2022年03月31日
人類はどこから生まれたのだろう? ~ 類人猿の拡散および原人の多地域発生から考える。
「私たち現生人類はどこから生まれたのだろう?」
これは、誰もが興味関心をいだくテーマです。今回の記事はこのテーマを探求します。
※画像はコチラからお借りしました。
現在の学説では、ヒト(人類)の進化の大きな流れは、「猿人」(アウストラロピテクス)→「原人」(ホモ・エレクトゥス)→「旧人」(ホモ・ハイデルベルゲンシス/ホモ・ネアンデルターレンシス)→「新人」(ホモ・サピエンス)。
ただそれらのほとんどは絶滅しており、「現生人類」(ホモ・サピエンス・サピエンス)とのつながりはまったく未明です。
「猿人」の脳容量は、現生人類の1/3程度の450mLで、チンパンジー400mLと変わりません。身長も110cm~150cmとチンパンジーなみです。
また、230~180万年前頃にアフリカにいた猿人と原人の中間的な位置にいるホモ・ハビリスは、石器を使用していたと想定されていますが、脳容量500mLで人類よりもチンパンジーの方に近いです。
それに対し「原人」の脳容量は、初期は750~800mL程度で、後期には1100mL~1200mLにまで増加し、原人の段階でホモ・サピエンス(新人)1400mLに近づいています。
このことから見ると「猿人」は類人猿(ゴリラ、チンパンジー、オランウータンなど)の亜種で、人類には繋がってないのではないでしょうか。180万年前頃に登場する「原人」からが真正のホモ属で、現生人類の祖先なのでしょう。
また、現生人類にもネアンデルタール人(旧人)の遺伝子が1~5%残っているとの研究報告があり、旧人と新人は交配可能です。また、ネアンデルタール人と現代人でアミノ酸配列が異なっている遺伝子は全部で6つしかなくそれほど違わず、そのうち3つは皮膚の構造に関わる遺伝子で、氷河期にヨーロッパで生き抜いたネアンデルタール人の特徴レベルです。また、容姿に大きな違いはありません。
このことから見ると、「旧人」と「新人」の区分は厳密にはできないのではないでしょうか。
★人類の起源は「原人」に求められ、人類への進化系統は【類人猿 → 原人 → 新人】が大きな流れと考えられます。
とすれば、「類人猿と原人」そして「原人と新人(→現生人類)」が、どのようにつながっているかです。
その点で興味深いのは、中新世(2303万~533万3000年前)から鮮新世(~258万8000年前)にかけ「類人猿」の化石、また更新世(258万8000年前~)に「ヒト属」の化石が、アフリカ・ヨーロッパ・アジア・ユーラシア各地で発見されている点です。
人類の祖先である類人猿と原人が拡散する要因は、主には地球環境の変動→気温の変動で、それに伴う植生の変動だろうと考えられます。
以下が、地球環境の変動と発見されている化石の関係です。
◆中新世(2303万~533万3000年前)
・2300万年前:「第一氷河期」。その後、中新世中期まで「温暖化」
・2400万~1700万年前:ヒラヤマ山脈の急上昇
・2200万~2000年前:大陸分裂による紅海の形成
・1700万~1500万年前:中新世中期の「高温期」
・1700万~1400万年前:北米西部コロンビア川。玄武岩の噴出18万km3
★1500万年前:急速「寒冷化」樹林縮小。アジアはモンスーン気候→雨季と乾季
・1500万~900万年前:チベット高原の上昇
・1000万年前:アフリカ大地溝帯の形成が始まる
・596万~533万年前:メッシニアン塩分危機→地中海が干上がり大量の蒸発岩
☆2000万~1700万年前:「プロコンスル」東アフリカ。原チンパンジー?
☆1700万~700万年前:「プリオピテクス」ヨーロッパ・アジア。原テナガ?
★1400万~800万年前:『シバピテクス+ラマピテクス』中国南部・インド・パキスタン・トルコ・ギリシア・東アフリカ。原オランウータン?
☆1365万~725万年前:「オレオピテクス」イタリア。完全な化石。
☆700万年前:『サヘラントロプス・チャデンシス』アフリカ。最古人類化石?
☆600万年前:「オロリン・ツゲネンシス」ケニア北西部。
☆580万~520万年前:「アルディピテクス・ガダッパ」エチオピア。
◆鮮新世(533万3000年~258万8000年前)
・500万年前:地球規模の「海退(海面50m低下)」→スンダーランド隆起。
・500万年~:明瞭な寒冷期・温暖期を繰り返しながら「寒冷化」
・400万年前:アフリカ大地溝帯の隆起→東アフリカの「乾燥化、草原化」
☆440年前:「ラミダス猿人」エチオピアのアファール三角地帯(大地溝帯)
★400万~200万年前:『アウストラピテクス』エチオピア。【脳441ml】
(※脳容量:オランウータン=411ml/チンパンジー=394ml)
◆更新世(258万8000年~1万1700年前)
・220万年前:「イエローストーン噴火」アメリカ、噴出量2500km3
・90万年前:「寒冷化」海面120m低下。「スンダ大陸出現」
・84万年前:「トバ・カルデラ」インドネシア・スマトラ島、噴出量500km3
・78万年前:最新の「地磁気逆転」10万年周期の氷期・間氷期へ
・64万年前:「イエローストーン噴火」アメリカ、噴出量1000km3
・23万年前:「温暖期」ピーク。後、緩やかに「寒冷化」
・14万年前:「氷期期」ピーク。後、急速に「温暖化」
・13万年前:「温暖期」ピーク。後、急速に「寒冷化」→アフリカ「乾燥化」
・12万年前:「最終間氷期」(~4.5万年前まで海面は上下)
・10万年前:「最終氷期」
・7.3万年前:「トバ・カルデラ」インドネシア・スマトラ島。噴出量2800km3
★210万年前:『ホモ・ハビリス』タンザニア。打製石器。【脳640ml】
☆170万年前:「ドマニシ原人」西アジア、グルジア共和国。【脳700ml】
※5つの頭蓋骨、成人3個体と青年1個体に相当する骨
★130万~70万年前:『ジャワ原人』インドネシア。火の使用。【脳850ml】
※リンク化石地層→サンギラン層(160万~120万年前)>バパン層(100万~80万年前)
☆100万~70万年前:「藍田原人」中国陝西省
★80万~70万年前:『北京原人』中国北部の泥河湾。【脳1040ml】
☆60万~20万年前:『ホモ・ハイデルベンゲンシス』ヨーロッパ。組合せ石器
★15万年前?:「ネアンデルターレンシス」ヨーロッパ、西アジア【脳1450ml】
★20万年前?:「ホモ・サピエンス」【脳1350ml】
☆6.7万~5万年前:「ルソン原人」フィリピン、ルソン島
☆4.1万年前:「フローレス原人」インドネシア、フローレス島
◆上記を踏まえて【仮説】
1500万年前の急激な寒冷化による樹林縮小とアジア・モンスーンによる雨季・乾季が発生した時期と、1400万~800万年前の「ラマピテクス」が中国南部・インド・パキスタン・トルコ・ギリシア・東アフリカと世界に拡散している。
そして、210万年前の「ホモ・ハビリス(タンザニア)」、170万年前の「ドマニシ原人(西アジア)」、130万年前の「ジャワ原人(インドネシア)」と、「原人」は世界各地で発生している。
★更新世(258万8000年~1万1700年前)は寒冷化と温暖化の繰り返しが激しい時期で、その環境変動にもその地で適応したり(北方適応)、環境変動に合わせて南下⇔北上して適応するなかで、各地の類人猿が原人に進化していったと考えられます。だから、類人猿と原人の化石が世界に拡散して発見されている。
仮にそうだとすれば、「類人猿から原人への進化」は、単一起源(→移動・拡散)ではなく多地域起源。
そうだとすれば、「原人から新人への進化」も、(現在、学説で主流である)アフリカ単一起源ではなく、多地域起源も十分考えられます。
- posted by asaoka at : 22:01 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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