2021年10月21日
【駆動物質とは何か?】脳の構造と駆動物質の関係
生物の進化とともに、脳も進化してきました。脳は、脊椎動物が登場した段階から、基本構造は大きく変えず、新しい機能が付け加わるように進化してきています。
脳の形成は、「神経管」から始まります。神経管の内側で多くの細胞がつくられ、神経管が膨らむことにより、脳がつくられます。形のうえから大きく5つの膨らみ(脳胞)からなり、前方から終脳、間脳、中脳、後脳、髄脳と呼びます。これは脊椎動物に共通な基本構造ですが、進化の過程で動物ごとに発達している部位が異なります。
ヒトでは、大きく「脳幹(中脳と後脳)」「間脳」「小脳」「大脳中枢系(大脳皮質(古、旧)と大脳基底核)」「大脳新皮質」に分類できます。それぞれ役割も生産される駆動物質の種類・機能・伝達経路なども異なっています。
●脳幹 (延髄、橋、中脳など)
脳幹は、魚類、両生類、爬虫類の脳の大部分を占め、反射や、心拍、呼吸、摂食、体温維持、性行動のような本能行動を司る。
脳幹は多種多様な神経核から構成されており、その機能も多様であり、この小さな部分に多数の生命維持機能を含んでいる。
【脳幹で作られる主な駆動物質】 |
ノルアドレナリン、アドレナリン、ドーパミン、セロトニンなど |
脳幹の神経核でつくられた駆動物質は、間脳、大脳中枢系、大脳皮質へ投射される。
●間脳 (視床、視床下部、松果体、脳下垂体、脳下垂体など)
間脳は、哺乳類になり、大脳皮質が発達するともに発達。自律神経の働きを調節、意識・神経活動の中枢。
間脳は、神経細胞体が塊状に集まり複数の神経核を形成し、神経核で駆動物質がつくられる。また、嗅覚を省き感覚伝導路として大脳皮質に多くの神経線維で結ばれている。
【間脳で作られる 主な駆動物質】 |
ヒスタミン、オキシトシン、βエンドルフィン、メラトニンなど |
間脳 でつくられた駆動物質は、大脳中枢系、大脳皮質へ投射される。
また、脳下垂体は、視床下部から分泌される分泌調節ホルモン(駆動物質)を受取り、数多くのホルモン(駆動物質)を分泌し、効率よく血流に乗って全身に運ぶ。神経系と内分泌系の結節点。
●小脳
鳥類や哺乳類になると、小脳が大きく発達している。小脳の神経回路は学習機械と考えられ、大脳皮質からの情報と末梢神経からの情報の両方が入ってきており、この両者を比較・対照することによって、運動だけでなく、情動や認知機能にも関与すると考えられている。
【小脳で作られる 主な駆動物質】 |
グルタミン酸、γ-アミノ酪酸(GABA)など |
駆動物質は、小脳内の神経細胞間のシナプスを介した伝達物質としての役割を担い、高速な伝達回路網を形成している。
●大脳中枢系 (大脳辺縁系、大脳基底核)
魚類と両生類では、大脳には「大脳中枢系」しかなく、大脳中枢系は「古皮質(海馬、脳弓、歯状回)」、「旧皮質(嗅葉、梨状葉)」に分類される。辺縁皮質(古皮質、旧皮質)の内側の髄質の深部には大脳基底核が存在する。大脳中枢系は,記憶,意欲・欠乏、嗅覚,生体の恒常性維持機能など,人間のさまざまな活動の根幹を担うきわめて重要な役割を担っている。
大脳新皮質の内側に位置し,表面からは見えない辺縁皮質は、脳梁を取り巻く円環構造から成り立っており、辺縁皮質と大脳基底核(神経細胞体が塊状に集まった複数の神経核)を相互につなぐ神経線維連絡網から成り立っている。
【大脳中枢系の主な駆動物質】 |
アセチルコリン、ドーパミンなど |
大脳基底核でつくられた駆動物質は、大脳中枢系、大脳皮質へ投射される。
●大脳新皮質
鳥類や哺乳類になると、大脳が発達し「感覚野」「運動野」といった「新皮質」が出現する。さらに、霊長類になると、新皮質がさらに発達して大きくなり、「連合野」が出現し、高度な認知や行動ができるようになる。ヒトでは、新皮質が大脳の90%以上をも占める。
大脳新皮質はヒトで約160億、マウスでも約1,400万と極めて多数の神経細胞で構成される。興奮性神経細胞(興奮性細胞)と、抑制性神経細胞(抑制性細胞)がある。
抑制性細胞は、GABAを伝達物質として放出し、他の神経細胞の活動を抑制する。軸索は通常短く介在ニューロンとも呼ばれる。大脳皮質視覚野では神経細胞全体の約20%を構成すると言われている。
興奮性細胞は、大脳皮質に多数(全神経細胞の約80%)存在する神経細胞。軸索末端からグルタミン酸を放出し他の神経細胞を興奮させることから、興奮性神経細胞と呼ばれている。その細胞体は錘体様の形状を示すことから錐体細胞とも呼ばれる。
【大脳皮質の主な駆動物質】 |
グルタミン酸、γ-アミノ酪酸(GABA)など |
大脳新皮質は、神経核を形成せず、駆動物質は、神経細胞間のシナプスを介した伝達物質としての役割を担い、高速で複雑な伝達回路網を形成している。
主な駆動物質がつくられる場所
(図は、書籍「14歳から知る 人類の脳科学、その現在と未来」より)
次回、脳が発する駆動司令の起点となる駆動物質群とその機能や主な伝達経路について、脳幹でつくられるーパミン、ノルエンドルフィン、セロトニンを中心に見てきます。
- posted by sai-yuki at : 21:21 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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