2020年08月25日
生殖も取り込んだ経営計画で成長するファースト・コラボレーション
女性がいきいきしている会社として今回取り上げる株式会社ファースト・コラボレーションは、不動産仲介会社エイブルの高知加盟店。経営理念は
◇私たちは「住」のプロとして、安心・信頼・満足を提供し、日本で いちばん お客様と感動を共有できる超家族カンパニーを目指します!
社長の武樋泰臣(たけひたいしん)氏は、海上自衛隊、大阪新地のクラブ店長、泥んこプロレスのレフェリー、スナック従業員などを経て不動産会社に勤務し、その後2004年に独立しました。武樋社長は自身の職業経験を踏まえ、社員が協力し合い成果を上げる会社にしたいと考えて、社員全員でこの経営理念を作成したのです。
その真価が問われたのが、仕事の中心的存在であったある女子社員の結婚・妊娠でした。
彼女しか分からない仕事もあり、いなくなると会社として大きな痛手になります。そして彼女自身も出産後は職場復帰したいという気持ちが強かったことから、武樋社長は女性の支援に真剣に取り組むようになりました。
武樋社長は彼女と会社の仕事を引き継ぐ過程で、どうしたら仕事と家庭を両立できるかを一緒に考えて、社員の出産時に仕事を回すノウハウを蓄積していきます。
まず彼女は自分が妊娠で職場を離れても後輩が判断できるように、と自分の仕事のマニュアルを作成。定期健診などで会社を抜けるときは他の社員と頻繁に話をし、産休に入っても時々店に顔を出しフォローします。そのことは他の社員に波及効果が生まれます。「彼女が職場を離れる」という事実に焦った後輩たちが、主体的に仕事に取り組むようになったのです。
出産は妊娠期間や予定日が概ね分かっているので、計画的に行動できます。しかし出産で職場を離れる社員は、他の社員に助けてもらうため後ろめたさを感じるようになり、他方で職場を離れても仕事が回ることで寂しさを感じるようになります。女性が出産後に離職してしまう要因の一つですが、彼女は後輩の成長をみて、逆に奮起し、自分が復帰した際には新しい仕事を開拓することを決意し、それからの仕事にさらに工夫をしていきます。
こうしたことを経て、2006年に以下の「働くママさん計画」が作成されました。
■勤務時間、勤務日、勤務日数は本人の自由
・自由だからこそ、自由になりすぎてはいけないというセーブがかかる。お客様に迷惑をかけないように話し合いをしている。
■勤務店舗は自宅、実家、保育所などにより相談の上決定
・有休を使わなくても仕事ができるようになった。
■店内に授乳コーナーを設置
・子供を職場に連れてきて、授乳時は授乳コーナーに入っている。
■残業・会議免除
・重要な会議は女性社員の出社できる時間に合わせて実施している。
■親子出社OK
・家や保育所で子供の面倒を見られない場合、親子で出社する。
■子守の依頼OK
・お客様との契約などの対応がある場合は、他社員に子守を依頼する。
■お昼寝奨励
・赤ちゃんの夜泣きで寝不足になる社員はお昼寝時間を設定する。
■外出、早退、欠勤の自由(病院、お迎え、買い物など)、子供優先
・子供に関することは調整できないことが多い。急な発熱で呼び出しがかかるなど、コントロールできないところに、会社都合で枠をはめない。
■休業中も会社の情報共有が可能
・出産・子育てで休業し、職場に戻った時に、浦島太郎状態にならないように、会社の出来事を情報共有する。
つまりお互いの工夫の中で、出産、子育てのために自由度が高い働き方でも仕事が回る仕組みが完成していったのです。
そして同社には、「出産スケジュール表」があります。今、勤務している妊娠中やこれから子供を作ろうと思っている女性社員の予定を時系列的に管理するもので、今後の5年間程度の予定が出店計画など会社の計画と共に記載されています。そして出産が重なるような年は、多めに新規社員を採用するといった計画になっているのです。
まさに夫婦間の性の営みを社内にオープンしているようなもの。「超家族」という名の通り、「生産」も「生殖」も会社の課題として包摂して経営に組み込んでいるのです。毎年行われているエイブルの加盟店顧客満足度で、常に全国上位で評価されているのは、こうした女子社員の安心基盤を形成しているからだと言えます。生産と生殖を包摂した新しい共同体企業の萌芽であり、今後活力ある企業として
※参考:「日本でいちばん女性がいきいきする会社」(坂本光司 藤井正隆 坂本洋介 著:潮出版社)
- posted by komasagg at : 20:53 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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