2011年05月26日
シリーズ 大震災復興~日本企業の底力!~ 1-1).被災地以外にも広がる企業倒産・操業停止の実態
東日本大震災の状況が明らかになるにつれ、その被害の甚大さには心が痛みます。
被災された皆様方には、心からお見舞い申し上げます。
前回のブログ<「大震災復興 日本企業の底力!」~3・11は生産形態や企業経営のあり方を根本から見直す契機となる~>で紹介した通り、私たちが着目しているのは「企業」です。
その中でも、今回の震災を契機に「共同体」への注目度が一段と高まっている中、どのように復興を考えていくべきか、一定の答えを提示していきたいと思っています
まずは「大震災復興 日本企業の底力!」シリーズ 「1.大震災から見えてきた日本企業が抱える問題点と課題」 について、これから数回に亘って紹介していきます。
これからも「共同体・類グループの挑戦」をよろしくお願いします!
東日本大震災より1ヶ月半経過した4月30日時点で、すでに多くの企業で倒産が相次いでいます。詳細は<帝国バンク>で紹介されています。
倒産企業の従業員数は1000 人を突破し、負債総額は371 億300 万円に達しました。倒産企業数は66 社に及んでおり、これは1995 年の阪神大震災当時に比べ3 倍の規模に相当します
また、倒産企業の地域は、被災地以外の全国の関連企業にも及んでいます。しかし、直接的な被害をうけた東北の倒産は判明しておらず、実態把握が進むにつれて関連倒産の件数もさらに増加するに違いありません
ここで、これらの倒産企業をまとめてみると、大きく3つの特徴があります
①倒産は被災地以外の全国の関連企業にも及ぶ
倒産パターン別では、「間接被害型」が60 社(90.9%)を数え、全体の9 割を超えた。つまり、直接的な被害を受けた東北以外に被害が及ぶ。
②震災前からの業績悪化企業が倒産
倒産の主要因は、7割を超える企業が以前からの業績悪化であり、震災による間接的な被害は倒産の引き金に過ぎない。
③節約・節電による消費激減により不要不急の業種が倒産
業種別では、「旅館・ホテル」(8 社、12.1%)が最も多く、「広告・イベント」(5 社)、「外食」(4 社)、「旅行」(2 社)など、消費自粛のあおりを受けやすい“不要不急”の業種が目立つ。
これらの特徴別に、これから3回に分けて、より深く内容を掘り下げていきたいと思います。
今回は ①倒産は被災地以外の全国の関連企業にも及ぶ についてです。
◆操業停止は被災地以外の地域に及ぶ
拡大はこちら 画像はAERA Bizからお借りしました。
東日本大震災で操業停止した工場の一覧を示します。
被災した東北だけでなく、関東の各地にも被害が及んでいることが分かります。
何故、それ以外の地域に被害が及んでいるのでしょうか
◆中小企業の被害が世界企業に影響を及ぼす
拡大はこちら 画像はAERA Bizからお借りしました。
世界での市場規模と占有率を示します。
横軸が企業の世界シェア(占有率)、縦軸が市場規模(売り上げ)です。
また、中心は日本企業で、右上に欧州および米国企業を示しています。
市場規模が10兆円を超えるような大企業は、その製品は我々もなじみのある自動車、電子機器など、いわゆる最終製品を製造しています。そして、各国で最大でも40%程度とシェアは比較的低く、売り上げを分け合っています。
これに対して、 中小企業は最終製品の一部である部品を製造しており、市場規模は小さいものの、100%を占める製品もあるほどシェアが比較的高い(占有率が高い)ことが分かります。これは、欧州・米国と比べても、いかに日本の最先端技術が豊富であるかが見えてきます。
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米ゼネラル・モーターズ(GM)は日本から電子部品が供給されなくなったため、スペイン工場、ドイツ工場などの欧州拠点の他、米ルイジアナ州、ニューヨーク州の工場などの操業停止や従業員のレイオフを発表した。北米で30%のシェアを誇る優良企業である、ブレーキメーカー曙ブレーキ工業の被災が原因と見られている。
・米アップルの「iPad2」は主要部分に日本製部品が使われており、代替が利かない。そのため、日本での発売が延期となり、同社株価が2日間で200億ドル(約1兆5600億円)以上も時価総額を目減りさせた。
(朝日新聞ウィークリー AERA2011.04.15を参考)
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改めてグラフを俯瞰して見てみると、大きくは右下から左上に向けて、企業が分布しているのが分かります。つまり、、 日本の中小企業が、日本だけでなく世界の大企業を支えている とも言える構図が見えてきます。
高いシェアを誇る中小企業は東北に多く、今回の震災で、それらの企業が被災し操業停止になったことで、連鎖的に大企業も操業停止を余儀なくされ、多大な被害を被ったのです
この結果が、日本全国だけでなく世界中の企業に操業停止が及んでいる原因なのです
市場拡大絶対主義による効率優先を図った結果、下請け企業が1社に集中し、シェアの大きい企業が被害を受けたことにより連鎖的に倒産したということです
1980年頃、かつて世界シェアを独占してきた基本の製造業は、新興国の台頭によって製品価格では勝負出来なくなってきました。ところが、利益第一・市場拡大絶対のイデオロギーから逃れられない経営者達は、さらなる効率化・経営の合理化が正しいと思いこみ、日本が得意とする部品や素材産業を大企業から切り離し、一社集中・独占することによってかろうじて生き延びることを模索してきました。
皮肉にも、 経済成長を遂げてきたそれらの企業の体制が、そのまま 弱点となり被害を拡大させたということになります。
本当に経営者達の選択は正しかったのでしょうか
つづく・・・
- posted by staff at : 15:31 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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