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2020年02月12日

熟れ鮓は微生物との共同作業

魚介類を細菌や酵母で発酵させた発酵食品は多種に亘るが、その代表は何といっても「熟れ鮓(なれずし)」でしょう。といってもピンとこない方が多いかもしれません。
熟れ鮓の代表的なものは近江(滋賀県)の鮒鮓(ふなずし)や紀州(和歌山県)のさんまの熟れ鮓、石川・富山の蕪寿司など。皆さんがご存じの寿司は酢飯を使いますが、熟れ鮓は魚介を飯と共に重石で圧し、長い日数をかけ乳酸発酵による酸味を生じさせるもので、言わば魚の漬物のようなもの。その原型は中国や東南アジアに古くから伝承されたと言われています。
紀元前4~3世紀の成立とされる中国最古の辞書『爾雅』には既に「すし」についての記述があるが、それによると「鮓」というのが魚の貯蔵品、「鮨」というのが魚の塩辛で、その素材には鯉や草魚、ナマズなどの川魚などが使われていました。

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近江の鮒鮓の場合、4、5月頃の産卵前の鮒(ニゴロブナ)に塩を振って漬け込み、それを七月土用に、鮓桶に飯と鮒を交互に詰め込んで本漬けとし、強く重石をして発酵させ、正月頃から食卓に供す。鮒のほかアマゴ、モロコ、ハヤ、オイカワ、ドジョウ、ウナギなどの鮓も昔は多かった。漬け込んでいる間、まず乳酸菌が飯に作用して乳酸を作り、飯と魚全体を酸っぱくしてpH(水素イオン指数)を下げ、防腐効果を保たせます。この時、魚のタンパク質の一部がアミノ酸に変わって、旨味を増す(独特の臭みは発酵初期から中期にかけて出てくる)。

熟れ鮓は魚の長期保存のみならず、発酵中の微生物が様々なビタミン群を多量に生成するから、ビタミンの含有量が豊富であり、ビタミンの補給という点でも優れた食品です。その上、熟れ鮓に含まれている良質の乳酸菌や酪酸菌は生きた活性菌であるため、これを食べると整腸作用に効果があり、腐敗菌の繁殖を阻止する細菌群が多量に腸内に棲みついている腸を整えるのです。それでなくとも質素で素朴な食生活を送ってきた日本人にとっては熟れ鮓は実に貴重な発酵食品です。

今でも中国広西チワン族自治区の村では、長男が誕生すると必ず鯉の熟れ鮓を何十匹も大きなカメに仕込んで保存しておき、例えば成人になったとか、結婚式とかの御目出度い日にカメから1,2匹取り出して祝いの席で振舞う御馳走です。実に40年以上保存されているのです。 日本でも和歌山県新宮市の料亭には「食の化石」ともいえる30年も寝かせた秋刀魚の熟れ鮓があります。そもそも現代の冷蔵庫で、食べ物をそこまで保存できるでしょうか?

このように発酵食品は日本人にとって知恵の食べ物ということができる。例えば前回紹介した鰹節ですが、今のように燻して乾燥させ、それにカビを付けて発酵させたのは江戸時代の延宝2年(1674年)。奇しくもこの1674年はオランダの科学者・発明家であったアントニオ・ファン・レーウェンフックが人類史上初の顕微鏡を作り、それを使って微生物を発見した年。しかし既に日本ではその見ることのない微生物を活用して発酵食品を生み出していたのです。

個別の微生物の姿は見えなくても、自然現象をつぶさに見てそのを推し測り、皆で試行錯誤を繰り返してきた成果が発酵食品です。常に全体を捉えることが追求には欠かせないスタンスなのです。

 

※参考資料:「発酵食品礼讃」(小泉武夫著:文春新書)

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