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2017年01月31日

日本でいちばん大切にしたい会社① 島根電工:「住まいのおたすけ隊」は自社も助かる

島根県の人なら知らない人はいないというのが、島根電工株式会社です。
島根電工は、電気、通信、冷暖房、給排水、上下水道など生活に必要な総合設備の工事などを中心に行う会社で、昭和31年設立し、資本金2億6千万円、グループ全体での売上規模は140億規模になります。今回は「日本でいちばん大切にしたい会社3」(坂本光司法政大学教授著:あさ出版発行)で取り上げられた島根電工を紹介します。この本で島根電工が取り上げられた理由は、「住まいのおたすけ隊」の存在です。

写真はココからお借りしました

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建設業界では、業界では単価が100万円以上のものを件名工事、それ以下のものを小口工事と呼ぶそうですが、「島根電工」は、かつては官公庁から受ける公共事業や、ゼネコンから受けるビル等の建設工事をやっている会社で、一般家庭から出てくる小口工事はほとんどありませんでした。

しかし現在の陶山秀樹会長荒木恭司社長が未だ中間管理職だった頃、将来の公共工事の減少や民間の大型工事の減少を見据え、自力で民間、特に個人の需要に応えることをその対策の一つとして、小口工事を増やすことを決めたのです。

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この小口工事の注文を取るために、広告やテレビCMで島根電工のイメージを次々と塗り替えました。
その中で『照明器具の取替えやコンセントの増設、水道蛇口の交換、エアコンや換気扇の掃除など、「住まいのおたすけ隊」1000円から出動します。』というスタンスが受け、2001年から始めた事業は、2010年に30億、2011年に47億の売上を達成するまでに至ります。

しかしこの軌道修正は簡単そうで、実は意外に難しい。島根電工のようなタイプや規模の会社はたくさんありますが、ゼネコンや官公庁など公共事業の仕事がほとんどです。なぜ他の会社では出来ないのでしょうか。荒木社長曰く

「同業者の集まりで話をさせてもらう機会も増えました。
年間の売上が20億くらいの会社の30代、40代の若い経営者が『個人のお客をどうやって増やせばいいんですか?』 と聞いてきます。
『島根電工さんおように諸口をやりたいけど、どうすればいいんでしょう』 と言うから、『お宅は、病院はお客様ですか?』 と聞くと 『そうです』と言う。
『スーパーは?』 『そこもお客様です』 という返事です。

『じゃあ、そこの従業員がいるでしょう、彼らにはきちんと家があるでしょう』
『あ、そうか』 と、そのレベルなんです。
一般のお客さまに目がいっていないから『一体どこでそんな個人客を捕まえるですか?』と不思議がるんです。みんなやっぱりお上頼りゼネコン頼りという体質を変えられないんですね」

小口工事に本格的に取り組んでからは、売上の構成もさることながら、社員の意識も大きく変わります。
公共工事と異なり、小口工事は、直接お客と接する機会が多くなります。つまりダイレクトにお客の反応が跳ね返ってくるため、社員のやりがいにつながりやすいのです。中には直接電話をかけてくるお客もいるそうです。

あるおじいさんからの電話
『島根電工の若い社員が暑い中、外での仕事をしているので「ちょっと休んでお茶でも飲んだらどうか」と声をかけたところ、
「ありがとうございます。でもこれを○○時までにやった方がお客様も助かると思いますので、お気持ちだけいただきます」と言って、お茶も飲まず汗を流して一所懸命作業をし帰って行った。私は最近の若いものにはロクな者がいないとずっと思っていたが、間違っていた。こんな真面目な若いのもおるんかと、感動した。』

公共事業やゼネコンから発注工事の場合、工事を発注する施主と利用者は別のケースがほとんどです。直接、利用する人と接することができれば「こうした方がイイ」という提案もしやすい。小口工事のやりがいは、「お客の反応+自ら提案」から広がっていると思います。

元々、建設業界では庁舎や銀行、大規模ビルなど大きな建物を手掛けることがステータスでした。陶山会長や荒木社長も話します。

「昔は私たちの回りでもそういう人が多かったです。それ以外の小さな仕事をバカにしている節がありました。ですから最近、若い連中に『どう?本当は大きい建物とか、ビルをやりたいんじゃないの?』と聞くと『お客様が感動してくれるので最高です。お客様が喜んでくれることが自分の生きがいです』と、こうですよ。
『はあ、ここまで変わったんだな』と思いました。喜ばれることが喜びなんですよ。だからもう安心だ。私たちのやってきたことが間違いなかったんだな、ということが社員を見て分かりました」

かつては建設業界では金を儲ける以外に「この建物は俺が造った」という自負や達成感が仕事の原動力だったのです。「お客様が喜んでくれることが自分の生きがいです」というコメントに比べると何と自己満足的だったのか、と思えてきます。会長や社長の講じた会社生き残りの方策は、実は若者に内在していた「喜ばれることが喜び」という共認充足を解放する結果につながったのだと思います。

 

 

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