☆ランキング☆
にほんブログ村 経営ブログへ

最新記事一覧

最新コメント

最新トラックバック

2019年10月22日

障がい者を隔離するな、交ぜろ ~焼肉キングコングの挑戦

今回も「日本の革新者たち」(齊藤義明著:㈱ピーエヌ・エヌ新社)を元に地方創生に取り組む企業を紹介します。

「常識とは18歳までに身に着けた偏見のコレクションである」

とは、アインシュタインの名言。常識とは親や友達、学校、マスコミ等から、「正しい」と教わった観念の集合体に過ぎない。一方、創造や革新とはその受動的な認知から脱却し、世の中の常識の何か一部or全部を作り替えようとする挑戦だと言える。時代と共に常識は変わってきたし、国によって常識が番うように、常識とは可変的である。常識とは革新者によって塗り替えられていくものなのです。

沖縄に、㈱NSPが経営する「焼肉パラダイス キングコング」という店がある。11人の従業員のうち5人に知的、身体、精神の障がいがある。常識的には、接客も含まれる飲食業において、これだけの障がい者を抱えて大丈夫なのだろうか?

写真はコチラからお借りしました

写真はコチラからお借りしました

にほんブログ村 経営ブログへ

NSPの親会社であるナガイ産業は10数年前に、かつてピークだった年商が1/3にまで落ち込み経営困難に陥った。あらゆるコストカットを行い、何とか持ち直したものの、それが原因で慢性的な人手不足となり、従業員の気持ちは荒み、店の雰囲気は最悪になった。

そこに現れたのが高校生アルバイトの武夫君。武夫君は勤務当初から物覚えが悪く、同じミスを何度も繰り返し、目線が合わず、上手くコミュニケーションが取れない等の苦情が、客からだけでなく、店のスタッフからも出て来て、店の状況が益々悪くなったのだ。

しかしそんな中でも武夫君は「この仕事が好き」と言い、いつも張り切って出勤。相変わらずミスを繰り返すものの、辞めることなく、凹むことなく、人手不足の過酷な店舗に出勤し続けた。当時、アルバイトは無断欠勤・退職がザラだった状況での武夫君の存在は、いつしか店の安心基盤になっていく。しかも武夫君は業務内容の好き嫌いがなく、何にでも取り組んでいくので、いつしかオールマイティな動きが出来る人材になっていた。勤務して3年目になると社員が頼りにし、しかしそれでもミスする武夫君を常連のお客さんがフォローするまでに仲良くなっていた。
この武夫君が障がい者であることを知ったのは、店で働きだして随分と経ってから。NSP砂川代表は、「最初に障がい者と知っていたら、理由もなく雇用しなかったかも?」とのこと。障がい者に対して「業務効率が悪い、生産性が低い、何考えているか分からない」という偏見(≒常識)は少なからず皆持っているから。

しかしこの経験を踏まえ、砂川代表は2012年に障がい者雇用を打ち出します。そして障がい者を「不器用だけど一生懸命」という意味で「BIメンバー」と呼ぶことに。
しかし当時、従業員は障がい者に対して水と油→やはり仕事は全く上手くいかなかった。
そこでBIメンバーと健常者従業員がペアを作り、2人1組で仕事をする方式にした。そしてお互いの仕事ぶりでの気付きや良かった点を探し合う作業を毎日繰り返した。これにより相互理解が深まり、どう伝えればBIメンバーが動きやすいか、が分かり業務効率も飛躍的に上昇したのです。当然、職場の雰囲気は良くなり、仕事も楽しくなるという相乗効果にもつながります。そしてガタガタだった会社はV字回復を見せます。

職場環境は勿論、業績まで上昇させた彼らと健常者の違いは何か?

キングコング泡瀬店大石店長によれば、それは「意欲」だそうです。例えば始業開始は「朝9:40に来て、まず店のカーテンを開ける」からスタートだが、朝8:40頃には出勤し「早く仕事がしたい」と待っている。花の水やりなど、自分たちでできることを次々とやっていく。「自分はここまで」と勝手に縄張りを決めない。あるBIメンバーが元気に接客してお客さんに喜ばれると、他のBIメンバーも負けじと元気に挨拶するようになる。むしろ社員がそれに引っ張られるらしい。

週一回の全員参加の経営勉強会の中で、「目的はお客を喜ばせること。それぞれの業種・業態の中で『人の役に立つ』ことが、世の中にとっても、組織にとっても、自分にとっても最大の喜びであること」を継続して学び合っていることも要因の一つ。
働けることは健常者にとって「普通のこと」であり、一方で働くことは「嫌なことだが、金を稼ぐために仕方ないこと」でもある。なので「如何に楽して金を稼ぐか」に焦点が当たっている。しかし障がい者にとって「働けること」は有難いことであり、さらにそれが「人の役に立つ」ことは何よりも喜ばしいこと。その純粋さが「意欲」につながっているのです。

そしてかつて彼らが押し込まれていた「障がい者の枠」から解放したことも大きい。一方的なラベリングを外し、BIメンバーも接客の最前線に出すこと。隔離ではなく交ぜることで、健常者との化学反応が起きたのです。実は意欲・活力という視点では障がい者から学ぶべきことは大きいのです。

※参考:介護のほんねニュース
※参考:キングコングができるまで

 

コメントする

comment form

trackbacks

trackbackURL: