2012年10月01日
共認時代の金融機関の役割は?~中編~
お待たせしました 😮
業界分析シリーズ、前回の「共認時代の金融機関の役割は?~前編~」に続き中編をお届けします
今回は、世界経済危機で金融業界はどうなるのか?金融経済の問題の本質と突破口に迫ります
■世界経済危機で金融業界はどうなる
1.国債が原資、金融工学でバクチ経済化
金融業界の現状で見たように、実体経済が縮小していく中で現在の経済拡大は、国債の発行を原資にして無理やり需要を喚起することで実現されています。設備投資需要、消費需要がない中で国債発行で市場に流れ込んだ資金は余剰資金となり、その投資先は金融市場しかありません。
そして、その金融市場の実態は、株式、債権、為替、商品先物などの値上がり値下がりにお金をかけるバクチ経済となっています。
世界の実体経済の規模が5,000兆円であるのに対して、ディリバティブの対象となる金融資産額は6京円であり、バクチ経済は実体経済の12倍の規模にまで膨張しています。
ここまで、バクチ経済が膨らんだ一つの原因が1980年代に登場した金融工学です。金融工学は投資リスクを無くし金融市場が拡大し続けることを可能にしたと言われていました。その中心になっている概念は、1973年につくられたブラック・ショールズ方程式です。これは将来リスクと期待金利を現在化し、証券の額面を割り引く方法で、在庫管理の安全在庫を精緻にした概念です。その前提条件は次の二つです。
(1)有価証券の価格は、効率的市場では、ランダムウォークする
(2)将来価格は、正規分布に従って、分散する。
参考:経済講演会「国家破産」
2.国債問題、金融崩壊の危機がせまっている。
これまで、このバクチ経済で世界経済が拡大してこられたのは、世界中の政府が国債を発行し、余剰資金を拡大させてきたからでした
しかし、金融市場は実体経済の拡大という裏付けがない虚構の拡大で、いわゆるバブル経済ですから、どこかで投資家に不安が広がればバブルは簡単にはじけます。さらに、世界中の政府がいつまでも国債の発行額を拡大し続けることは不可能ですから、余剰資金の拡大には限界があり、このバブルは必然的にはじけることになります。
高度な金融工学を使って設計された金融商品は安全性が高いと宣伝され、大量に売りさばかれましたが、バブル崩壊で金融工学がまやかしであることが明らかになりました。そもそも、金融工学を駆使した商品は、そのままでは危なくて投資できないものを金融工学でごまかしたに過ぎなかったのです。サブプライムローンなどの危険な債権も複数組み合わせれば全部が一度に下落することはないだろうといういい加減な金融商品を、「有価証券の価格は、効率的市場では、ランダムウォークする。将来価格は、正規分布に従って、分散する」などと専門用語を使って誤魔化し売りさばいたのです。
そして、必然的な帰結としてバブルははじけました。1990年の日本のバブル崩壊、2008年のリーマンショックによる世界バブルの崩壊で金融機関は莫大な損失を発生させました。
これに対して世界の各国は国債をさらに発行し、金融機関の借金を国が穴埋めする事で何とかしのいできました。この結果、先進国の殆どが財政破綻の危機に直面しており、いつ世界経済が破綻してもおかしくない状況です。
ヨーロッパではギリシャの財政破綻を契機にして、ギリシャ国債を保有するEU各国の金融機関の破綻が懸念されており、米国は昨年に国債の発行額の上限を迎え、今年は上限額を引き上げるために財政削減を行わざるをえない状況にありながらその目処が立っておらず、日本は1000兆円の借金を抱えながら毎年40兆もの借金を増やし続けています。世界中の政府が金融機関の破綻を救済するために財政破綻一歩手前(実質的には破綻状況)という末期症状を呈しています。
特集~消費税増税は必要ない!
3.金融業界はどうなるか、連鎖倒産?国家に押しつけ
これまでは、金融市場のバブルが崩壊するたびに、金融機関を救済するために各国の中央銀行や政府が市場に資金を投入してきましたが、それをいつまでも続ける事は出来ません。
金融機関が大きな損失を出すと金融市場に流入する資金は減少します。すると、金融市場自体が縮小し金融商品が値下がりし、それがさらに金融機関の損失を増大させるという悪循環に陥ります。これを防止するために、中央銀行は市場に資金を供給する必要がありますが、中銀にとって、最も警戒すべきは、過剰供給による紙幣価値の暴落です。従って、投機市場が回り続けるのに必要な資金以下しか供給できなくなり、金融市場の総資金量はジリジリと減り続けます。
従って、金融商品の価格を維持するために、最終的には国家が買い手となって買い支えに回ることになり、その結果、国家財政はさらに大きな借金を抱えることになります。このままでは、国家財政の破綻と紙幣の大増刷の必然的な帰結として、国債の暴落は不可避となります。国債が暴落すれば紙幣は紙くずとなり、一般大衆もひどい窮乏状態に追い込まれることになります。最悪の場合には国家自体が崩壊し社会秩序も維持できなくなります。
「ユーロ発国家財政危機の行方」4 ギリシャ暴動とその他の国の状況から国家・市場の統合限界が見えてくる
実体経済への資金供給を減らし、国債への投資で国民の税金をかすめ取り、投機の失敗を税金で尻ぬぐいしてもらっているのが金融機関の実態であり、これだけ大きな犠牲を払ってまで、現在の金融システムを維持する必然性はもはやありません。市場拡大の時代には経済的な豊かさの実現をリードしてきた金融機関が、今や国家財政破綻や、国民生活窮乏の原因になってしまっているのです。なぜ、こんなことになってしまったのでしょうか。
参考:「金貸し勢力の弱点と自滅の構造」
■金貸しが支配する金融システム
今や崩壊の危機に瀕している金融システムですが、あまりにもいい加減というか、デタラメなところが多い。。。
なぜこのような金融システムがまかり通っているのか、金融危機の根本原因はどこにあるのか、もう少し踏み込んで分析します。
金貸しが支配する世界経済の行方
20世紀末の世界経済は、バブルと共にあった。
1985年~1990年の日本の土地・株式バブル、1990年~2001年のアメリカITバブル、2000年~のアメリカ住宅バブル、次々とバブルが生まれては消えて行き、その中で金融機関は熾烈な利益競争を繰り広げてきた。
このバブルを渡り歩きながら利益を拡大してきたのが、国際金融資本家=金貸しであった。彼らにそんな事が可能だったのも、マネー経済の仕組みを、ひいては近代市場そのものを作り上げてきたのが、金貸し自身だったからだ。現在の世界経済は、国際金融資本家=金貸しが作り上げ、支配しているのである。
1995年以降、急速に拡大し続けてきたマネー経済であったが、無限に拡大し続けることはできない。その限界が露呈したのが、2008年リーマンショック以降の世界経済危機であった。2008年以降、金貸したちは、生き残りをかけた潰し合いの最終決戦に突入している。この結果、先進各国の金融機関は、乗っ取り合戦を繰り返し、世界経済は混迷の度合いを深めている。
要するに、現在の金融システムは金貸し(国際金融資本家)とその手先(おこぼれに与る勢力)に都合のいいようにつくられてきた、これが現実世界を動かしている力の構造です。【前編】で、銀行が国家によって生かされている、特権的に利益供与されていることが明らかになりましたが、それも金貸しによるコントロールです。
しかし、そうした金貸し支配の構造も限界を露呈しています。
このまま金融システムの崩壊とともに社会の秩序は破壊されていくのか、それとも新しい経済システムを構築できるのか、今が分水嶺なのです。
■お金のからくり:「中央銀行制度」「信用創造=貸付膨張」
経済、金融システムにおいて、金貸し支配の中枢にあるのは、「お金のしくみ」そのものにあります。お金はどのように生み出されているのか、どのように増えているのでしょうか。
1.中央銀行制度
国に借金をさせて紙幣を発行する、お金を生み出す大元である中央銀行は国家機関ではなく民間企業。なかでもアメリカの中央銀行FRBは100%金貸しが出資する私企業。中央銀行の起源はイングランド銀行(1694年)ですが、その出自は、金貸し業者が手を組んで、戦争で多額の費用を必要とする国家に金を貸し、紙幣発行権を握ったところにあります。紙幣を刷って国家に貸付けるだけで金貸しは濡れ手に粟の莫大な利息を手に入れてきました。これは国家の借金が増えるほど金貸しが儲かるという打ち出の小槌。そして、金貸しにそそのかされて国家は借金を積み重ねてきました。その結果、今や世界中のどの国もこれ以上借金を増やすことができない限界に達していますが、国債危機の源流は中央銀行制度そのものであると言えます。
2.信用創造=貸付膨張
もうひとつが信用創造=貸付膨張で、民間銀行が誰かにお金を貸し付けるによって、お金の量を勝手に増やしています。信用創造の起源は、上述の金貸し業者で、金(Gold)の預かり証を実際の金(Gold)の量以上に水増しして発行して貸し付け、お金として流通させたことがはじまりです。膨張させた貸し付けから利子を得て莫大な資産を築き、中央銀行制度(紙幣発行権)を手に入れたというわけです。現在の民間銀行がやっていることもこれと同じですが、考えてみれば奇妙なことで、自分が持っていない金を貸すことで利益を得るというからくりで、信用創造というとなんだか正当なものに聞こえますが、要するにイカサマです。普通の人や会社がこれをやればもちろん犯罪(詐欺)です。
さらにこの信用創造=貸付膨張のイカサマを発展させたものがレバレッジや金融工学ですが、これらもお金をつくる仕組みのひとつであり、バクチ経済の元凶でもあります。
※参考:おカネのウソ リンク リンク
要するに、金貸し支配の中枢にある「お金のしくみ」そのものがダマシであり、不公正そのものです。言ってしまえば現在の銀行をはじめとする金融業界のほとんどは、金貸し支配のお先棒を担いでいるようなものです。
加えて大衆は、誰もがお金に興味関心がありながら、お金の仕組みを殆ど知りません。お金の仕組みは難しいものではなく、その歴史を辿ればすぐに理解できるのですが、教育ではそれを絶対に教えない、マスコミも決して伝えない、そうした共認支配が金貸し支配を支えているということです。こうした金貸し支配を打破することは可能なのでしょうか?
■「お金の仕組み」をどう変えるか?
金融システムの根本問題について見てきましたが、根底にあるのはダマシの構造(少数がその他大多数を騙して搾取する)です。こうした金貸し支配の構造を打破し、共認の時代においては「誰もが共認できる金融システム」への転換、秩序化が必要です。
1.中央銀行制度の廃止→国家紙幣の発行
国家紙幣発行の方法としては、国債の代わりに発行して財政投入する、国家紙幣で国債を買い取るなどが考えられますが、おそらく、金貸しとその手先がそう簡単に認めるはずもなく、国債暴落→経済破局を先に迎える可能性もあります。その場合、現紙幣の暴落→リセットして新紙幣の発行という手順になり、金貸し勢力と国家紙幣による経済運営を掲げる新勢力との闘いになるでしょう。
国家紙幣を発行する場合、課題となるのはマネーの量をどのようにコントロールするかという点ですが、当然ながら私的な利益を追求する金融機関に任せることはなく、社会共認に基づく公正な(仮称)通貨委員会のような組織が必要となります。重要なことはマネーの量を実体経済(生産・消費)にリンクさせ、節度あるシステムとすることです。
参考:国債暴落後の世界経済はどうなる?
参考:経済破局の下で秩序は維持できるのか?
参考:国家紙幣によるゼロ成長の経済運営
2.信用創造=貸付膨張の廃止→100%マネー
お金のシステムを実体経済にリンクさせるために必要なのが、信用創造=貸付膨張の廃止です。
そのそもが詐欺的であることは先に述べましたが、信用創造擁護派の反論として、銀行が預金と貸出を連鎖的に繰り返すことによるマネーサプライの増加が経済を成長させるという理屈があります(これこそが金貸しのダマシの理屈なのですが)。マネーサプライの増加が経済成長=市場拡大のスピードを上げるのは事実ですが、「経済成長=市場拡大絶対」という前提がもはや無効だとすれば、存在意義は全くなくなります。むしろリーマンショック以降の金融危機は、膨張したマネーの崩壊が実体経済と人々の生活を破壊するという、信用創造の反作用です。こうした不合理を改めるためにも信用創造=貸付膨張の規制は重要な政策です。
参考:「100%マネー」カジノ経済を封じ込める処方箋
参考:民間銀行から「信用創造・破壊権」を取り上げ中央銀行を国有化すればすべては解決する!
3.投機目的の金融取引の規制
もうひとつは、野放図な投機=バクチ経済をどうするかという問題です。現在では、為替取引の99%は貿易などの実需の伴わない「純粋なバクチ」と言われています。株取引も同様で企業の資金調達に活用される取引は1%程度、99%は純粋なバクチだそうです。これらを規制するには、法律で規制する方法もありますが、「金融取引税(トービン税など)」も有効だと思われます。その他にも「投機目的に使われる(銀行からヘッジファンド等への)貸し付けの規制」なども考えられます。
円の売買に課税を
投機を止めさせる方法はもちろんある。円の売買に1%課税すればよい。円の買い手に0・5%、売り手に0・5%の税金を課す。日本政府は私たちが食べ物や着るもの、その他生活必需品のすべてに5%の税金(消費税)を課しているのだから通貨売買に1%がかけられないはずはない。投機目的に行われる国際通貨取引への課税はトービン税と呼ばれ、これによって投機はなくせる。なぜなら投機家は1%に満たない利益を求めて売買しているからだ。もし円への投機が止まらなくても、これで政府の今の税収をはるかに上回る税金が徴収できる。90兆円の1%を30日で掛けて、その12カ月分は324兆円、日本の昨年の国税、地方税の合計76兆円を大きく上回る。
参考:一般取引税で社会が変わる!?
4.究極的には、利子の廃止
何にでも堂々と利子(しかも複利)がつけられるようになったのは歴史的にはわりと最近のことです。かつての人々は利子が生み出す不労所得、弱者いじめは不道徳であるという感覚を共通に持っていたわけです(旧約聖書でさえ、利子は貧者と同胞に対しては禁じられていた)。現代では何にでも利子がつくのは当たり前、大衆も預金利息を要求するし(とは言っても銀行の都合でほとんど利息はつきませんが)、資産運用で高利回りを求めますが、これも金貸し支配、共認支配そのものだと思います。
また利子は誰かの負債からつくりだされるわけで、必然的に市場拡大を要求します。これもバクチ経済を促す大きな要因です。
こうした利子システムを廃棄すれば、金貸し支配は完全に消滅します。問題はそれで社会的な金融システムが成立するかどうかですが、必要なところにお金を融通するという意味での金融機能は維持可能だと思われます。
参考:なぜ、預金には利子がつくのか?
参考:利子とは“市場の強制拡大装置”である
■金融業界に残された役割は?
今回の記事では、現在の金融システムの根本問題を切開し、共認時代の金融システムの骨格を提起しました。
この仮説に基づいて、金融業界はいったいどうなっていくのか? 今のままでは国債暴落→金融崩壊とともに金融機関も連鎖倒産していくことは十分に予想されます。
さらに追求してみたいのは、その先です。共認時代において金融機関の役割はどのようなものになるのか? 正常なマネーシステムを構築するとして、「預金」「決済」「貸し出し」などの機能は必要だと思われますが、具体的にはどのような姿になるのか? 次回の記事で考えていきます 😛
- posted by kazue.m at : 18:03 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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