焉に向かって、業態革命の必要が上昇していくことを意味しているのだが、考えてみれば、この「業態」や「業種」というものは、大企業が作り出したもの(大企業の縄張りそのもの)だと言える。実際、(近代)市場の拡大に伴って登場した企業は、その地位が一定安定するまで、銀行を通じて大量の資金が投入され、”大企業”となっていく。この時、シェアの寡占化を狙う大企業同士の主戦場が「業態」となり、「業種」として固定化されていく。
 
 ここで、業態革命の必要性が上昇していくということは、大企業であればあるほど、根本的な転換を迫られる必要が生じているということを意味している。

 
 
 
 限界が見えている資本主義社会、頻発する社会問題、政治家・学者・マスコミのウソ・誤魔化しを目の当たりし、近年、私たちは自ら新たな社会を創らなければと動き始めています 😀
 「大企業と中小企業の適応戦略の違い」と題して話してきましたが、大企業・中小企業に限らず、これからの企業はこれまでの画一的な産業業態を瓦解し、新たな社会期待に対して柔軟に適応できる力が求められています。その動き(=業態革命)が中小企業で見られ始めていることは、市場社会に深く根を張っている大企業よりも柔軟に社会期待を捉えることが出来ている証拠なのではないでしょうか 😉
 
  
 
 
◆まとめ 
 
 ここまで見てきたように、現在は企業規模に関わらず業績低迷、雇用条件の悪化、世代間格差、業界間格差の拡大といった形で、いよいよ市場原理では立ち行かない状況に追い込まれている事が解ります。
 
 そして、企業の構造を俯瞰すると、大企業における吸収合併や大規模リストラにも益々拍車が掛かってきています。すでに熾烈な生き残り競争の世の中になっている訳ですが、そもそも大企業がリストラをしなければ利益確保が困難な状態であるという事は、その下請け企業はとっくに仕事を打ち切られているのは明らかです。
  
 しかし、末端の中小企業になるほど、かかる外圧はもっと高くなります。退職金どころか、今月の給料すらいきなり払えなくなるような状態に突然追い込まれてしまいます。ただ、日本ではバブル崩壊以降、幾度と無くこのような下請け切りが行われてきました。だからこそ、中小企業は脱下請けを掲げ、あるいは持ち前の柔軟性と機動力を活かしながら、ジワジワと業態革命を進めているのです。
 
 従来の枠組みにとらわれず、顧客の期待に応える事を第一として成功している中小企業が、様々な業界で見られるようになってきました。
 
 

●貸し農園マイファーム
農園の土地を貸してしまうという発想☆
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=192478
http://myfarm.co.jp/

 
 

●沖縄教育出版
もともとは出版会社だが、会長が腎臓ガンをわずらったことをきっかけに、今のメインは、健康食品と事業部と化粧品事業部
http://bbs.kyoudoutai.net/blog/2011/02/001055.html
http://www.cha-genki.co.jp/item.html

 
 

●ハッピーおがわ
小川社長は明治元年創業の裕福な老舗呉服問屋の5代目。祖母が寝たきりになったのがきっかけで、介護服に関心を抱き、現在は、介護、ユニバーサル用品製造販売を行っている。
http://bbs.kyoudoutai.net/blog/2011/02/001047.html
http://www.happy-ogawa.com/

 
 

●天竜精機株式会社
自動機の開発、設計、製造組立、トータルに手がける【天竜精機株式会社】
なんと、会社見学のたびに社員が育つと、会社見学会を開催しています☆
http://bbs.kyoudoutai.net/blog/2011/12/001226.html

 
 

●ダイサン
昭和34年の創業以来、大手電池製造メーカーの製造、梱包部門として、一貫して業務を請け負ってきた会社。また、人材派遣業も手がける。しかし、リーマンショックや大手人材サービス会社でのコンプライアンス問題などにより人材雇用サービスの枠に限界を感じ、環境、教育ビジネスなど、新たな事業展開を打ち出そうとしている。
http://daisan-i.com/outline/

 
 

● 株式会社innovetion
外断熱関連事業や緑化関連事業で全国トップシェアを誇る東邦レオ株式会社を母体として生まれた、瓦屋根と同等価格の屋上庭園「プラスワンリビング」事業を主軸とする企業。全国の住宅施工会社と業務提携し、感動体験を提供。東邦レオの基本使命「生活環境の向上に貢献すること」を踏襲しつつ、新たな価値を社会に発信している。
http://innovation-co.com/company/

 
 
 
 ここで、改めてこれまでに追求してきた日本の企業風土を思い返してみましょう。
 
 
自然の摂理に適応しつづけてきた、世界ダントツの老舗大国
共認充足を第一とする集団形成の歴史
 
 
 これら、共認原理に基づく企業経営の可能性を色濃く残した集団にこそ、次代の可能性が拓かれているのです。企業基盤を初めから「人」そのものに置いてきた組織は、利益の変化を皆で共有し、仕事が減れば新たな需要を皆で開拓し、技術が足りなければ自分達で学んで補うしかありません。しかし、だからこそ人間関係の絆だけは、ずっと切れずに維持し続ける事ができるのです
 
 さらに言えば、物的飽和限界によって工業生産の時代はとっくに終焉を迎え、あらゆる業界に残された需要は、類的生産(同類間を繋ぐことで生み出される価値の生産)へとシフトしています。そして、閉塞感の高まりに連れて、共認需要は拡大する一方で有り、圧倒的に供給者不足の状態となっています。つまり、供給者さえ育てば、新たな市場が作られる可能性はいくらでもあるのです 😉
 
 資本に物を言わせて上意下達で物的生産に勤しんできた古い歴史の終焉と共に、人そのものが媒体となり、共認充足に最大価値を求める関係性によって作られる市場が、業態革命の先に見え始めてきています 8)
 
 ところで、社会の急速な転換期の最中である現在、業態革命が必要なのは中小企業に限った話なのでしょうか?
 
 そんな訳はありません。どんな規模の会社であろうと、社会構造の変化に適応出来なければ、淘汰されるのは当り前です。つまり、あらゆる企業の置かれている外圧(転換期)は、企業規模に関わらず一様に働いています。だからこそ、それらの構造的変化に適応すべく、新たな戦略を用いた建て直しに入っているのです。しかし、残念ながら大企業はそんなに簡単には変われません。既得権益層が、序列上位に居座り続けている限り。しかし、これは逆に言えば中小企業躍進の大チャンスとも言えますね!
 
  
<参考>
中小企業政策の歴史と課題(1)
 
中小企業研究の歴史と課題
 
雇用動向と中小企業で働く人材の現状

 

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