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2018年08月13日

「待ち」から「攻め」へ 近畿タクシー① ~地域資源をつなぎ、地域のブランド力を高める~

神戸には2006年からユニークな観光サービスを始めたタクシー会社があります。
有名ケーキ店を巡る「神戸スイーツタクシー」では、三宮エリアにある有名ケーキ店6店を選び、好きな所へ行ってケーキを味わえる。プラン限定メニューのある「ボックサン三宮」なら3個500円で顧客の名前入りの菓子のプレートを付けて歓迎してくれる。さらにビーナスブリッジや潮騒公園といった名所も巡れる。タクシー代は2時間1台7000円(3名、飲食代別 2018年8月現在)。
同様のアイデアを横展開した「神戸ビーフタクシー」「jazzタクシー」などでヒットを飛ばしているのが、森崎清登社長率いる近畿タクシー㈱です。今回は「地的経営のすすめ」(佐竹隆幸著:神戸新聞総合出版センター)から一部要約して紹介します。

このユニークなタクシー会社誕生には二つの前史があります。
一つはタクシー事業を「流し営業」から「予約営業」に替えたこと。
二つめは1995年の阪神淡路大震災後、森崎氏が被災地の長田区復興まちづくりでの経験。

まず一つ目「予約営業」への転換を見ていきましょう。 森崎氏は、早稲田大学卒業後、地元神戸の酒造メーカーに勤務後、1986年に奥さんの父親が経営する近畿タクシーに跡取りとして入社。 しかし仕事が合わず陰鬱な日々が続いたのです。

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当時タクシーは、流し営業が中心なので、ただ手を挙げた客を拾って運ぶだけ。
「即時サービス財というそうですが、結局客にとっては、どこの会社のタクシーでもいいわけです。積み重ねというものが効かない
電話を取ればクレームか事故。だから管理者をしていても面白みが沸かなかった。

「前職の古いと言われる酒造業界でさえ、灘の酒ではなく、何々というブランドを客が指名買いしてくる時代になっていました。ですから近畿タクシーもお客さんから何とか指名されるというか、客の顔が見えるような方向にならないか、と考えていたのです」

きんたく そんな折に、英国のロンドンタクシーが輸入されるという雑誌記事を目にした。「これだ」と思った森崎氏は、このクラッシックカーを使った事業を始めようと、「観光と福祉」というタイトルで企画書を書いて先代社長に提案した。すると先代社長は

「なんだ、こんなことがしたいのか。だけど今までタクシー業界で新しいことをしても成功した者は一人もいないぞ」
ここで怯んでは元も子もないと思い、森崎氏は

「そうですか、わかりました。どうか、失敗させて下さい
  さらに事業を螺旋階段に例え
「上って行くうちにきっと踊り場が見えます。そこで新しい発見ができるかもしれません。それを見たいのです。それは必ず後で活きます」 と重ねた。
先代は
「いくらかかる?」 と聞いてきた。 「1台900万です」

「何台買うのか?」 「1台」 「あほ、営業車が1台で足りるか。 3台買え」

こうして同社初の予約で乗るロンドンタクシーが生まれました。多くの管理職からは白い目で見られながらも、後には引けない森崎氏は、デザイナーに制服(ホテルのコンシェルジュのような服)を頼み、社内に張り紙をして運転手を募集しました。 そしてベテラン2名が立候補。理由はこの制服ならホテルへ行っても恥ずかしくないから。ベテランだからこそ、仕事に誇りを持ちたかったのです。 こうしてロンドンタクシーが始動した。旅行会社、神戸市観光課、ホテルなどに話を持って行き、主として旧居留地をエリアにしたブライダル用として活路を見出した。採算ベースにはなかなか乗らなかったが、副次効果はあった。案内パンフを作って営業に行く。まずそれ自体がこれまでなかったこと。それによりホテルと関係ができて、そこから予約注文がくる、という好循環。

「ファンが出来てきたのです。さらに近畿タクシーへの好感度も生まれてきたと思います。例えばある社長が乗られて、素晴らしいと褒めてくれて、運転手に『君は業界のエリートだね』と言われて名刺をもらったと報告してきました。感激しているのです。客に褒められるようにする、という意識がなかったんです。それが生まれてきました」

これまでの乗客自身が「目的地まで運んでくれればよい」というレベルの期待しか持っていなかった。だから運転手もそれに応えるだけに止まっていた。しかしクラッシックカーで神戸を観光するという特別サービスを打ち出す会社ということで、利用者は、近畿タクシーへの期待の高まり、それに応えるべく運転手もやる気UP⇒工夫や配慮につながったのです。
一方でこのタクシーは旧居留地エリアの2kmを営業エリアに限定していた。古い洋風建築のある異国情緒の豊かな場所を走るからこそ「クラッシックカーが映える」からです。さらに

「エリアを広げると、客の顔が見えなくなるのです。乗客だけでなくて、関係先のお店についてもそうです。地元のお店や店員のことを知って密着するから、そこと深い関係ができて、新しい提案もできるわけです

「ありものを使って、タクシーという輸送機能でつないでいるだけ」と森崎社長は語りますが、輸送サービスではなく、人と地域(≒人)とをつなぐことをサービスの根幹に置いたからこそ、成功していると言えます。アイデアそのものは「お洒落」なイメージを持ちますが、中身は極めて土着的で地域密着の路線。神戸に人が住み、神戸を訪れる人がいるからこそ成り立つ会社として、さらに神戸のブランド力をUPさせる取組みにもつながっている。
企業経営と地域貢献がつながっている会社として取り上げました。

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