2014年11月25日
地域共同体の再生 第2回~意識変化に対応していない地域の組織化~
前回の記事では、「人と人の・人と地域の関係の希薄化」と「お上に頼らず自分たちで生きていくための答えを出す必要性」から、
【地域共同体の再生】の必要性を述べました。
今回は、そんな地域共同体の現状と意識潮流を探っていきます。
■地域活動への期待は高まっている
近年、NPOの認定数は急速に伸びており、今後も着実に増加していくと予想されています。
また、内閣府による調査によると、今後のNPOの活動に参加したい人の数も増加傾向となっており、地域活動に対して期待は高まっているようです。
▲NPO認定数の推移
▲今後のNPO活動に参加したいか
「地域活動」の数だけでなく、活動内容にも変化がみられます。内閣府の調査によると、これまでは個人的な趣味に基づいた活動が多かったという状況でしたが、近年はみんなで行うスポーツ活動や自分の住んでいる街の活性化に協力する祭りや地縁行事の運営などの地域行事が急増してきています。同じ地域活動でも、より集団を意識したものへと変化しつつあるようです。
▲参加したことのある地域活動
▲最も力を入れた地域活動
■高まる主体性と社会的問題意識
地域の活動を始めたきっかけは、これまで友人・仲間に勧められたから、自治体に勧誘されたから参加したという受動的なケースから、
近年は問題意識や、解決したい課題をもって個人の意志により参加したというケースが増加しており参加者側の主体性が高まっている傾向にあります。さらに、今後の活動に参加したいと思う理由に関しては、生活に充実感を得ることができたことや互いに助け合うことが大切であると感じたからだということです。お金や物、地位に価値を見出しているのはなく、共に誰かとなにかを成し遂げること自体あるいは過程に価値を見出しているようです。さて、ここでいう地域活動に参加するきっかけで問題意識や解決したい課題というのは、どのようなものなのでしょうか?
▲地域活動への参加動機
▲今後活動に参加したいと思う理由
参加者が行いたいと考えている活動として以下のようなものがあげられています、
・防犯・防災・交通安全の活動 58.5%
・要介護の年寄りなどを助ける活動 57.1%
・子育てを助ける活動 48.9%
・まちづくりの活動(環境美化活動含む) 38.4%
個人の娯楽や能力上昇ではなく、社会的問題に基づいた課題ばかりが並んでいます。
これは、昨今の震災やお上の暴走に対して、政治やエネルギー、自分たちの住む街のあり方に対して主体的に考える人が増加していることや、自らの利益より社会の利益を優先的に考える大切さを感じている人が増加していることが大きく影響しているようです。大企業や国に全て任せてしまうのではなく、自らが行動することで自分の生きる場をつくる、さらには社会をよくするといった自給意識が強まっているためだと考えられます。
▲個人よりも国民全体の利益を大切にするかの割合
■意識潮流の変化と地域活動内容のすれ違い
社会への主体性・貢献したいという意識の変化によって、注目を集めている地域活動。実は、活動をしてみたい・関心があるに留まってしまっている人が増加し続けており、活動自体に参加する人はほとんど増加していません。そのため、地域活動を行っている人たちの大半が担い手の固定化・不足に対して問題意識を持っています。
▲地域活動への参加に対するアンケート
意識の変化によって、注目を集めているはずの地域活動がなぜ、このような状況にあるのでしょうか?
現在、地域活動に参加する人の多くは明確な目的を持って参加する事を上で述べましたが、逆に言えば明確な目的を抱けなければ、あるいは明確な目的を共有し達成することができると思わなければ参加しないとも言えるのではないでしょうか。内閣府のアンケート調査においても、担い手問題を除いた場合、参加者たちは現在の地域活動に「地域課題に対応した活動ができていない」や「長期ビジョンに従った活動をしていない」という問題意識を持っていることがわかります。
地域活動への期待と現在の地域活動の状況がすれ違ってしまっているために、地域活動は注目だけが集ってしまい、実際はなにも実現せず、参加者たちも十分に充足感を得られていないのではないでしょうか。今、地域活動は社会の意識潮流に沿った形で変化することが求められていると言えそうです。
■では、なぜ意識が変化しているにもかかわらず、統合・組織化が進んでいないのでしょうか?
前項でもあげたように、人との繋がりがほしい、といった「地域コミュニティ」を求めている人が増えているのに対して、地域を統合し組織化していく動きがない、あるいは組織はあるが進んでいない、など意識だけ先走って体制は全く数十年前から何も変わっていません。
アンケート調査の中には、
「どんな地域活動をしているのか?が見えない」
「地域活動の動きが不鮮明」
といった問題点もあげられていましたが、それが本当の原因なのでしょうか?なぜ統合・組織化が進んでいかないのか・・・仮設をたてて追求していきます。
Ⅰ.地域活動に「課題」が設定されていない!
地域住民自身は、生活していく中でどこか「不整合感」や「問題点」は感じているはずで、何かしら思いはあると思います。本来は危機はわかっていたはずなのに、問題点等を発信することもなく、ただ目先の(身近な)課題のみ扱っているのが現状です。
★主な地域活動
・清掃(リサイクル・資源回収・ゴミ収集・朝のゴミ拾い)活動
・祭り(夏祭り・ふるさとまつり)
・ボランティア活動(特別支援活動・老人ホーム訪問・募金活動)
・防災訓練
Ⅱ.仕事と地域活動の断層がありすぎるのでは?
地域活動に参加している人は、主婦や老人が多くみられます。逆に20代~50代の現役社会人少ないのはなぜでしょう?
それは仕事と地域活動の断層があまりに大きすぎるのが原因なのではないでしょうか。社会人にとって差し迫った仕事と採算性のある活動と、日々変わり栄えがなく、採算性のない地域活動では、参加する人々の意欲に大きな格差があり、もはや今では個人的な自由活動になり始めているのが現状です。「社会人は会社に属して仕事をするのが当たり前。仕事をして採算があるからこそ続けられる。」といっても間違いではないでしょう。それに対して、地域活動は採算がないため「活動する」ことの意味を見出しにくい部分が大きな壁になっていると思います。
仕事とかけ離れ、かつ近所付き合いのように密接な関係でもない・・・地域活動は企業や近所のどちらをとっても差があるように感じます。
▲オフィス内
▲近所付き合い
Ⅲ.「課題化」の前に、課題が「明確に」なっていない!
地域にとっては大問題な事象が見過ごされて改善されないまま何十年もたってしまう・・・といった地域問題が不鮮明になっていることも原因でしょう。まずは、地域住民が地域問題に対して、「やれる人が、やれる範囲をやる」ではなく、「まずは実行し、さらに課題を設定し、挑戦してみる」といった可能性に向かった意識に転換することが必要です。住民側の思いと呼応しその動きを利用するように、「誰かが変えてくれるからいいか」と、地域の中でも主体意識が弱まってきています。まずは地域の動きを変えていくにはどうするか?と地域ごとに考える必要があります。
Ⅳ.役所が肥大化しすぎている?
本来は地域住民が自ら動いて活動をしていくべきものが、「役所」に大本をゆだねてしまっていて、住民は役割共認もなく活動をせず終わってしまっているのでは?地域の課題は、住民が一番わかっているにもかかわらず、大本をゆだねている役所が地域の問題をわかったつもり、あるいは課題捨象し、踏み込まず今までどおりの活動をただ行っているだけ。行政自体が地域と共同体を形成できていないのではないのでしょうか。
役所からの指示をただ実行するだけの住民は、面倒な問題を目の前にした瞬間、「役所におしつければいいや」と主体意識を失うなど、自治体と行政が分断してしまっているのが現状です。
Ⅰ~Ⅳにあげたように、地域住民自身が身近なことだけやる(やれる人がやれる範囲だけをやる)動きが定着してきてしまったため、その姿を見ている若者たちは「やっても意味がない」「つまらない」と参加意欲が高まらない状況になってきてしまうのは仕方がないといってもおかしくないくらい、大本の活動がずれてしまっているのです。
しかし、全国中にある地域活動が全てこの状況にあるわけではありません!数ある地域活動の中で、可能性のある事例を次回紹介したいと思います。
- posted by 岩井G at : 21:35 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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