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2023年03月06日

先端企業の戦略(3) ~・企業が「戦う場」とは②・~

■メルカリ、D&Iへ転換

企業や会社は、その企業や会社が「戦う場」によって社内カルチャーは大きく違ってきます。逆にいえば、例えば地域の家族経営の会社が世界の市場のど真ん中で戦うなら、その社内カルチャーを国際市場の「戦う場」に合わせなければ、全く戦えないということになります。

今回、この「戦う場」をしっかりつかんで対応した企業の一例を紹介したいと思います。それは何度か取り上げたメルカリです。

メルカリは、フリーマーケットのプラットフォームをネット上で提供する、日本発のITサービス企業です。

メルカリは日本生まれの企業ですが、その中身はグローバルな国際企業です。稼ぐ主戦場は主に日本ですが、創業者であり代表の山田慎太郎社長は海外でも戦うことを表明していて、実際アメリカでもサービスを展開しています(アメリカ法人の置かれている場所はパロアルト。インターネット時代を切り拓いたヒューレットパッカードの研究所や今はテスラがある、シリコンバレーの最前線です。ここに米国本社を置くメルカリの本気度がよく分かります)。

このようにメルカリは、世界経済のど真ん中(つまり資本主義のど真ん中で)アメリカにも会社を置き、外国籍社員を増やしていきました。そうなると、日本の会社文化はそのままでは通じなくなり、その対応をとりました。具体的には日本で働く外国籍社員には通訳を付けたり、生活サポートも行って手厚く支援――したつもりでした。しかし、外国人社員から、組織情報が公平に共有されないことや組織の意思決定に参加できないことに対する不満が続出したそうです(浜田敬子著「男性中心企業の終焉」から)。これではだめだと、同社は本格的にD&I(ディー・アンド・アイ。ダイバーシティー(多様性)とインクルージョン(包摂)という意味)を推し進めることにしたそうです。

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■「バラバラ」になるのを防ぐ

企業のD&Iとは、人種や国籍、性別などの多様性を認める働き方ができる環境をつくるということです。

このメルカリの報告を読んで皆さんはどう思われるでしょう。

「D&Iなんて言っても、どうせ形だけ整えて、本音のところは違うんでしょ」と思う人もいるでしょう。D&Iができているか、できていないかをどうするかを評価するのは難しいかもしれません。もしかしたら、D&Iを推進していると表明している企業の中には、それこそ建前でやっているところもあるかもしれません。名ばかりのD&Iです。

しかし、メルカリは、「このままでは世界でなんて戦えない、それどころか社内がバラバラになる」と真剣に考えたのではないでしょうか。「バラバラ」と聞くと大げさと思われるかもしれませんが、同社のD&Iを取材した前述の「男性中心企業の終焉」(浜田敬子著・文春新書)はそう伝えています。

とはいえ、「バラバラ」になることを防ぐ目的としてD&Iを導入すると言うなら、それは企業経営としては現状維持で受動的です。それでは企業に成長や発展がかなうはずがありません。企業が組織体質を変えてまで労務施策を導入するなら、もっと具体的にプラスの「利益」を得なければなりません(この場合の「利益」は単純な儲けではなく、人材が増えて生産力があがるなどの、生産要素のアップも含めます)。メルカリのような世界の市場の真ん中で勝負すると決めた企業には、D&Iの利点が能動的な「攻め」につながる“果実”がなおさら必要でしょう。

■攻めの施策として ただし過剰性も指摘されている

同社の山田社長はその点も考えたようです。資財30億円を投入して理系志望の女子中高生向けの奨学金を設立しました。また、徳島に2023年4月に開校予定の私立の高専学校「神山まるごと高専」のカリキュラムにも協力するとしています。同校は女子のエンジニア教育に力を入れるということなので、メルカリは社で蓄積したD&Iの知見を提供するといいます。例えば、

・無意識バイアスワークショップの共同開催

・開校後のD&I推進に関する特別授業の共同設計、及び社員講師派遣

などを実施していくそうです。

IT業界は慢性的に人手不足です。しかし、今後女子エンジニアが増えるとするなら、メルカリはこの奨学金制度と女子エンジニアを増やそうとする高専への協力は、女子エンジニアをか得するのに大きなアドバンテージとなります。国外でも「女性の働き方に厳しい企業が多いという日本で、メルカリはD&Iをどこよりも推進している組織だ」との評価を受け、相当有利な戦いができます。

山田社長は取材の中こう話しています。

「今のメルカリのような大規模なサービスをみんなで作っていくような仕事では、エンジニアの能力だけではなく、仲間とコミュニケーションをとりながら円滑に進めていく能力も求められます。そういった部分では女性が能力を発揮しやすい世界になっているにもかかわらず、現実の社会、仕事のリアリティがなかなか教育現場や親には伝わっていない」

日本社会ではD&Iの本格的な導入の入り口に立っています。だけども、一足先にD&Iのど真ん中にいるイギリスでは「行き過ぎた多様性尊重」という視点も出てきています(ダグラス・マレー著「大衆の狂気」)。

世界経済の真ん中で戦っていくというメリカリ。同社が注力しているD&Iは必然だったようですが、同社の今後の成果を見てみたいところです。

 

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