2012年09月29日
『企業の進むべき道』14 企業の適正規模とは?
■はじめに
みなさん、こんにちは!
今日は、『企業の進むべき道』の14、そのうち「企業の適正規模を探る」シリーズの5回目の記事になります。(少し間があいてしまいました。スミマセン)
「企業の適正規模を探る」シリーズでは、これまで・・・
10 ~国内の企業規模と法制度~
11 ~国内企業に見られる特徴~
12 ~共認支配と共認形成☆*:・°
13 ~大企業と中小企業の適応戦略の違い☆
と、見てきました。
そのうえで、本稿ではシリーズの命題「企業の適正規模とは?」と銘打って、いったい何人くらいが企業にとって適応的な人数なのか探ってみます。
■企業の適正規模 考察その1・・・闘争集団の単位:スモールビジネスの視点より
企業コンサルタントの方が「スモールビジネス」という視点を紹介してくれています。以下、サイト「夜間飛行」の「組織の適正規模」から抜粋して引用します。
『組織の適正規模』
~前略~
ここでは、組織の適正規模という側面からスモールビジネスの利点を考えてみよう。
企業における組織の役割は、その構成メンバー全員が企業の「理念(Mission)と目的(Objective)」を理解し、”plan, do, see”のサイクルを通して、その目的を達成していくことにある。(詳しくは「理念(Mission)と目的(Objective)の重要性」、「爆弾と安全装置」、「ホームズとワトソンII」などを参照のこと)
リーダーとしての社長は、自社組織がうまく回っているかを常に見ていなければならない。その為には、組織メンバーとの意思疎通を図ることが大切であることは云うまでもない。さて、社長が一日にじっくりと話し合うことのできる相手社員は何人ぐらいだろうか。皆さんも各々考えてみて欲しい。一日に一体何人の部下とじっくり話すことができるだろうか?
じっくり話し合う時間を20分程度としても、三人で1時間である。業務時間を一日10時間として、忙しい業務時間中様々な仕事をこなしながらだから、一日せいぜい5、6人というところではないだろうか。一週間にすると、25から30人程度である。出張などが入れば勿論時間はもっと少なくなる。
~中略~
次に、社員同士の意思疎通という面から組織の適正規模を見てみよう。これも同じく業務時間を一日10時間として、忙しい業務時間中様々な仕事をこなしながらだから、一日せいぜい5、6人というところだ。一週間でやはり25から30人程度。逆に云うと、30人規模の組織であれば、社員同士のコミュニケーションも充分に取れる訳だ。チームワークがうまく機能すれば、「相転移と同期現象」で述べた、非線形的な現象(信じられないような力が発揮されたり、素晴らしい企画が生まれたりすること)も起こりやすい。
以上見てきたように、従業員30人規模のスモールビジネスは、組織の規模という面から見て、とても効率が良い筈だ。スモールビジネス・サポートセンターのトップページに小さな文字で、「ここでいうスモールビジネスとは、社長一人から全員で30人くらいまでの比較的小規模なビジネスを指します。」と書いてあるのはそういう意味が籠められている。勿論、業務内容によって、情報伝達以外の面から見た様々な適正規模があるから、あくまでも原則論として理解して欲しい。
~後略~
大量生産・大量消費の時代、すなわち物的生産が主役でかつ経済成長が著しい時代は「作れば売れる」時代でした。作り手の提案の多くが無条件に受け入れられる、作り手優位な状態です。そこでは消費者の意識を神経質に反映する必要はありません。上記のご意見は、そんな時代を過ぎて「意識生産」にシフトした現在の話です。
意識生産の時代に、新たなビジネスを立ち上げて継続するためには、変化の激しい大衆の意識潮流をおさえていく必要があります。そんな場面では、リーダー(社長)の認識を社員に浸透させることが重要。と同時に、社員同士の意思疎通もことさら重要になってくる、という指摘です。
確かにそうでしょう。そして、このような組織の適正規模は「30人」という一般解を導いています。単純な計算かもしれませんが、30人くらいなら全員と阿吽(あうん)の呼吸も成立しそうな気がします。
リーダーが日々の業務をこなしながら、成員全員の状況を対面で完全掌握できる人数が「30」。同じく社員同士が緊密な意思疎通を対面で行える人数が「30」。これは、緊密な対面共認を前提とした闘争集団について、一つの目安といえそうです。
■企業の適正規模 考察その2・・・認識可能な対面共認の限界:ダンバー数
集団の適正規模を推し量る有力な説に「ダンバー数」というものがあります。ダンバー数とは、イギリス人の人類学者ロビン・ダンバーが提唱した説で「脳の大きさはグループの規模と関係がある」という主張です。ダンバーがどんなことを言っているのかというと・・・
ダンバー博士は、世界各地の約20の狩猟採集民を調べ、その平均的な集団サイズをつきとめたそうです。集団サイズといっても、何を条件にするかで数は違ってきます。たとえば、普段一緒に移動して、狩りをしたり、寝泊りしたりする集団となると30~50人が平均だそうです。~中略~ これが狩猟採集民の最小ユニットです。博士が注目したのは、「氏族(クラン)」と呼ばれる単位で、これは普段の生活は別々だが、同じ狩り場や水場を利用したり、時折集まっては祭りや儀式を行う、いわゆる顔見知りのもの同士のネットワークの大きさです。その数は平均で153人だったそうで、脳のサイズから算出した数とほぼ一致しているということを証明したのです。
この数が当てはまるのは狩猟採集社会だけでなく、古代から現代社会まで、文明社会を構成する集団にもよく合致する数のようです。たとえば、紀元前100年頃のローマ軍の歩兵中隊は120~130人、近代的軍隊では最小の独立部隊となる中隊の人数は130~150人、学究研究で研究者同士が注目しあえる領域は100~200人の研究者がいる範囲で、研究者の数がそれを超すと、いくつかの領域に細分化されていくようです。
さらに、博士はフェイスブックなどソーシャル・ネットワーク・サービスについても調べたのですが、ほとんどの人は200人以下の平均的な数の友達しかおらず、200人以上いる人はほんの一握りだということ、友達が200人以上いる人でも、そのうち相当数は相手のことをほとんど、あるいはまったく知らないということでした。
このように私たちは、自分の脳の大きさだけに頼るのであれば、150~200人程度のネットワークが上限になっているようです。
(臥竜塾『集団規模』より引用)
ダンバーの主張は、現存する部族集団を追跡調査し、実態に基づいて結果を導いている点に説得力があります。
キーワードは「150人」。150人は、いわゆる「顔見知り」同士のコミュニケーションとそのネットワーク。原始共同体的な部族集団では「氏族」集団の人数がこれに該当するといいます。イメージ的には「最近どう?」と切り出して、事前に共有(記憶)された前提をもとに会話が続けられる間柄です。実際に思い浮かべてみても150~200人くらいが限界な気がします。認識可能な対面共認の限界人数が「150」ということでしょう。
・・・なかには「私は1000人くらいの対面共認を完全に認識できる」という人がいるかもしれません。しかし、共認は、相手がいてはじめて成立するもの。「1000人を認識できる私」が一人だけいても、集団全体のパフォーマンスはさほどに向上しないのです。
重要なのは集団の全員がもつ平均的な認識能力。「集団全体」もしくは「種」として、我々人間が認識することが出来る対面共認は押し並べて「150人」。これは一つの目安といえるでしょう。
■企業の適正規模 考察その3・・・超集団の観念統合とその課題
考察その1で示したスモールビジネスの「30人」は、緊密な対面共認を前提とした闘争集団の適正規模でした。考察2で示したダンバーの150人は、それを超えて対面共認が成立する限界人数。押し並べて人間の脳は、そのくらいで限界に達するらしい。・・・でも、それ以上の規模の会社はざらにあるし、大企業にいたっては数万人単位の集団もあります(もっと言えば、国家レベルの社会集団は数千万~数億単位)。これってどういうことなのでしょう?
その切り口として『脳科学と民俗学とオブジェクト指向~2chはなぜ成り立つのか~』という考察を見つけました。(右をクリックするとパワーポイントのオリジナルデータがダウンロードできます。)
この考察は、先述のダンバー数を調べていたときに偶然見つけたもの。2006年頃に電気通信大学 吉浦研究室にいらした中山心太さんが述べられていることです。
考察を読んで頂くと大変面白いとわかるはずです。断片的なキーワードで述べられているため、逆に意図がわかりやすい(コンピュータプログラムの用語を理解する必要はありましたが)。考察の主旨を要約すると、こんな↓↓↓↓↓感じでしょう。
◆人間の脳には以下の能力がある。
1)概念化する能力(オブジェクト指向)
2)その概念を階層的に捉える能力(クラスとインスタンス)
3)階層的な概念のうち上層の概念だけで意思を共有する能力(=インスタンスを捨象 できる能力)
◆概念化と階層化により、脳容量の消費を抑えた共認が可能になっている
・2chは、個人名や人格を下層情報(インスタンス)として捨象しているので成立している
・下層情報を考慮する必要があるSNSは、ダンバー数あたりで頭打ちしている
◆課題は、脳容量を圧迫しない「非匿名」のコミュニケーションを考えることである
人間の持つ観念能力=概念化する能力が、対面共認(max:150人)を超えた共認を成立させているということです。数千~数万人の大企業(国家も)はまさにこのやりかたで統合している事例。会社名や役職、社会的地位など階層化された上層の概念(観念)を共認することによって組織が統合されているといえるでしょう。
しかし、対面共認のない観念の共認は、つながりとしては弱いものです。30人のスモールビジネス=闘争集団の緊密さに比べたら、顔も知らない者同士の観念による共認は脆弱。悪い例えですが、顔も知らない間柄であるからこそ、数千人のリストラを決断出来るのだと思います。
じゃぁ、どうすればいいのか?150人を超えたら結束力のある会社運営はできないのか?観念の共認を補う上手いやり方はないのか?そのあたりを事例を交えて考えてみましょう。
■企業の適正規模・・・類グループの実績から仮説:充足の場=社内ネットが共認形成力を強める
◆類グループの成功事例・・・社内ネット存在
類グループは、現在、ホームページの上では所員数503名。150人を超える企業です。そこでは「社内ネット」が威力を発揮して、強い結束力を生み出しています。
社内ネットとは、以前、本ブログで紹介しているもの 。いわゆる、掲示板です。一見すると、ただの掲示板ですが、これを活性化させることが150人を超える組織で結束力を生み出すポイントになっています。
◆なにはともあれ「発信は◎」社内板活性化の最初のポイント、それは「発信は◎(二重丸)」という共認です。発信の少ない掲示板ではお話になりませんから、この共認は重要です。成功、失敗、何であっても「発信は◎」。この意識を浸透させ、維持することがポイントになります。
◆対面で発信期待
何はともあれ「発信は◎」。この意識を浸透させ維持するには、実は、対面共認が欠かせません。日常の業務ミーティングが終わったら議事録を発信する人を併せて決めます。また、業務に関らず、ランチタイムなどの会話で良い話が出たら「それ、社内板に投稿しなよ!」と後押しします。いずれも、面と向かって発信を期待するのがポイント。文字だけの掲示板と対面共認がラップする瞬間です。
◆女性・若手の充足発信→“充足の場”の形成
さらに、社内板を活性化させる誘発剤、それが「女性」と「「若手」からの発信です。
女性は、持ち前の充足力で、些細なことでも「これ、嬉しかった~」と気軽に発信してくれます。若手は、経験に邪魔されない素直な想いで「成功体験」や「素朴な疑問」を発信してくれます(→参考:私の会社の社内ネット活性化事例♪~充足が全てのベース~)。このような発信を積み重ね、対面でも「あの投稿よかったよね」などと評価することによって、文字だけの掲示板が対面の延長線上にある「充足の場」に変わっていきます。
◆150人を超える「非匿名」の社内板が活性化するわけは?
類グループの社内板は、実名で投稿されます。誰が発信した投稿かが一目でわかる非匿名の場。しかし、そうなるとSNSと同様にダンバーの150人=認識可能な限界領域があるはず。・・・ところが、実態として、多くの社員は150人を超えて、更に多くの人のことを認識しています。
定説を覆す結果に「なんでだろう?」と色々と考えてみたところ「脳の別の部分を使っているのではないか?」という直感を得ました。「人はなぜ愛するか・愛情」にヒントを得た仮説(概要)をお話します。
◆仮説:充足の記憶は脳容量を圧迫しない・・・扁桃体と共認充足
人間の脳、側頭葉の奥の方に「扁桃体」という神経細胞の集まりがあります。
ここは「情動的な出来事に関連付けられる記憶の形成と貯蔵における主要な役割を担う」と考えられている箇所。怒りや恐怖などの激情に起因する記憶だけでなく、快感=充足に起因する記憶の固定にも関与していると言われています。根源的には、母親と赤ん坊の間で形成されるスキンシップを「充足」という感情と結びつけるのがココらしい。
翻って、社内板での認識は、新聞などの一方通行の観念情報よりも大きな情動を伴って得られます。その一つが、「充足」です。正確に言うと人と人のやり取りが生み出す共認充足。同じ会社の仲間として相手を想って同化する(察する)と、対面の延長線上で共認充足が得られる。母子関係の親和充足が人間の共認充足の原点とすれば、共認充足は扁桃体をより能動的に作用させる。したがって、社内板の文字は、通常の観念情報より強くかつ無意識のうちに記憶に固定される≒脳容量を圧迫しない。したがって、ダンバーの限界も(無意識に)超えられる。そんなことが起こっているのではないでしょうか。
■まとめ・・・企業の適正規模と『共認形成力』
これまで、企業規模として「30人→150人→それ以上」というお話をしてきました。あくまで目安としてですが、30人、150人は固定できそう。その一方で、企業の共認統合がどこまで拡大できるのか定かではありません。最後に、その部分を押さえながら終えようと思います。(あと少しお付き合いください)
◆中小企業の企業規模と対面共認
30~150人。この大きさは、ちょうど中小企業に相当します。多くの大企業が市場飽和で頭打ちするなか、多くの中小企業で体制改革を模索する動きが広がっています。
肩書きに関係なく言いたい事が言える“話し合い”の気風があるのが中小企業。皆の意思統一がはかりやすく、結果として体制改革も早い。その理由は、これまで見てきたように「対面共認が成立しやすい」構造的な必然性が大きいといえます。ならば、対面共認の利点を大いに活かした共認統合を軸に体制改革をしていくことが鍵になるでしょう。人と人とが織り成す期待・応望の共認充足は、すでに時代の活力源になっています。共認統合を軸にした改革方針は、現在の意識潮流に適応的な改革方針です。
◆リーダーの資質=共認形成力の重要性
大企業的な序列統合と共認統合が大きく異る点。それは、一人の強制権力(武力や資力・権力)で企業を動かせない、ということです。皆の共認によって企業が動いていく以上、リーダーには本質的な意味での指導力が問われます。それは、時代の意識変化を常に察知し、企業戦略と論理的に結びつけて、明確かつ端的に認識を伝播させる「力」。いわば、『共認形成力』です。
◆下からの圧力
共認統合で重要になるのは、リーダーの資質だけではありません。「下からの圧力」が大きな鍵です。
下からの圧力とは、リーダーやそれに次ぐ指導者以外の者からの圧力。なかでも、特に重要なのが、若手社員や女性社員の発信です。
近年、若手社員や女性社員の意識は、属する組織をより良くより充足的にしたいという想いが強い。そのような想いに蓋をせず、全員に向けて発信することが重要です。このような下からの圧力は「共認形成力」の土台になっていきます。
◆共認形成力の要・・・充足の場=社内ネット
上からの認識の伝播と下からの圧力。組織の共認形成力は、この両方が総体です。ならば、共認形成力を機能させる「場」を用意する必要があります。そのために大変有効なもの社内ネットです。
先述、類グループの事例のように、全員が社内ネットに収束して充足の場が形成されれば、組織全体の「共認形成力」は飛躍的に高まります。
◆共認形成力が企業規模を規定する
突き詰めると、共認統合による企業の規模を決定するのは、共認形成力です。共認形成力を発揮できる「人材」「体制」「場」をどのように育成し形成するか。それが企業規模を決めます。また、共認充足を土台にする限りにおいて、ダンバーの150人で企業規模は頭打ちになりません。社内ネットの導入でこれをクリアした類グループの実績では、30→150→300と組織を拡大しても、共認統合は全く崩れていません。
◆企業の規模
これまでの考察を総合して、企業の規模(組織編制)の一つの事例を提案します。
・闘争集団=臨戦的チーム編成:30人程度
・単位集団=対面共認を母体にした事業所編成:150人程度
↓↓
社内ネットで共認形成
↓↓
・指導者の数×単位集団=指導者の数×150人~300人程度
以上、長々と失礼いたしました。
- posted by hayabusa at : 10:03 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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