2014年04月20日
これからの働き方はどうなる? 3.新しい働き方事例-2 企業内における自主管理体制
これまでの記事は、、、
前回から、新しい働き方の事例を、下記のように分類し、順に紹介しています。
①自由人ネットワーク
②企業内における自主管理体制
③既存の枠組みを脱する、超企業型の働き方
前回は①自由人ネットワークについて、扱いました。
これからの働き方はどうなる? 3.新しい働き方事例-1 自由人ネットワーク
( http://bbs.kyoudoutai.net/blog/2014/04/1888.html )
ノマドワーキングや、東京R不動産、co-labといった事例から、自由人ネットワークが持つ「現実の充足を仕事化している」「業界の枠を超えたプロジェクトの実現」という点で新しく、注目されます。
しかし、これらの働き方では、「人材育成をネットワーク内に包摂できない」「あくまで特定のスキルを持った個人が条件であり、誰もが参加できるわけではない」といった課題が見られます。
一方、studio-Lのように上に課題として挙げた人材育成のシステムをはじめ、個人の自由を絶対とするのではなく、あくまで対象(クライアント・地域)の期待に応えることを前提として働き方が形作られている例もあります。
これら自由人ネットワークは、「会社の中にいては楽しくないから、会社を飛び出して仕事をする」という脱企業・脱集団の働き方でした。
今回は「② 企業内における自主管理体制」についてご紹介していきます。
企業内でも、働き方は変化しています。中でも、経営がうまくいっている、社員の活力が上がっている企業に多く見られるのが、社員への権限委譲による「自主管理」方式です。
自由人ネットワークが「脱企業」であったのに対し、今回の自主管理体制は、「会社をもっと良くしていきたい」という働き方になります。
旧来の企業であれば経営者の立場にある人間が判断すべき、経営に直結する判断を現場に委ねています。
その前提として、企業の目指すべき価値=存在意義が言語化されていること。その意義は社会的な地平で見出され、かつ誰にも明確にわかる言葉。それが社員に浸透し、判断軸になっているからこそ、自主管理でありながら企業としての統合を保つことができているのです。
意識潮流としても、特に3.11後は「自給志向」が強まっており、この意識潮流とも親近性が高いです。自主管理による企業運営を可能にする基盤は整いつつあり、今後はさらに増えていくことが予想されます。
業態の違いにより、権限委譲の範囲=創造性の引き出し度合いの程度が分かれています。
◆店作りに一定の裁量権を含んだ自主管理
○ パーク・コーポレーション:青山フラワーマーケット」
「一定のルール以外は現場に任せる」
従業員の7割がアルバイト。アルバイトにも原価率を含め、人件費、家賃、紙袋代など、あらゆる情報を開示。限られた中で何にどのくらいの比率で使えばいいのか、どういうふうにコントロールするとお客様の満足度が上がるのかということを常に考える。原価率はだいたい決まっていて、それ以外は店ごとの裁量。
言われたことをただやるだけでは、成長も感じないし、つまらない。そこに帰属することによって自分がより成長するという企業づくりを大事にしている。
社員からは、「仕事は大変。だが、やらされ感はゼロ。」という言葉。
画像はこちらからお借りしました( http://blog.livedoor.jp/parkcorp03/archives/2009-04.html )
○カクヤス
店づくりの自由度は、各店長に権限を持たせている。商品アイテムでは、7割程度の縛りがあって、3割は各店長が自分で見つけてくる。立地に応じ、品揃えも工夫していかなければ選ばれない。お客様が望んでいるか、会社としてできるか、本人がやりたいか、の3つか揃えばやっていい。
画像はこちらからお借りしました( https://kakuyasu-saiyou.com/jobfind-pc/map/All )
○ヤオコー
時代の潮流に合った「場作り」をリーダーが実行
食品スーパーのヤオコーはパートに仕入れ、売価決定、陳列ディスプレーも任せる。バイヤー・加工・売り手などの各種役割を分断せず、全員が「どこがどうなっているか」を理解できるようになっている。だから、お客さんに何を聞かれても笑顔で自信を持って応えられ、やり取りによる共認充足が生まれる。
画像はこちらからお借りしました( https://job.nikkei.co.jp/2015/corp/00009497/contents/include/1/?navi_hplink )
これらの事例は、基本的な商品構成や流通経路(=事業計画の骨格)は決まっています。つまり、「店の運営の一部を現場に任せる(自主管理させる)。」という形です。店の運営を任せることで、社員やパートなどの従業員の活力、主体性を引き上げています。
価格競争のみではものが売れなくなった現代に、店の成果を規定するのは、買いたくなるような店作りにあります。上記のような事例の自主管理体制は「ものが売れない時代に自主管理で店員の活力を上げる。そして店の成績を上げる。」という社会の流れから、他の企業でもかなり普遍的に取り入れられています。
◆事業計画・人材育成を含む自主管理
○ 玉子屋
「班」組織による自考集団
コンビニなどの毎日のお弁当廃棄率は約2~3%といわれるが、玉子屋の場合、0.1%と、効率良く、無駄が無い。それは、会社全体のチームワークの良さ、徹底した伝達や組織作りの中で実現化されている。
地元(大田区蒲田)の元不良達を積極的に従業員として採用。元不良でも、玉子屋で働く事で、驚くほど優秀な人材へと更生されていく。
お弁当を毎日7万食配達する上で約21組の独立した「班」組織を作り、それぞれの班を1つの会社と考えた、組織改革を実現。班のトップに立つ者を班長とし、班長には、アルバイトの時給、社員の昇給、営業戦略を決める権限などが与えられている。各班が互いに連絡を取り合い、随時販売経路の確認を行うことで、注文された弁当の不足、余りを調整。彼らは販売・営業を同時に行い、社員の販売中に 集めた情報や要望を班の打ち合わせで議論する。この情報は最終的に社長に報告されて、販売経路、組織体制、日々の日替わりメニューに反映されていく。
責任ある業務を任され、それらが結果につながる事で、元不良達は、仕事へのやりがいを感じ、更生していく。
参考:テレビ東京カンブリア宮殿「大田区が誇る元気企業!玉子屋の人材育成術」(http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/20100111.html)より
画像はこちらからお借りしました( https://glovia.fujitsu.com/glovia_smart/featurestory/interview/tamagoya/ )
(http://www.hatalike.jp/PLA_001/MA_00101/SA_001021/RQ_33673606/ )
○ 星野リゾート
「任せれば、人は楽しみ、動き出す」
経常利益20%、自社で定めた顧客満足度数値2.50ポイント(3点満点)、NPOグリーン購入ネットワークが定めた環境負荷数値24.3ポイント(25点満点)。これが星野リゾートが企業として目指している3つの数値目標である。現場にどんどん裁量権を与えるフラットな組織体制。少人数で構成されたグループユニットの責任者であるディレクターは立候補と全スタッフの投票で決定。定例会議はアルバイト、パートタイマーまで参加可能という徹底した情報公開。「社員が主人公」を信念に置き、自社施設の経営はもちろん、経営破たんした大型リゾート施設、老舗温泉旅館などの再生・運営活動にも奔走している。
客と直接向き合う「現場」に出来うる限り権限を委譲し、「任せる」ことで、社員のモチベーションをかきたてる。ホテルを再生するために一番重要なのは、「社員を信じる」こと。社員は、基本的にお客様に楽しんでもらいたい、喜んでもらいたいと思っている。そこを信じることで、社員を信じ、任せることができる。
画像はここからお借りしました( http://recruit.hoshinoresort.com/company/index.html )
○ 物語コーポレーション(外食産業)
「リーダーが育つ会社にしたい」
物語コーポレーションでは、店長は社長と同じ。本社の入り口には、壁一面に店長たちの顔写真がずらりと並び、自分自身がすべての意志決定を行うとの誓いの文字がある。
実際、店長たちは、店で出す料理の味から予算まで、さまざまな決定権を持たされている。
離職率が高く、就活生からも敬遠されがちな外食産業の中で、入社した者がほとんどやめないことで知られている。離職率は、かつては20%台のときもあったが、理念や方向性そのものを会社全体が共有すること、成長性・創造性・革新性を重視することによって7%に低下。優秀な人であればあるほど、成長性と創造性と革新性を求めている。
画像はこちらからお借りしました( http://www.franja.co.jp/column/column01/2635 )
これらの事例は、「営業戦略、商品構成などの事業計画」「店や班の経営計画」「従業員の人材育成計画」を含め、権限を委譲、自主管理をしています。
社員に求められる創造性や責任は、前述した「店作りに一定の裁量権を含んだ自主管理」事例より大きく、答えが与えられていないことを考えるというより高度な計画が求められます。
店長・班長は人材育成、組織統合をより強く意識して、成果を出さなければならないので、自考・自主管理の難易度が上がっています。
◆ 自主管理体制と組織統合を両立するために
自主管理は社員の活力を上げ、工夫思考も育て、その結果成果を上げるというメリットがあります。
このようなメリットから、現在多くの会社で自主管理を取り入れていますが、ただ導入ずるだけではデメリットもあります。自主管理が高度になる程、様々な問題が起こります。
1つは、密室化による勝手な独断の横行により、店舗の経営が悪化し、それに伴って組織全体の経営危機に陥る危険性があること。
もう1つは、統合不全や共認不足に陥り、組織としての軸がぶれてしまうことで、組織崩壊といった問題が起こるはずです。それをどうやって回避してきたのでしょうか。
どうやら、「評価共認圧力」がポイントになっているようです。
星野リゾートと物語コーポレーションの2社を例にあげて、詳しく見ていきましょう。
○星野リゾート
①目標共有
星野社長は再建をする際に、ホテルのコンセプト(誰に対して、何を提供するのか、自分達の強みは何か)を、市場調査やデータ分析・整理を通して、社員と徹底的に考える時間を作っています。星野リゾートでは毎年1回、運営している全国各地の旅館・ホテルで「全員研修」を開催しており、戦略と実行の具体策を全スタッフに社長の口で伝えています。これは、会社の根となる経営ビジョンは組織のトップが伝えた方がいいという考です。
②研修:組織的戦略の共有
研修に使用するプレゼンテーション資料も社長が自分自身で時間をかけてつくり、自分で撮影した写真で演出も行います。
これは、全社員に「大きな枠組みでの戦略」を本気で理解してほしいからだそう。また、「競争」という意識を持ち、実際競争力をつけるためにはどういう発想が必要なのかを自分たちで考えてもらうためにも、非常に重要な場としています。
6年ほど前からは「佳路Times」という社内ブログを2週間に1回更新しています。以前は社内報を月1ペースで出していたが、双方向のコミュニケーションが取れる利便性を考えてブログに変更。ほとんどのスタッフが読んでくれているらしい。
③成功事例の共有
さらに、毎月各施設の総支配人が集う会議を行っており、電話もシャットアウトして数時間集中して議論しています。社長も必ず参加し、会議の最初に30分程話します。内容はノウハウについてだったり、スケールメリットや成功事例、逆に失敗事例の報告・分析などさまざま。最終的には経営ビジョンに立ち返ります。議論が白熱して怒鳴り合うこともしばしばあるらしい。このように施設横断的な会議をし、成功事例等を共有することで、密閉化を防止し、自考できる人材を育てています。
画像はこちらからお借りしました ( http://hoshinoresort.com/information/release/2014/04/3230.html )
○ 物語コーポレーション
①課題共認
社員を社長としてあらゆる意志決定をさせることで強い人材を育ているが、その社長教育がすでに入社式から始まっている。入社式で社長が、新入社員一人一人に激励書を読み上げる。この激励書は社長自ら書いたもので、個人へ向けた言葉が自立した人材づくりの第一歩となっている。
②フォロー体制
店長後見人。入社時から社員に後見人としてつき、店長になった後も的確な指導で自立を支える。
また、社長が育つための駆け込み寺として、社員を育てる専門家がいる。入社した時からずっと社員の成長を見ており、200人以上の全ての社員の良さや欠点など、あらゆるところを分析し、その情報を社員の上司と共有している。そうすることで、個々の欠点を周りが理解し、社員は個性を発揮することができる。後見人にも話せないことを相談する、まさに駆け込み寺。
③評価共認
「全国ホスピタリティコンテスト」というイベントを実施しており、“お客様喜ばせスペシャリスト”の発掘・育成による店舗風土の醸成や競争・競争意識の醸成、AM・店長の教育マネジメントの活性化になっている。
他にも、「エリアマネージャーによる年間最大24回の臨店指導」や直営店・フランチャイズ店の「垣根の無い会議」を行い、経営指導やスタッフへのカウンセリング、また成果や失敗事例を店舗同士で共有することで、組織の軸からずれない店舗経営を行えるようにしている。
画像はこちらからお借りしました ( http://www.franja.co.jp/column/column01/2635 )
◆ 事例から読み取れることは、、、
①本部、トップを中心にして軸を示す。
・組織としての経営の軸をぶらさないように、会議等の場をつくって成果圧力をかけていくことで、密室化による独断の横行を防ぐ。
②フォロー体制がしっかりしている(後見人、かけこみ寺)
・社員が悩んでいる時など、的確なアドバイスをして社員を支える。そうして、しっかりと経営のできる人材を育成する。
③評価共認(コンテストなどで成功体験を真似する)
・ 成功事例等を共有することで、競争意識を高め、自考できる人材を育成する。
こういった方法で、組織としての軸をぶらさずに自主管理を行っているようです!
前回の「自由人ネットワーク」との違いは、
「組織化できており、組織を自主管理することで、社員の活力を上げることができている。また、社員同士で活力を高めあうことができる。」
という点ですが、一方旧来の企業の枠内にも入っており、そういった段階で思考錯誤をしているのが、今回紹介した自主管理体制です。
◆ 組織経営も全社員で担う自主管理体制へ
事例から、自主管理の範囲が拡大し、高度化するほどに社員の自考による創造性や主体性が高まってきていることがわかります。その視点で改めて事例を見ると、上記の事例は、組織全体の経営はあくまでも社長等の一部の人が担っており、本当の意味での自主管理を追求するのであれば、組織経営も社員自身で行っていく必要があると言えます。それが社員の能力を最大限に引き上げることになるにもつながると思われます。
次回は、「既存の枠組みを脱する、超企業型の働き方」をご紹介します。
- posted by 岩井G at : 1:02 | コメント (0件) | トラックバック (2)
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