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2020年01月29日

世界遺産になった「和食」の基盤を作っているのはカビ

大昔、ヒトは食べ物の保存に様々な工夫を凝らした。自然現象を観察して、例えばカエルやトカゲ、ヤモリの干乾びたのを見つけて口にしたのだろう。それが食べられると分かると、今度は干乾びたものを集めてきて貯えただろう。即ち「乾燥」である。その乾燥による保存食品の代表が『鰹節』です。 ではまず鰹節の作り方から見てみましょう。

<鰹節の作り方>
最初に原料の鰹を三枚におろし、そのおろした身を煮籠に入れて一時間半ほど煮た後冷やす。これを骨抜きしてから底をスノコ張りにした木箱に四、五枚重ねて入れ、焙乾室で堅い薪材を燃やして燻し、じっくりと数日間かけて乾燥させる。これを舟形に整形削りすると「裸節」です。

これを四、五日間日光で乾かしてから、カビ付け用の樽や桶、箱、室などに入れる。ここに裸節を二週間もそこに入れておくと、中に生息している鰹節菌と呼ばれる麹カビの一種が表面に密生します(一番カビ)。
これを取り出して胞子を刷毛で払い落として日干しし、再びカビ付けの容器や室に入れる。二週間でカビは再度密生する(二番カビ)。
こうして三番カビ四番カビ付けを繰り返し、最後に十分に乾燥させてようやく『鰹節』が出来上がります。

単に乾燥させるだけでなくカビの密生を繰り返すのは、カビに鰹節の内部に残っていた水分を完全に吸い取らせてしまうためです。

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御存じのようにカビは他の微生物に比べ多くの水分を必要とします。乾燥地帯で、降雨量、湿度の少ないヨーロッパにはカマンベールチーズくらいしかカビが関係した食品はありませんが、湿度の多い日本には味噌、醤油、日本酒、味醂、焼酎、米酢、甘酒などカビが関与する発酵食品は多いのはその理由です。

カビは先ず鰹節の表面でびっしりと繁殖してそこから水分を吸い取って生きていく。節の表面の水分が吸い取られれば、そこは乾燥状態になるので、今度はさらに奥の水分がその乾燥した表面に移ることになり、その水分がまたカビに吸い取られるわけです。こうしてどんどん節の内部の水はカビによって表面まで吸い上げられ、結局最終的には節の内部の水はほとんどなくなって全体が乾燥した状態になり、世界一硬い食べ物と言われる鰹節が完成するのです。 ここまでに完全に水分を取ってしまうと他の生物たちは全く生育出来ません。冷蔵庫のなかった大昔の偉大な知恵です。

さてこの鰹節、皆さんはどう使われていますか?削って薬味にすることもあるでしょうが、最も馴染み深いのはやはり出汁としての活用ではないでしょうか。

日本料理の基本となる出汁の重要な特徴。それは鰹節を削って取った出汁の上に油脂成分が浮かんでこないこと。脂ののった鰹を原材料に使っているのになぜ鰹節にすると油分が出ないのか?それはやはりカビのおかげです。 発酵中の鰹節菌は節の表面で増殖中に油脂分解酵素(リパーゼ)を分泌して油脂成分を脂肪酸とグリセリンに分解し、さらにその分解物を食べてしまったのです。西欧料理や中華料理などの出汁として有名な鶏ガラや牛のテール、豚足や骨などは、煮込むと必ず油脂成分が溶けて出汁の表面に浮かび、味を決定づけますが、日本の出汁は鰹節、椎茸、昆布ともいずれも油脂を出さないので、主張しすぎず材料の味を活かす日本料理の基盤を支えているのです。

そしてもう一つの重要なポイントは食味です。
日本人以外の民族の食味は、「甘」「辛」「酸」「苦」「鹹(塩辛)」の五味からなります。しかし日本人はこれにもう一つ「旨味」が加わります。この旨味の主体は、アミノ酸と核酸(イノシン酸)です。鰹節菌は節の表面で繁殖している一方で、様々な酵素を生産し、それを節の内部に送り込みます。その酵素群の中に、鰹の魚体の主構成成分であるタンパク質を分解してアミノ酸にするタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)があり、それが作用して旨味の主要成分であるアミノ酸を蓄積させるのです。
つまり日本人はカビのおかげで保存食品を確保できただけでなく、豊かな味覚も獲得できたのです。それに基づく「和食」が世界的な評価を受け、平成25年にユネスコの世界無形文化財に指定されました。ヒトの都合の良いように自然を強引に組み替えるのではなく、置かれた状況を肯定視し追求し続けることが、古来からの日本人の特徴。カビさえも味方に引き込める力を私たちも引き継いでいるのです。

 

※参考:「発酵食品礼讃」(小泉武夫著:文春新書)

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