2022年04月05日
脳容量が増大した時期は、磨製石器と火の使用の時期と重なる
約260万年前から使われ始めた「オルドワン石器(打製石器)」は、主に「アウストラロピテクス・ガルヒ」や「ホモ・ハビリス」が使っていたと考えられている。
アウストラロピテクス・ガルヒの脳容量・・・約450cc
ホモ・ハビリスの脳容量・・・・・・・・・・約500~700cc
オルドワン石器の写真(こちらよりお借りしました)
オルドワン石器(打製石器)は、その名の通り石を打ち砕いて作る。以下は、打製石器の制作を再現してみた考古学者の見解。
・鋭利な刃を作るためには細粒性の石が必要で、石選びには高度な考えが必要だった。
・ときには遠方から運んでくることもあったと思われる。
・できた石器は非常に鋭利で、表面を顕微鏡で観察した結果、肉や木や草を切るのに使われたいたことがわかる。
・石器の形は原材料の形に大きく影響される。最終形態のイメージは明確ではなく、ある程度成りゆきになる。
ちなみに、石器はチンパンジーには作れない。いくら教えてもダメ。アウストラロピテクス・ガルヒの脳容量(約450g)はチンパンジー(約400cc)とそれほど変わらないが、認知能力にはかなりの違いがあったと思われる。
その後、約175万年前に「アシュール石器(磨製石器)」が登場する。磨製石器は、打製石器を磨いて仕上げられ、オルドワン石器に比べて大きいものが多い。主に使っていたのは「ホモ・エレクトゥス」と考えられる。
代表的なアシュール石器がハンドアックスと呼ばれる涙滴型の石器。ほぼすべて一定の形をしており、石器製作者(ホモ・エレクトゥス)は、頭の中に最終形のイメージを持って作っていたと思われる。かなり高度。
ホモ・エレクトゥスの脳容量・・・・・・・・約950cc
アシュール石器の写真(こちらよりお借りしました)
アシュール石器の切れ味はすばらしく、死んだ動物の骨から肉を剥ぎ、骨を砕いて骨髄を取り出しただろう。これらが容易にできるようになり、人類は常習的に肉食をすることができるようになったと思われる。
南アフリカの洞窟から、およそ100万年前の獣骨が大量に発見され、一部の獣骨には火で焼けた跡が残っていた。焼けた獣骨が見つかった場所が洞窟内の一部に集中していたことから、ホモ属(おそらく、ホモ・エレクトゥス)が火を使っていたと思われる(火の使用は証拠として残りにくく、実際に火を使い始めたのは、さらに数十万年さかのぼる可能性がある)。
火の用途で考えられるのは、①肉を焼く、②肉食獣から身を守る、③寒い冬に体を温める、と想定される。
ホモ・エレクトゥスは、アウストラロピテクスに比べて脳が大きく、腸が小さいが、アシュール石器と火の使用によって、消化のよい肉食を増やすことができ、(エネルギーを膨大に使う)脳を大きくして腸を小さくするのに役立ったと思われる。
~参考:絶滅の人類史 更科功 NHK出版新書~
- posted by nozaki at : 16:00 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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