2023年03月09日
【次代の先端市場を切り拓く】日本はどの領域で世界に立ち向かおうとしているのか?~創造性を備え始めたAI
今年注目を集めた「スタートアップ」に対する政策。前回まで、日本はどの領域で世界に立ち向かおうとしているのか?『国の産業政策』から経済産業省、企業の動きの検証を深めてきました。
特に、『政府の重点投資対象 :AI、量子技術、バイオ、再生医療、大学教育』の分野を中心に、企業もCVCを発足して、研究開発を強化していく萌芽が見えてきます。
本記事より、政府の重点投資対象5分野に着目していきます。
今回は「AI」について、検証します。
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①なぜ注目されているのか
②どういった展望(将来的発展)があるのか
③企業と大学の連携
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の視点から、その特徴についてさらに追求を深めていきます!!
①なぜAIが注目されているのか
AI(人工知能)は、人と同じように思考する知能であり、自らルールを見つけ出すことも可能で、人が扱いきれない大量の情報(ビッグデータ)を解析して、新しい価値を見出すものです。
AIが注目され始めたのは、2000年以降に機械学習が実用化され始めてからになります。機械学習とは、コンピュータが人間が準備した教科書を学習し、例えばリンゴの画像・特徴を覚えることです。
2010年に入り、教科書無しで、自ら傾向を類推するディープラーニング(深層学習)が登場します。沢山のリンゴの画像から、”赤い””丸い”等の特徴を自らで類推し学習するという機能です。例えば、吉野屋を始め大企業の人材募集でAI面接を導入。AIが企業風土や企業に見合う人材を学習し、選考を行っています。
他にも、AIといえば自動化・効率化というイメージがありますが、技術進化により新しい分野でも活躍しています。
アメリカのコロラド州で行われたコンテストでAIが生み出したアートが、デジタルアート部門で1位に入賞。人間にしか出来ないと考えられていた領域にも、AIが進出。
▲ジェイソン・アレン氏の受賞作品 Screengrab from Discord(こちらからお借りしました)
成果づくりについては、確実にAIの高度化が日々進んでいます。しかし、つくる過程における付加価値づくり(共創)は人間にしかできない領域というのは変わらず、求められる部分です。
②どういった展望(将来的発展)があるのか
経産省の新しい資本主義実行計画では、2025年にAIによる同時通訳技術の社会実装を目指すという、具体的な目標期限が示されています。
製品開発や建物設計においても、自然法則に基づいた、アルゴリズムデザインが増えています。(googleの独立ベンチャー企業FLUXは、建物設計の自動プログラムを開発中。半分のコスト・時間(≒人)で設計が可能)
このように既に創造的な領域すらも、代替が始まっています。(参考)
一方で、現在地を見てみましょう。
総務省のAI導入に関する調査では、中国が独走状態。日本は世界の中でも遅れを取っており、特に、ヘルスケア領域での遅れが見られます。また、開発目的とニーズがマッチしていないことが、遅れの要因になっていると考えられます。(参考)
日本の投資・予算状況も見てみます。
世界のAIに関連するソフトウェアの市場規模は、2021年の売上高3,827億円から2022年には前年比55.7%増の5,957億円まで成長すると見込まれています。一方で、日本のAI主要8市場における、2020年度全体の売上金額は、前年度比19.9%増の513億3,000万円。市場の伸び率からも日本の遅れが伺えます。(参考)
これらの状況からも、ニーズを捉えたAI開発を推進できる、IT人材の育成が急務と言えます。
③企業と大学の連携
政府は大学と企業の協働を促していますが、そもそも意図は何でしょうか。
やはり、その領域に人を集め、人材育成を促進するという狙いが挙げられます。2月に入り、政府が東京23区内の大学・デジタル系学部の定員増を容認を発表しました。IT人材の育成を優先して、舵を切ったと言えます。(参考)
具体的な大学との協働に着目してみます。AIの最大の強みは、人間の脳では処理できない、大量のデータを分析すること。大学や研究機関が保有するデータは、機関ごとに分散し活用しきれていません。そこでAIの力を借りて、人手をかけずにビッグデータを分析する、という企業と大学の協働が始まっています。
代表事例をご紹介します。
〇千葉大学 × NEC
千葉大学の健診・医療・介護のデータ分析の知見と、NECのAI技術を組み合わせて高齢者医療の研究。認知症予防や医療財政シミュレーション。
〇筑波大学 × トーヨーエネルギーファーム・カゴメ・キッコーマン・タキイ種苗・みかど協和
高付加価値の野菜をつくれる、AIロボット温室を開発・実証。熟練生産者のノウハウをロボットに学ばせることで、誰でも生産できるようになる。
■結論
・人間しか出来ないと思われていた領域も、AIが担えるようになってきた。
・一方で、同じものをつくるとしても、その「つくる過程での付加価値づくり」の部分が重要であり、そこが評価される時代になっていく。
・ここは人間が領域であり、人材育成もその視点で、プロセス部分で価値をつくれる人材の育成が必要。
今回わかったように、AIは、未明領域・情報量が多い分野を得意とします。そのため、バイオ・医療分野への展開や、計算スピードを高めるための量子技術の進化などが非常に着目されています。そこで、次回は、量子技術からバイオ・再生医療に着目していきます。
- posted by haneda at : 9:00 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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