2014年04月22日
日本の大学どうする~大学と地域まちづくり~
今回は、大学の新しい戦略として、「大学と地域」を扱います。大学と地域との関係は、2002年頃から活性化しはじめおり、それは「自治体と大学の協定締結数の推移」、「大学の地域との連携事業数の推移」からも読み取れます。
自治体・大学・地域の連携によるまちづくりに関する調査研究よりお借りしました。
これまでの、大学と地域の関係を振り返ると、大きく三つのフェーズがあると考えられます。
第一フェーズは、大学において、「エクステンションセンター」や「生涯学習センター」といった組織が立ち上がり、一般市民向けの「オープンカレッジ」「公開講座」が多く開催された時期です。
その頃の大学側の意識は「住民の教養の向上」が多数を占め、自分達(大学)は「知」の集積であり、その「知」を公開する事が「地域貢献」に繋がると考えていたと思われます(少し、高みに立った感じです・・・)。
しかし、オープンカレッジや公開講座に参加するにはある程度時間に余裕が必要となるため、参加者は必然的にお年寄りが中心となり、内容も個人の興味関心の域を出ませんでした。
るいネットでも度々議論されますが、人びとの活力(内圧)=現実の課題(外圧)であり、個人の興味関心発の公開講座は早々に行き詰ったことは当然です。
第二フェーズは、大学が地域の課題解決期待に応えるようになった時期です。当初より、地域が大学に期待する事は「教養の向上」といった類のものではなく、地域の課題を具体的に解決してくれる事であった事がアンケートでも明らかになっていますが、大学はその期待を真正面から応えようとはしなかったと思われます。
理由はおそらく、大学の「アカデミック意識」で、地域の課題解決に学術的な意義を見出せず、また、学生募集の視点でも地域に目を向ける必然性は無かったのです。
しかし、この時期、国立大学が独立法人化した事も関係していると思われますが、大学として新たな収入源の確保に迫られ、大学が持つ「知」によって具体的に「稼ぐ」事が求められるようになります。
それは、自分達で研究費をとってこられない大学はジリ貧になってしまうという圧力です。その時期、大学には「地域連携推進センター」や「産学連携推進センター」といった組織が立ち上がり、地域や企業の課題解決を委託される事を目指すようになりました。
さて、第一フェーズも第二フェーズも、大学の「知」を活用するというスタンスでは同じですが、現在は、そこから大きく転換した第三フェーズに入っていっていると考えます。
大学で学んだ事は企業に入って役に立たないという事は昔からの常識ですが、現在の企業には学生を一から育成する余裕はなく、企業は学生に対して、「何を学んだか」ではなく、「何が出来るようになったか」に注目します。
そして、その「何か」は、コミュニケーション能力であったり課題解決能力だったりするのですが、それらの能力を育成するシステムをこれまでの大学は持っていないのです。
自分達が教えてきた学問が社会の役に立っていないと自覚する事は難しく、たとえ自覚できたとしてもそれを地域連携という行動に結びつける事にはハードルがあります。しかし、このハードルを越えない限り、大学の生き残る道は無いのです。
少子化と大学進学率の頭打ちで、2018年から大学入学者が大幅に減少する事が明らかになっており、多くの中小大学が生き残りをかけて戦略を立てていますが、大学の生き残りという危機発で考えると、教員は課題を捨象して研究室に閉じこもる可能性が高いと思います。
そうではなく、逆に、実際地域連携に取り組んでいる教員や学生の活力が明らかに上っている事実に注目し、それをみんなで共有し、その「可能性発」で大学の戦略を押し進める大学がもうじき出現するように思います。
- posted by kyoudou at : 20:06 | コメント (0件) | トラックバック (0)
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