2013年12月05日
日本の大学どうする?~共同体運営で成果を上げる金沢工業大学~
少し前になりますが、2011年にある大学の理事と金沢工業大学を視察しました。金沢工業大学は、企業からの評価や学生満足度で、全国的に注目されている大学なのですが、その秘訣が、学園の「共同体運営」にあるとわかりました。
教授会を中心にした勢力が大学の発展を阻害しているという一般的な認識に反して、金沢工業大学は、徹底した「もの創り大学」という大学特性と、教員の多くがトヨタ等の民間企業出身である事、それに創設者の経営哲学が加わる事で、共同体組織が実現でき、成果を上げています。
当時、理事と施設担当の方に学内を案内してもらったのですが、教員とすれ違う際に、お互いに必ず一言声を掛け合っており(しかも、みんな「笑顔」)、「まず充足」という事を皆が共有していました。
例えば、「こんにちわー」「この間はありがとうございましたー」「あの件、あの後うまく行って、助かりましたー」等。3人位の方とはその場でちょっとした打合せが始まりました。
行動規範(≒クレド)なるものが校舎の至る所に掲示されており、そこには「感謝の心」「常に活力をもって」「勤勉」「チームワーク」等の内容があり、また、説明の中には、自然への畏敬、仲間への感謝等の考え方も示されていました。
大学のコンセプトは「学生を元気にしよう!」~引き出す、鍛える、褒める~。徹底的に「学生のため」を貫徹しており、社会に優良な学生を輩出し、社会からの評価を獲得する事が大学の意義である事を皆で共認して、それを実践していると感じました。
同じような事をパンフレットに書いてある大学は結構あるのですが、共同体運営が超実践的な集団をつくっていると思いました。理事と施設担当の方の様子を見ていても、全ての情報(外圧、課題、役割等)が共有されているという事が伝わってきました。
一緒にいった他大学の理事から、「勝手なことを言う教員はいませんか?」と質問したところ、「うちの教職員だったら、まず“それはなぜ必要なのか?”と質問し、理解しあえるまで議論すると思います」との返答があり、「ごまかしを許さない事実の追究ベクトル」という、共同体運営の基盤が大学全体に浸透している事が感じられました。
現在、大学に掛かる圧力がますます高まる中、各大学の試行錯誤は続いていますが、その決定打となるのが、大学の「共同体運営」であると思います。先行して、一般企業では共同体運営によってこの難局を突破する動きが見られますが、大学においても、みなが当事者となる共同体運営によって、事実に基づく最速の決断(最も可能性の高い方針)が実現し、社会からの大きな評価につながる事例が出てくると思います。
【金沢工業大学基本情報】
創立:昭和40年(昭和32年設立の北陸電波学校に始まる)
学生数:6500人(大学院220人)
学部:工学部、環境・建築学部、情報学部、バイオ・化学部
所在地:石川県石川郡
理事長:泉屋利郎
【建学の精神】
本学の創設意義は、米国における占領政策終結後における我が国の真の独立と復興に貢献したいとする情熱と決意が建学綱領である「人間形成」「技術革新」「産学協同」に込められ今日まで大切に受け継がれている。このため経営理念は、学生、理事、教職員が三位一体となり学園共同体の理想とする工学アカデミアを形成し、建学綱領の具現化を目的とする卓越した教育と研究を実践し社会に貢献する事にある。
【学園共同体の信条】
本学園は、学園共同体を築きあげることにより、真の「人間教育の場」となる事を目指している。大学の価値は、構成する人々の「志の高さ」によって決まるという創設者の経営哲学を継承し、学園理事長は平成14年1月、学園共同体を構成する全てのメンバーが共有する価値に基づく行動規範をKIT-IDEALSとして定め公表した。この行動規範は、創設者の経営哲学と、歴代の学長が学生に論じた言葉からその思いを要約した本学が大切にしてきた価値である。
【KIT-IDEALS】(校舎の至る所に掲示)
Kindness of Heart 思いやりの心
私達は素直、感謝、謙虚の心を持つことに努め、明るく公正な学びの場を実現します。
Intellectual Curiosity 知的好奇心
私達は情熱、自信、信念を持つことに努め、精気に満ちた学びの場を実現します。
Team Spirit 共同と共創の精神
私達は主体性、独創性、柔軟性を持つことに努め、共同と共創による絶えざる改革を進め、前進します。
Integrity 誠実
私達は、誠実である事を大切にし、共に学ぶ喜びを実現します。
Diligence 勤勉
私達は、勤勉である事を大切にし、自らの向上に努力する人を応援します。
Energy 活力
私達は、活動的であることを大切にし、達成や発見の喜びを実現します。
Autonomy 自律
私達は、自律する事を大切にし、一人ひとりを信頼し、尊敬します。
Leadership リーダーシップ
私達は、チームワークを大切にし、自分の役割における自覚と責任を持ちます。
Self-Realization 自己実現
私達は、自らが目標を持つことを大切にし、失敗に臆することなくさらに高い目標に挑戦する事に努めます。
- posted by noz303 at : 20:19 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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