2013年11月05日
日本の大学どうする? ~2018年問題を見据えた大学改革
5年後の2018年、18歳以下の人口が減少期に入り、大学の学生獲得戦争が過熱する。
この「2018年問題」を前に、各大学は存続を懸けた対策を講じている。
具体的な対策を紹介する前に、18歳人口ピークの1992年(過去)から2025年(将来)までの世の中の動きを俯瞰することで、大学の置かれた状況と課題を明らかにしてみたい。
◆【参考資料】リクルートワークスの『2020年そのとき大学は』より
下の図は、1992年から2025年までを3つのフェーズに分けて将来予測をしている。
東京オリンピックが開催される2020年の18歳人口は117万人となり既に減少過程に入って入る(第3フェースが始まってすぐ)。少なくともこの段階では、各大学の改革は一段落し社会的な評価が定着している。つまり、2017年までが改革の最後のチャンスと言える。
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①【1992年~2011年】~過去~
・18歳人口は、ピークの205万人から120万人へ4割減少
・しかし、大学進学率は27%から51%へと約2倍へ上昇
・一般企業はバブル崩壊後の失われた20年であったが、大学だけは「一人勝ちの時代」
・かつて「入難出易」と言われた大学は「入易出易」に変わり、「質の保証」が問題化
・保護者の関心も「合格すること」から「お金」や「将来(卒業後)」に移行中
②【2012年~2017年】~現在~
・18歳人口は、120万人前後で横ばい。
・日本全体の人口が減少に転じる一方で、世界(特にアジア)の人口が増加
・企業が市場を求めて海外に進出するためグローバル人材のニーズが高まる
・その一方で、国内の労働市場は縮小、産業構造も製造業からサービス業中心へ
・18歳人口は安定期であるが、社会状況が大きく変化する時代では、学生が集まる大学とそうでない大学の「二極化」が進行
・就職難と採用難の同時進行(採用したいのに基準を満たす学生が集まらない)
③【2018年~2020年】~未来~
・2018年~2020年までのわずか8年間で、18歳人口は約10万人も減少
・大学進学率を50%とすると、大学進学者が5万人減、「本格的な大学統廃合時代」に突入
・少子化は低学年から進んでいる為、附属高校や中学を経営している法人の募集にも影響
・18歳人口減を補完するために、留学生や社会人の受け入れがポイントに
◆大学の2018年への準備
~グローバルorローカルor個性化どのポジションをとるか?
◇大学規模に応じたポジション戦略
・難関総合大学(リーダー)⇒学生の質の上昇、教育・研究両面におけるグローバル化へ
・上記の受け皿大学(チャレンジャー)⇒拡大か縮小か、個性化・差別化で生き残り戦略
・差別化された小規模大学(カテゴリーキラー)⇒小さくても役割が明確な個性を磨く
◇教学改革の具体的な事例
(※教学とは、学生に何を教えるのか、どんな学生を育てるのか、というプログラム)
①グローバル人材を育てる
・京都産業大学:グローバルな理系産業人育成プログラム、
グローバル・サイエンス・コースの設置、英語力向上プログラム
・早稲田大学 :海外のアカデミックカレンダーにあわせ、クォーター制を導入。
キャンパスのグローバル化(2032年に留学生数1万人、日本人全員が留学)
・国際教養大学:1年次は学生寮での留学生との生活が義務、すべての授業を英語で実施
最低1年間の留学が卒業要件、図書館は24時間365日開放。
②地域力を担う(ローカル)
・岡山大学 :地域交流の拠点整備(地域と医療、地域と教育、地域連携プログラム)
「まちなかキャンパス事業」で地域の課題を地域の人々と学生で解決
・県立広島大学:「サテライトキャンパスひろしま」社会人を対象とした公開講座や講演
・福山市立大学:街中に位置するキャンパス立地を活かし、地域が直面する課題を解決
・徳島文理大学:地域社会の文化を継承する活動(四国八十八ヶ所、阿波踊り)
③新しい教育を創造する(個性化)
・金沢工業大学:基礎科学教育の体制整備(入学初年度に数学・物理など高校科目を復習)
学生の活動を飛躍させる実学重視(「夢工房」放課後・休日でも自由に創作)
・大阪府立大学:従来の学部学科という枠組みから「学域・学類」制へ、工学系、生命科学系、
文系、情報系など多分野から教員を集結したカリキュラムを構築。
・愛知淑徳大学:「コミュニティーコラボレーションセンター」学部やゼミ・クラブ別に行われていた
地域活動を一元化し、その経験に教育的価値を付加。
・大阪経済大学:小人数体制のゼミで行き届いた教育、ZEMI-1グランプリでプレゼン競争
・武蔵大学 :1年次の4月から全学生がゼミナールで学ぶ、ゼミナールが必須科目
◆新しい競争力の鍵となる、人材育成の明確化
◇「大学改革実行プラン~社会の変革のエンジンとなる大学づくり」 (2012年6月文科省)
・大学教育の質的転換と大学入試改革
・グローバル化に対応した人材育成
・地域再生の核となる大学づくり(COC(Center of Community)構想)
・研究力強化:世界的な研究成果とイノベーションの創出
※大学改革の方向性は示されているが、具体的な工程表と成果度・達成度を国民に分かりやすく情報公開していくことが今後の課題である。
◇企業から大学への期待
・従来の「何を教わったのか(input)」に加え、「何を学んだのか(outcomes)」を重視
※受動的な学生を能動的・主体的な学生に変えるカリキュラム(学び方)改革による「就業力」の育成と、正解のない社会の中でチャレンジできるリーダー型人材の育成の両輪が期待されている。
(参考) 「就業力」とは、就職できる力ではなく、社会で生き抜く力
- posted by hassy at : 19:55 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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