2023年03月18日
『学びの行方』~「働く意味」があって「学ぶ意味」が生じる~
前回の記事では、小・中学校の生徒数が減少しているにも関わらず、不登校児は9年連続で増加、令和3年度には過去最多の24万人を超えたことから、この不登校児の異常な急増について、「学校は見捨てられたのか」と投げかけました。(『学びの行方』~不登校児の異常な急増。学校は見捨てられたのか~http://bbs.kyoudoutai.net/blog/2023/02/11939.html)
しかし、追求を進めていく中でこれは学校だけの問題ではなく、学校は学びの場なのだから問題の本質は子どもたちの「学ぶ意味(動機づけ)の喪失」にあるのではないかというところに行き着きました。
それはどういうことなのか、今回明らかにしていきたいと思います。
◆そもそも何のために「学ぶ」のか?
不登校が急増する10年ほど前の2004年、日本経団連は「ものごとの本質をつかみ、課題を設定し、自ら行動することによって問題を解決していける人材を求めている」との提言を発表し、現在の教育はそれに応えていないと指摘、教育の根本からの改善を求めました。
それに対して文部科学省は2004年、「キャリア教育」の指針を発表。多くの学校で職場体験等の活動が実践され始め、現在ではほぼ全ての学校(2017年度には98.6%)で実施されていることは、前回の記事でも触れました。
しかし直視すべきは、「それでも不登校は増加し続けている」ということ。これは、職場体験などの体験学習は、直接学びの意欲にはつながっていないということです。
◆「働く意味」がそのまま「学ぶ意味」になる
だとすれば、学校の学びと実社会(仕事)がつながらないのは、学校側だけの問題ではなく、仕事場=企業側にも問題があるということ。キャリア教育を実施しても子どもたちの学ぶ意欲が低下しているのは、大人の働く意欲が低下してることが本質的な原因ではないでしょうか。
実際に、2021年のデータでは社会に出たばかりの若手社員でも、仕事にやりがいを感じている人は43.8%で過半数を切っており、56.2%の人はやりがい=「働く意味」がわからないままに仕事をしています。
さらに、2021年4月入社の会社員では48.1%に対し、2020年4月入社員は44.5%、2019年4月入社員では38.7%になっており、入社2年間で約10%も「仕事へのやりがい」が低下しているのが現実です。
かつて、寺子屋があった江戸時代は、農家であれ商家であれ武家であれ、集団の生産課題に直結した学びでありました。
また、集団課題が薄れた現代になっても、一昔前までは豊かさ欠乏に導かれ個人(や家族)の私権(地位、お金)を求めて働く意欲も生じ、そのために学ぶ意欲を生じさせていました。
しかし豊かになった今、それでは働く意欲は湧いてこず、そのための学ぶ意欲も生じなくなっています。
大人たちが「働く意味」を見出せていない状態で、子ども達も「学ぶ意味」を見出せるわけがありません。それが、不登校に限らず小〜高校生全体の「勉強しようという気持ちがわかない」という思いが年々上昇し、2021 年で54.3%までに上っている結果にもつながっているのではないでしょうか。
子どもの活力低下は、学校側だけの問題ではなく、働く場=企業側、つまり我々大人たちの在り方が問われており、まずは私たち自身が「働く意味」を再生できるかにかかっているということなのだと思います。
参照:
タバネル 「若手社員の意識とコミュニケーション調査」
https://tabanel-japan.com/media-seminar/4057/
- posted by kata-syun at : 22:13 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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