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2016年01月14日

江戸の自治事情から ① 自治とは皆で担うもの

「地方自治などということは、珍しい名目のようだけれど、徳川の地方政治は、実に自治の実を挙げたものだ。名主といい、五人組といい、自身番(警察)といい、火の番(消防)といい、みんな自治制度ではないかのう」

これは明治26年、勝海舟が語った言葉です。
勝海舟
「地方創生」は第二次安倍内閣が掲げる政策の重要なキーワードの一つ。目新しい言葉で表現していますが、本質は昔からある、否、昔はあった「地方自治」ということ。
地方自治はもっと日本の過去に学ぶべき点がいっぱいあります。
それをダイヤモンドオンライン「奉行所の役人はわずか166名」にありましたので、一部引用して紹介します。

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実は、明治20年代に創設された日本の地方自治制度は、江戸の自治を土台にしていたのである。明治政府は中央集権的で、地方も中央集権化したと認識している人が多いが、明治維新期の政府は外交や防衛、それに国家としての最低限の姿をつくり上げるのに手一杯で、内政面、すなわち地方自治にはほとんどノータッチだったというのが実態だった。
(中略)
では、その江戸の自治とはどんなものだったのかということだ。
まず質問だが、江戸の町は北町奉行と南町奉行による月番制、すなわち月ごとの交代で治められていたが、それぞれの奉行所の役人の数は、どれくらいだったと思うだろうか。今日で言えば、東京都に当たる組織の職員数がどれくらいだったかということだ。
江戸時代には、旗本8万騎と言われて、かなりの数の武士が幕府にはいた。ちなみに、東京都の現在の職員数は16万5000人あまりだ。もっとも、高等学校の先生などが入っているから、そういった職員を除いた知事部局などの職員数に限ると、3万8000人弱である。

答えは、166名だ。奉行1人、与力25人、同心140人の計166名。たった166人の人数で、今日で言えば東京都の一般行政、警察、裁判所などの業務の元締めを行っていた。

何故、そんな少人数で、そんなことができたのかといえば、ほとんどの問題が地域の自治で処理されて、奉行所という「お上」の出番が極めて少なかったからだ。住民生活において生じる様々な問題は、基本的に地域の寄り合いで話し合われ、処理されていた。そこで処理できない、ごく少数の案件だけが「お上」のお世話になっていたのだ。(「奉行所の役人は166名」より)

結局、誰もが私権獲得に奔走した結果、地方自治が崩れた現代は、そこで置き去りにされた福祉等の課題を役所が請け負うことで、役人数が膨張していった。役人天国の状況を作り上げたのは、私権第一でそれ以外を切り捨てた現代人そのものであり、それらを含めての見直しなしに地方自治は有り得ない。しかし過去は地方自治が確かに存在していたのです。

江戸の町で自治を担っていたのは、町役人と呼ばれた町年寄、町名主、それに家主たちだった。ここで「町役人」と言ったが、今日では役人とは公務員のことであるが、当時の役人とは「何らかの役についている民間人」が多かった。後で、村の自治について説明するときに「村役人」という言葉が出て来るが、それは村で村人のとりまとめをしていた名主や庄屋のことだ。

ということで、そのような江戸の町役人の数は、町方の人口が53.5万人だった寛政3年(1791年)で2万人余だった。一番上にいたのが、月番制をとる3人の町年寄(樽屋、奈良屋、喜多村)。その下に300名弱の町名主(享保8年、268名)がいたが、なんと言っても主役は、一番末端にいた家主たちだった。

家主たちのイメージは、落語に出てくる御隠居さんの現役時代の姿と思えばいい。その家主たちを5人ずつにした5人組が、実際の実務を行っていた。勝海舟が『氷川清話』で触れていた「5人組」だ。戸籍(人別帳)の管理、婚姻、養子、遺言、相続廃嫡の立ち会い、幼年者の後見、火消し人足の世話、夜廻、町内の道造りなどを行っていた。5人の家主たちは、寄り合いということで集まって、地域のことを全て決めると同時に、「町入用」という今日で言えば町民税の収納の連帯責任を負っていた。(「奉行所の役人は166名」より)

この江戸の事例で参考にすべきは、役所を極小人数で済ますこと、ではありません。地域のつながり、人とのつながりの部分を、皆で担っていた、という所です。半官半民の存在として、自治を担っていく事が当たり前だったという史実です。
「税金」というお金での処理ではなく、さらに「ボランティア」という曖昧な存在のものではなく、「自治」という活動を社会人としての役割に加えることも可能性としてアリだと思います。

 

 

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