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2013年07月06日

出版業の新しい可能性を探索する(後編)

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近年、出版業は、斜陽産業の代表格となってしまっていますが、出版業は人々の意識→社会構造に大きく影響する産業であり、本来期待される役割は非常に大きいものがあることも事実です。今回は、前編、中編での分析をもとに、「出版業の新しい可能性を模索する」シリーズの締めくくりとして、新しい可能性を模索します。
 
前編で、出版業の衰退の原因は、「文字離れ」などではなく、市場縮小との連動性にあることを明らかにしました。つまり、これまでの出版の売上は物欲等を刺激する情報に頼っていた。本質は人々の欲望(物欲、恋愛、娯楽etc.)の衰弱にある、ということです。
これは、中編で紹介した出版業の歴史にも裏付けられます。市場拡大期における出版の役割は、明確に欲望追求=金儲けの正当化観念の流布と欲望刺激だったのです。
しかし、近年は能力系、健康系の書籍がベストセラーの大半を占めるなど、変化が見られます。この変化は、出版社が主導した変化ではなく、人々の意識変化によってもたらされています。とすれば、この意識潮流の変化を正面から対象化することにより、新しい可能性が見えてくると考えられます。
 
そこで、まずは改めて出版業の新しい可能性の基盤となる意識潮流を押さえ、その上で出版業の新しい可能性を探ります。

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■新たな意識潮流:課題収束、自給志向の高まり
 
1970年頃、貧困が消滅。それまで生存圧力を前提として機能していた私権体制(国家・企業・学校・家庭etc.)は、ガタガタになり、社会の統合者たる特権階級(政治家・官僚・マスコミ)も迷走・暴走が顕著になります。経済も金融市場化→バブル崩壊を経て完全に混迷し、「失われた40年」が訪れます。
一方で、中編にもあるように、人々の意識は私権(自分第一)から共認(みんなの役に立ちたい)へと移行します。
共認収束のもとでは、周りの期待に応える充足こそが最大の活力源となります。そのため、周りの期待に応えるための「課題」への収束力を強めます。だからこそ、出版においても、より現実の役に立つ情報が求められるように変化します。能力系の書籍が売れている背景には、この課題収束の潮流があります。
 

この共認収束の潮流は、今後100年は続く大潮流であり、現在も私権から共認への大転換は進行中である。そして、その途上の’11年、3.11と統合者たちの暴走を契機として、この大潮流は遂に「自分たちの手で作り出せる能力」あるいは「自分の頭で答えを出せる能力」への期待、云わば自給期待の潮流を顕在化させた。これらの潮流が指し示す次の社会は、おそらく「自分たちで作ってゆく」共同体社会となるだろう。(リンク

 
共認収束の潮流を基盤に、3.11以降に急速に高まっているのが「自給期待」です。課題の対象が、自分の身の周りから社会へと拡がっているのです。この意識潮流は、共同体社会を形成する最も規定的な基盤となりますが、現実的には一足飛びに共同体社会を構築することはできません。すでに現実に存在する、実現基盤が必要となります。
 

共同体社会というと、「社会」の方に目が向かい勝ちだが、重要なのは共同体社会の構成単位=原点となる、集団=企業である。
普通の人にとって、もっとも身近な現実の場は職場である。そこには常に大きな圧力が加わっており、従って、誰もがエネルギーの大半をそこで費やしている。(リンク

 

人々が目指している新しい社会とは、共認社会であり、その基礎単位は、共同体企業である。
従って、それを実現するのにもっとも適した運動体は、共同体として先行する企業群の何らかのネットワーク以外にはない。(リンク

 
つまり、共同体企業ネットワークの形成によって共同体社会を構築していくこととなりますが、そのためには、成員の意識の収束軸=共同体の統合軸となる「理論」が不可欠となります。
出版業の新しい可能性を模索する上では、この「理論」をつくっていく過程に、出版業がどのように寄与できるのか、がポイントとなります。
 
 
■共同体社会における情報の価値は、「どれだけ周りの充足のために役に立つ情報か」
 
私権社会における情報の評価基準は、自分の私権や欲望の充足につながるか否かでした。個人の私権充足or解脱充足を満たすものこそが価値を持っていました。だから出版であれ何であれ、何かを作り出すときの基点はすべて個人。個的充足は、頭の中を充足させられれば十分で、幻想価値をどれだけ作り出せるか、が勝負でした。
一方、共同体社会における情報の評価基準は、集団・社会の期待に応えるために役に立つ認識か否か、です。共認充足のためであり、実現の役に立つことが絶対的な前提条件となります。言い方を変えれば、情報発信や出版は、現実・事実に立脚し、どれだけみんなの役に立つ普遍的な認識を紡ぎ出せるかという認識闘争です。そのため、実践者しか創造の主体足り得ません。生産集団そのもの、もしくは生産集団を前提とした個人(経営者等)によって創造活動が行われます。
 
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■出版業の新しい可能性:共同体社会では、出版業は根本的な転換が必要
 
社会が市場社会から共同体社会へと移行し、現実の生産者によるみんなの役に立つための認識闘争になると、出版業はどのように変化していくのでしょうか?
模索の前提として、中編で扱ったように、日々の共同体内の共認形成やニュースなどの、速報性や臨場感が求められる機能はインターネットが優位になると考えられます。出版が優位になるのは、情報の整理・統合や、共認内容の明文化による固定機能、教科書をはじめとした学習機能であると考えられます。
 
●前提となる、共同体の集団構成と情報の扱い:独占から共創へ
 
共同体社会に移行していくといっても、国家レベルの共同体がいきなりできるのではありません。大きなイメージとしては、共同体企業を基礎単位として、複数の共同体企業による地域共同体が形成され、さらにその上に国家レベルの社会統合機関が設置されることが想定されます。
各単位の共同体では、常に生産場面での実践と追求が繰り返されます。ここで重要なのは、共同体社会での認識闘争は共認闘争であり、私権闘争とはまったく異なるということです。私権時代の情報は、独占(機密情報・著作権etc.)することによって己の利益を最大化するというのが当たり前でしたが、共同体社会では、役に立つ認識は、むしろ相互に供給し合うことによって互いに深化させるというように、情報の扱いが180度転換します。アイデアや仮説などは、開きだす=発信することによって反応が得られ、みんなの役に立つ認識へと深化していくことになります。
 
●出版物のコンテンツ
 
①共同体内における出版:集団の歴史・先人の経験からの学び
 
各共同体は、常に最先端期待に応えるべく追求を続けることになります。集団統合≒共認形成の方法や統合軸の中身、より多くの期待に応えていくための認識など、追求すべき内容は無数に存在します。追求成果は、各共同体内で、ネットを中心に日々蓄積されていきます。
しかし、会話やネット上の単純なやり取りだけでは、有用な認識や成功事例が流れてしまうため、定期的に固定していく作業が必要になります。ネット上での整理もある程度は可能ですが、一定の構造化ができた時点で書籍としてまとめ、固定度をより高める方法は有効と思われます。
 
同時に、共同体では、「自然の摂理に学び、集団の歴史に学び、先人の経験に学ぶこと」が根本規範となります。集団の歴史や先人の経験を統合した書籍は、共同体内におけるテキストとなり、勉強会などにも使われます。
 
また、共同体によっては、現在の社内報のように、集団内の共認充足を高めるツールとして出版物を活用する場合も想定されます。
 
②社会を対象とした出版:情報や成功事例の統合
 
社会を対象とした出版物のコンテンツは、大きく分けて以下の3種類が考えられます。
・ニュースなどの社会情報を整理・統合したもの
・各共同体における厳選された成功事例や、実践に基づく普遍的な理論
・自然の摂理などの全共同体での共通課題の研究成果

ニュースなどの社会情報は、速報はネットになると思われますが、それだけでは現在のように情報中毒に陥る危険性が残ります。情報を整理・統合したものを、定期的に出版物として発行することは必要です。
先行する共同体における実践に基づく認識や、厳選された厳選された成功事例、認識群を統合した普遍的な理論は、どの集団からも求められます。地域共同体レベルで複数の共同体企業における実践や理論を統合し、出版する、もしくは共同体企業内でつくられた出版物を、企業外の人にもわかるように編集し、外部向けに出版するといったことも十分に想定されます。
現在も、一部のフリーペーパー(リンク)などでは、地域の企業の取り組みを紹介するなど、近い取り組みもなされています。フリーペーパーは、地域の企業が共同出資によって成り立っているメディアとも言え、そのようなメディアから旧来の市場拡大路線ではなく、企業同士の研鑚や地域社会の構築などの方向性での編集事例が出てきていることは注目に値します。
また、自然の摂理の追求などは、単一集団だけの課題ではなく、全共同体の共通課題となります。共通課題に関する研究機関は、個別の共同体で持つのは非効率であり、税金や共同出資など、何らかのかたちで共有することになるでしょう。研究機関は、機関紙を発行し、研究成果を社会に還元するとともに、社会的な評価を仰ぐことになります。
 
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●著作、出版の主体:全生産者が著者であり読者
 
前述のように、著者は共同体そのもの、または共同体企業経営者などになります。編集や印刷は、出版社などの専門業者が担ってもいいですが、出版を含む共認形成は集団の統合の要であり、共同体企業自らが出版・印刷まで含めて自給することも十分に考えられるでしょう。
それとは別に、共同体企業から独立した出版社が、地域共同体の単位でつくられることも想定されます。単一の共同体企業を超えた事例や認識を出版する場合は、地域共同体の出版社がその役割を担うことになります。
このような変化は、現在の著者・読者・出版社という概念を消滅させ、全員が著者であり読者であるという状態を生み出します。
 
●対象(購入主体):共有の増加
 
市場社会では、常に個人が購入主体でした。共同体社会でも、集団内における個人の個別購入は当然ありますが、共同体単位で購入し、成員に配布or共有するというかたちが今よりも増えていくでしょう。教科書のようなかたちでの配布や、個人が購入した書籍のうち、有用なものは共用の本棚にストックして共有するようなかたちです。ここで言う共用の本棚は、共通の課題を突破するために役に立つ書籍の共有が目的であり、現在の図書館とはまったく異なります。
 
●流通形態:個別的流通、コンサルティング型書店へ
 
現在の物流は、市場拡大=個人を対象とした大量生産・大量消費を前提としているため、粗製濫造となってしまっています。
共同体社会では、必要な人が必要な分注文する形態が基本となります。現在のような市場拡大を目的とした一元的な流通ではなく、直販を主流とする個別的な流通へと変化します。
書店(・取次)は、コンサルティング、コンシェルジュのような役割を担うことになると想定されます。例えば、地域ごと、分野ごとに書店があり、各企業の欠乏に合った書籍を紹介するといったサービスは需要があるでしょう。ただしそのためには、現在のように店を構えて待っているだけではなく、積極的に各共同体の欠乏を掴みにいき、自らも勉強を積み重ねるという、能動的な営業形態に変わっていく必要があります。規模ではなく、「人」が重要になります。
 
 
あらためて市場社会と共同体社会における対比を、出版に絞って一覧化すると、以下のようになります。
 
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■出版業における先進的事例
以上のように、出版業は根本的な転換が想定されますが、現在でも、すでに新しい可能性を具体化しつつある事例があります。その事例の一部を紹介します。
 

●致知出版社 ~歴代経営者達の言葉に学び、社内の風通しを良くする仕組みを出版社から~
 
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致知出版社は、人間学を追究する出版社です。月間「致知」は、毎月約8万部が発行されています。
「いつの時代にも、仕事にも人生にも真剣に取り組んでいる人はいる。そういう人たちの心の糧になる雑誌を創ろう」月刊誌『致知』は昭和53年の創刊以来、一貫してこの編集方針を貫いてきました。有名無名を問わず、各界各分野で一道を切り開いてこられた方々の体験談を通して、皆様の 人間力を高めるために役立つ記事を お届けしてまいります。(致知出版社HPより)
 
○社内木鶏会
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社内木鶏(もっけい)会とは、『致知』を使った社内勉強会です。
毎月送られてくる雑誌の中から、社長が社員に読んで欲しいと思った記事を伝え、予め読み込み。社員4~5人ごとにグループを組み、記事を読んだ感想を各自発表し、聞き手は拍手で受け入れる。というシンプルなものです。
経営者が社員の考えを深く理解する、経営者の熱意を伝える、社員の人間力向上など目的に全国で500社以上の企業が導入しています。また致知出版社では、木鶏会を社内で活用してもらえるよう、運営支援も行い、企業の活性化に取組んでいます。
 
○新しい書籍流通の形
致知は、対企業に直接送付される形式を取っており、一般書店では販売されていません
役に立つ認識を、必要なところに届け、社内木鶏会の運営支援によってその価値を感じてもらうことで、確実に定期読者を増やしています。この消費者直結の流通の形と営業戦略は、既存の出版業の枠に留まらない新しい出版業のあり方のひとつだと言えます。

 

●類グループ:社内ネット⇒るいネット⇒実現論
 
○社内ネット ~集団が培った認識と成功体験を蓄積する学びあいの場~
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類グループの社内ネットには、日々の業務日報をはじめ、お客様からの評価やうまく行った運営方法など集団がその活動の中で培った生々しい成功体験や失敗体験、そこから生み出された数々の有用な認識が蓄積されています。組織全体でその蓄積を共有し、組織一丸となって成果を高めています。
現実に密着した課題から導かれた認識群は、まさに先人の知恵の結晶であり、部門の枠を超えて学びあう価値があるものであり、能力欠乏や自給期待に応えることができる、共同体におけるテキストと言えるでしょう。
 
○るいネット:社会に開かれたネット上の『共同体志向の生産者のサイト』
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るいネットは2001年に、現実の役に立つ新理論の構築と事実の共認の場として立ち上げられました。
マスコミに代わる共認形成の場として、多くの方が参加し、週間訪問数は260万人に達しています。
日々高まる社会の閉塞感から答えや事実への欠乏も高まり、皆の手で、皆の役に立つ事実認識を塗り重ね、新たな理論を構築しています。
また、社内ネットに蓄積された内容のうち、普遍的な認識は、るいネットと相互にリンクされ、広く社会の役に立つ認識として発信されています。
思考停止してしまいそうなほどの膨大な情報に溢れている中、この場に参加する社会の当事者によって発信される厳選された事実認識やそれを下敷きに塗り重ねられる理論は、集団の共同体化や皆が充足できる社会の構築を志す人々にとって、最強の武器となるものです。
○実現論:企業の現実課題を起点に、素人がつくる理論
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実現論は、共同体・類の成員がその時々の経営問題や時事問題を分析する中から、しだいに史観的な形に整えられて、出来てきたものです。例えば、70年代なら「共同体の欠陥(ex.共同体の成員はなぜ自我が肥大するのか)」、80年代なら「全社会的な仕事活力の低下」「何故アッシー君ミツグ君の様な男の軟弱化が進行してきたのか」、90年代ならば「何故セックスレスが蔓延してきたのか」といった実践的・現実的な問題から出発し、その原因分析を4~5人のグループ会議や100人余りの劇場会議を重ねながら行ってきました。
(中略)
この様な全員参加の会議(勉強会)にも拘わらず皆の興味・関心が深まっていったのは、その時々の時事問題や経営上の実践的問題から出発しながら、底に達するまで徹底して原因を分析し人類の原基構造を解明するという、流れの繰り返しでやってきたからではないかと思われます。(実現論の形成過程より)
社内ネットやるいネットでの蓄積によって構造化された認識は、書籍化することで、反復学習や固定度の引き上げにも有効に活用できます。

 

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