2012年11月01日
地方自治は今後どうなるのか?~前編~
業界シリーズの最終は、地方自治体について3回に亘ってお届けします 😀 まずは・・・
■問題提起
橋本市長が推進している大阪都構想を始め、道州制の導入論議など、中央と地方の関係を見直す議論が活発になってきています
こうした動きの背景には、市場が縮小し日本の経済が衰退する中で、東京への一極集中が進み、地方の地盤沈下が進んでいることがあるようです。
地方の経済を再生するために、自治体の財源・権限を強化することを自治体トップは狙っているのでしょう
画像はこちらから
一方で市民は、地方自治体に対して、非効率、無駄遣いといった批判を強めており、公務員が多すぎる、公務員の給与が高すぎると言ったマスコミ報道も続いています。
多くの大衆にとって道州制の議論はあまり関心がないというのが正直な実感でしょう。そもそも、自治体が何をしているのか、こんなに多くの公務員と予算がなぜ必要なのかよく分かりません。道州制の導入よりも、自治体の権限を縮小し税金を減らすこと、自治体の縮小を望んでいるようです 🙁
さらにその一方で、何か問題があれば行政の責任を問うマスコミや議員、自分の身勝手な要求を一方的に押しつけるだけのモンスター市民、生活保護の急増が財政を圧迫し、税収が落ち込んでも支出は増える一方で、地方自治体の多くが財政破綻の危機を迎えています。 😥
今後、市場縮小に加え少子高齢化が進み納税者は減少します
地方財政もさらに縮小することは間違いありません。それでも要求だけが肥大を続ける現状を維持することは不可能です。現在の地方分権化論議は自治体の大きさを変えるだけの小手先の改革で、何も変わらないとしか思えず、真剣に検討する気が起きませんが、自治体運営の見直しが必要なことは間違いありません。
地方自治のプロである地方政治家や地方公共団体から根本的な見直しの方針が出てくる事を期待したいのですが、地方自治の役割の不鮮明化もあって、何が正しいのか、何をするべきなのか、答えが出せないでいます。
さらに、自治体トップの政治基盤が不安定、議会もバラバラで、だれも責任を持った決断が出来ません。その結果、根本的な見直し方針どころか、通常の行政課題でさえ難しい問題になると、一般市民の住民投票で決めてもらうしかない状況が多発しています。
市場縮小という大転換期を迎えた現代、変革を求められているのは民間企業だけではありません。市場縮小の時代に、地方自治体に何が求められているのか、本当にやるべきことは何なのか?地方自治の歴史を振り返りながら、その問題点を明らかにし、地方自治の将来を展望します
まずは「地方自治」の基本から
全国民が直接、間接にお世話になっている行政ですが、知っているようで意外と知らないこともたくさんありそうです
地方自治体はどんな仕事をしているのか?どんな組織なのか?(首長、議会、役所の関係って?)どんな人たちが行政を担っているのか?等々、基礎的なことからおさらいします
■1.地方自治体はどんな仕事をしているのか
1-1.国と地方自治体(都道府県、市区町村)の関係って?
1999年に「地方分権一括法」が成立し、建前上は、国が地方自治体に指示・監督する上下の関係から、国と地方自治体が平等にそれぞれの役割を分担する対等な関係への転換がうたわれました
ちなみに、地方自治体の仕事は以下の法定受託事務と自治事務の2つに分類定義されます。
・法定受託事務・・・戸籍や外国人登録、国会議員選挙の管理、失業対策事業などに関する仕事。本来は国の事務だが住民の便宜のために地方自治体の窓口が業務の一部を行う。
・自治事務・・・地方自治体がおこなう、法定受託事務以外の一切の仕事を自治事務といい主に私たちの生活に密着した仕事。普段から当たり前のように利用しているサービスも地方自治体が運営しているものが多くあります。(ex: 公立学校の運営、図書館・公民館・体育館の運営、住宅の供給、保育所の運営、保健所の活動、バス・水道・下水道の経営、道路・橋の建設、警察・消防の仕事etc)
ここでの疑問は・・・「自治事務」が地方自治体の独自施策が発揮されるところであるわけですが、なぜか実際には、全国どの自治体でもほとんど同じような公共サービスを行っています。無数の法律によってそうなっているからです。これは「地方分権一括法」の前も後も同じで、やっている仕事も大して違いはありません。つまり、「国と地方自治体が対等」というのは建前or幻想にすぎないのではないでしょうか。これで本当に「地方自治」と言えるのでしょうか
1-2.財源はどうなっているの?
政策とセットになるのがお金=財源の問題です。地方自治体の財源は「自主財源」と「国からの援助」の2つです。
自主財源は住民税や固定資産税などの地方税で地方自治体が自由に使うことができます。国からの援助として、格差是正の名目で配分される「地方交付税交付金」は自由に使うことができますが、「国庫支出金」は国が使い道を限定して地方公共団体に交付する支出金です。用途は国から厳しく制限され、地方公共団体は他の仕事のために使うことはできません。
歳入の状況を見ると国からの援助や地方債と言われるいわゆる借金が歳入の半分近くを占めています。歳出も人件費や借金返済への割合が大きくなっており、住民のために使える財源はほとんどないようにみられます。
現状、ほとんどの地方自治体は自前の収入だけでは、行政を運営していくことはできていません。財源の半分以上は国からの援助となっており、自主財源は3、4割しかなく、「3割自治、4割自治」といわれるゆえんです。つまり、財源の面からも地方自治が自主性を発揮できるような余裕はなく、国の下請け状態となっています。
画像はこちらから
■2.地方自治の組織体制はどうなっているのか
2-1.首長(市区町村長)と議会議員の関係って?
首長と議会議員の関係、それぞれの仕事や権限については、普通の人たちは意外とあまり知りません。それぞれ住民による直接選挙で選ばれるのですが、そもそもなんでこのような体制になっているのか。
これはもともと、首長と議会議員が「お互いに活動をチェックしあう」という主旨で、「二元代表制」と言われます。民意を反映するという点で一元代表制より優れた民主制度だと言われていますが、果たしてそうなのでしょうか?
歴史的には、この二元代表制は300年以上も昔、フランス革命の頃、国王とブルジョアの相互監視のために導入された制度です。近代初期の旧国家勢力と新興勢力の激しい権力闘争の中でつくられた制度を適用しているわけですが、今の時代に300年前の使い古された制度がうまくいくわけがありません。時代に適応していくことが求められる民間組織ではまずこのようなことはありません。現在の地方議会の機能不全、地方議会に対する住民の信頼度の低さを見れば、二元代表制の存在意義自体がよくわからなくなっています。
画像はこちら リンク リンク
2-2.教育委員会ってどんな組織、何をやっているの?
義務教育をはじめ皆がお世話になっている教育に携わっているのが「教育委員会」ですが、これも不思議な組織です。教育委員会は(役所の建物の中にあることも多いですが)、組織は役所とは別で、知事・市区町村長から独立した行政委員会です。これは戦前・戦中教育への反省から、政治的中立・政治不介入という原則から来ています。また教育委員会は都道府県だけでなく市区町村ごとに設置されていますが、これはもともと「教育は地域ごとに住民の意見を反映させて独自に行うもの」という趣旨です。
しかし、現状はどうでしょうか?
まず、自分の地域の教育委員が誰なのか、知っている人はほとんどいないのではないでしょうか。教育内容も文部科学省の学習指導要領で決められており、地方の教育委員会主導で独自の教育を行える余地はほとんどありませんし、実際にやっていません。完全に中央官僚支配ですね。教育委員会のもともとの主旨は有名無実化してしまっているのが現状ではないでしょうか。
画像はこちら
2-3.お役所の組織、公務員って・・・?
○根強く温存される序列体制、事なかれ主義かつて数十年前までは役所も民間企業も上意下達の序列体制が当たり前でしたが、最近の民間企業では序列体制ではうまくいかなくなり様々な組織改革が試みられています。ところが役所=公務員組織だけは昔ながらの序列体制を根強く温存させているように思えます。必ずしも序列体制でうまくいっている=統合されているわけでもないようですが。これはなぜでしょうか
首長の政策によって動くトップダウン型の組織ではあるのですが、実際には面従腹背の公務員も多くそれだけが原因とも思えません。
公務員の仕事は基本的に、民間とは違い、特に利益や成果が問われることはなく、倒産や解雇とはほぼ無縁の状態ですので、組織改革を促す外圧があまり働きません。そのため一部には優秀で活力のある公務員もいますが、大半は保身的で特に波風が立たないように、今までどおりのことを上から指示された通りに仕事を粛々とこなすことになります。そうした無圧力状態を温存するために、昔ながらの序列体制を形式的に残しているのかもしれません。
画像はこちら
○公務員の給料は高すぎる?日本での正規の就労者数は約4400万人いますが、その中で公務員の占める割合は約6%です。
公務員の平均年収は743万円+150万円(諸手当)(地方公務員)、それに対して民間の年収は平均430万円です。
「公務員は、遅れず、 休まず、働かず」 と世間では言われますが。。。確かに民間とは感覚が違うのでしょう。そのような仕事、組織のために大衆は毎年何兆円という税金を払っています。
参考 日本の公務員の人件費は高すぎる
画像はこちら
○公務員が労働組合運動に熱心なのは?
官民あわせた労働組合の組織率は、昭和25年に46.2%でしたが年々低下し、平成21年の時点では18.3%となっています。産業別では平成21年の労働組合の推定組織率は一見してわかるように、公務員の組合組織率が大きな数値となっています。これはどういうことなのでしょうか。
世間では(労働者が貧困にあえぎ、抑圧・搾取されていた時代とは異なり)豊かさの実現以降、労働組合などの要求運動は衰退の一途ですが、公務員だけいまだに熱心? そもそも公務員が労働運動って?
財政問題も深刻であり、子育て・教育から高齢化問題まで社会問題は山積しているにもかかわらず、、、しかも民間より高い給料をもらって、自分のための要求運動をするというのは、、、どうにも理解しがたいところです。
本来、「地方自治」を言うなら、地域の課題を自らの課題として、自分の問題よりもみんなの問題に全力を尽くす組織であるべきだと思うのですが、どうもそういう体制にはなっていません。
参考:労働組合の組織率に見る公務員のおかしさ
画像はこちらから
■まとめ:地方自治の現状は?
今回は「地方自治って何?」という基礎的な情報から整理しましたが、様々な「建前」とはうらはらに、以下のような実態と疑問が浮かび上がってきました。
○「地方自治、地方分権」というものの、実態は国で決められたことの下請け仕事が大半で、地方が主体性・独自性を発揮している領域はほとんどない。そもそも法制度含めそのような仕組みになっていない。要するに、地方自治というに相応しい自主管理の中身がない。
○「議会、選挙」は何のためにあるのか、必要なのか。そもそも数年に一回投票するだけで、自治に参加していると言えるのか。大衆は税金を納め、たまにサービスを受けているだけで単なる消費者のようなもの。この状態を「自治」とは到底言えない。
○「公務員」はこんなに必要なのか。これだけの人数、人件費とも多すぎるのではないか。民間企業に比べて役所の組織体制が最も時代遅れという不思議、いったい何故?
何故、こんなことになってしまったのか 次回はこの問題を追求します
- posted by kazue.m at : 17:42 | コメント (0件) | トラックバック (0)
コメントする